■労務
出張手当が役員賞与とされる場合
吉本社会保険労務士事務所 社会保険労務士 吉本俊樹


(問)
 金融業を営んでいるA社の代表取締役甲は、通常はA社本店で業務に当たっていますが、支店の営業指示を直接行うため出張しております。特に遠隔地の支店については2,3ヶ月の長期にわたり出張することが多々あります。その際に日当として1日2万円を渡し切りにしています。宿泊費等については別途実額精算しています。このような長期間にわたり本店からの支店に出張している場合、その日当部分を役員報酬または賞与とされる可能性はあるのでしょうか。
 日当の支給基準についてはA社の給与規定に基づいた日当の金額に沿っています。支払う日当の総額を含めても株主総会での役員報酬限度額内には収まっていますので問題はないと考えていますが、いかがでしょうか。

(答)
 まず、賞与と定期の給与ということについて説明します。
 「賞与」とは、役員又は使用人に対する臨時的な給与のうち、他に定期の給与を受けていない者に対し継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるものと退職給与以外のものであることとされています。
 また、「定期の給与」とは、あらかじめ定められた支給基準に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復的又は継続して支給される給与をいうと規定されています。
 ただし、「これらの給与であっても、通常行われる給与の増額以外において特定の月だけ増額支給された場合におけるその給与については、その特定の月において支給された額のうち各月において支給される額を超える部分の金額は臨時的な給与とする」取り扱いになっています。
 また、役員や使用人の出張に際して日当を支給した場合には、その日当のうちその出張に伴う旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額は非課税で差し支えないとなっています。ただし、これはあくまで「通常必要」という部分であり、当然、「通常必要」であると認められる部分の金額を超える部分の金額は給与所得とされます。
 そこで、A社の代表取締役役員が2、3ヶ月間支店に出張した際に支払う日当の額、宿泊費を別として1日当たり2万円であること、その額が一般的な基準から考えて通常必要と認められる金額であるかを考えてみます。
 今回のケースでは、支店への出張をした者が役員であることで社員より高い金額であってもよいのではないかと考えられますが、やはり一般的な出張の際の日当の金額よりも高額であると考えられます。
 そのため、取締役甲の出張に際して支払われてきた日当のうち「通常必要であると認められる部分の金額を超える部分の金額」は非課税とはならず、給与所得にあたるのではないかと考えられます。
 さらに、この日当は、取締役甲が出張をしていた期間である2、3ヶ月のみにわたり支払われたものとしますと、この「通常必要であると認められる部分の金額を超える部分の金額」として給与所得とされる金額は、先に説明した法人税の取り扱いで「通常行われる給与の増額以外において特定の月だけ増額支給された場合におけるその給与」に当たることになります。そうなりますと甲に支払った日当は役員報酬ではなく、役員賞与になるとと考えられます。