■税務
査察制度
待山会計事務所   税理士  待山克典

査察制度
  一般の税務調査では納税者の同意を基としたいわゆる任意調査によっていますが、強制的権限をもって犯罪捜査に準ずる方法で調査するのが査察調査といわれるものです。
 査察調査の結果に基づいて検察庁に告発することもあり、課税処分が行われるほか、裁判の結果、実刑を下されるようなケースも見られます。不正手段が悪質かつ高額な脱税事件ではこの査察制度によって明らかになっているのです。
 査察制度で実際に執行しているのは、各国税局に配置された国税査察官という人です。国税査察官は脱税の調査を行う際、逮捕して取り調べる権限こそありませんが、国税犯則取締法という法律によって、犯則嫌疑者や参考人に質問し帳簿や書類を検査すること、任意に提出した物を領置すること、裁判官から許可状の交付を受けて、一定の場所に立ち入って捜索し、証拠物件を差し押さえることができます。
 最近の査察調査の結果(国税庁公表)をみると、平成16年度中の査察着手件数は210件でした。また、処理した213件のうち152件を検察庁に告発しています。
 脱税の総額は約282億円でしたが、これは前年度よりも約54億円減少しています。特に3億円を超える大口事案が13件減少して36件となっていました。
 告発が多かった業種は、健康食品をはじめとした飲食料品小売業(11件)、耐震補強具などを販売する機械器具小売業(8件)、パチンコ業(8件)、医療業8件となっています。
 脱税の手段としては、架空原価、架空人件費、架空経費の計上、売上除外が通例です。
 また、脱税した資金を、居宅洗面所の鏡の裏側に現金や株券を隠していたり、自宅のクローゼットのパイプの中に貸し金庫の鍵を隠していたケースもあり、脱税犯も「知恵」をしぼっているようです。


退職所得と給与所得
  サラリーマンへの課税強化の方向が強まってきました。最近の政府税制調査会では退職金への課税は給与課税より優遇されているため、課税の見直しを考えていることを明らかにしています。その理由として、雇用期間の短い社員が、給料を抑えて、替わりに「退職金」でまとめて受け取ることで、節税を行っている事例が見受けられるなど、勤務の実態が変化してきているからとしています。税調では、これらについては数年をかけて議論すべきであるとしていますが、この改正が実現したとするとかなりの負担が増えることになります。
 たとえば、退職所得を利用した場合の所得は給与所得だけの場合に比べてどのくらい大きな差があるのでしょうか。
 まず、退職所得は、(収入金額−退職所得控除額)÷2の算式で計算します。算式の退職所得控除額とは勤続年数によって変り、勤続年数が20年以下の場合は「勤続年数×40万円」で、20年を超える場合は「(勤続年数-20年)×70万円+800万円」となります。
 退職所得が「得」なわけはこの計算方法にあります。まず、退職所得控除額が多いことです。たとえば勤続年数が20年以下で退職金が800万円以下であれば退職所得はなくなりますし、勤続30年で退職金1,500万円でも、退職所得は0円((1,500万円−((30年−20年)×70万円+800万円))÷2)となります。
 次に、控除後の金額を2分の1することです。最後は、退職所得は申告分離課税のため、他に給与所得のあってもそれぞれの所得から税額を計算することになっています。
 このため、高報酬で2、3年の契約で会社に勤めた場合、給料を低額に押さえ残額を退職金としてもらうようにすれば、トータルの税金はかなり少なくなり、一部の外資系の企業などで短期間・高報酬の契約形態をとる社員にとってはかなりの税額の軽減につながるといわれています。