■労務
合併先の役員に就任した場合の役員退職金
吉本社会保険労務士事務所 社会保険労務士 吉本俊樹


(問)
 衣料品販売業を営むA社は、このほど衣料品製造を行う子会社B社が業績不振であるためA社に吸収合併し、製販一体での業績の回復をめざすことにしました。
 この合併に際し、B社の役員のうちA社の役員に選任されないで退任する者と引き続きA社の役員に選任される者、従来からA社の役員を兼任している者(引き続きA社の役員として在任)がいます。
 合併の際に退職するB社の役員については、B社との合併を承認決議する株主総会であわせて退職金の支給を決議して、B社の最終年度で支給しますが、引き続きA社の役員として留まる者について合併の時点では退職慰労金を支給せず、A社を退職する際にA社で支給する予定です。そのときB社の在職期間も通算して支給する予定です。
 なお、B社の従業員については、合併後そのままA社に引き継ぐものとし、従業員が退職する場合、勤続期間も通算することとします。
 そこで、引き続きA社に留まる役員がA社を退職する際に、A社とB社の在職期間を通算して全額A社の負担で支給した場合、損金算入は認められるでしょうか。
 また、B社が退職金を未払金として計上するものの、A社を退職する時まで支給しないこととし、A社退職時に在職期間を通算して未払金とA社分の退職金を支給することに課税上問題はあるのでしょうか。

(答)
 被合併法人であるB社の役員で引き続き合併法人であるA社の役員となる者については、A社の役員を退任するときにB社(被合併法人)の役員の期間を通算して役員退職金を支給することとし、B社(被合併法人)が合併された時点で役員を退任する者についてはB社(被合併法人)で退職金を支給することは認められています。
 B社(被合併法人)の役員であった者が引き続きA社(合併法人)の役員となる場合、法律的には被合併法人を退職したことになりますが、実態的に見ると役員の身分が続いているといえましょう。
 そのようにみると、今回の合併によりその役員にB社(被合併法人)の在任期間に当たる部分の役員退職金を支給することは、役員退職金の「打ち切り支給」にあたるといえることになりましょうが、その支給原因が合併によるB社(被合併法人)の消滅ですので、合理性があるとして損金として認める以下のような扱いがあります。
(参 考 法人税基本通達)
9-2-23の2 被合併法人の役員に対する退職給与の損金算入
合併に際し退職した当該合併に係る被合併法人の役員に支給する退職給与の額が合併承認総会において確定されない場合において、被合併法人が退職給与として支給すべき金額を合理的に計算し、合併の日の前日の属する事業年度において未払金として損金経理したときは、これを認める。
9-2-23の3 合併法人の役員となった被合併法人の役員等に対する退職給与
9−2−23の2は、被合併法人の役員であると同時に合併法人の役員を兼ねている者又は被合併法人の役員から合併法人の役員となった者に対し、合併により支給する退職給与について準用する。
 ただ、この取扱いを適用してB社(被合併法人)で未払いの役員退職金を計上してA社(合併法人)が引き継ぎ、その後A社で退職金を支払うというようなことにした場合、長期間未払いのままにしておくことは打ち切り支給とみられ、否認される恐れが出てきます。
 また、この未払金を計上した場合には、その役員がA社(合併法人)を退任した場合の役員退職金の計算にあたりB社(被合併法人)の勤務期間を通算することはできなくなります。