企業経営Q&A
質問
会社関連法制改定の背景
商法・会社法の関係と活用を教えてください。
答え
■会社関連法制改定の背景

 ここ10年間、商法はたびたび改正されてきました。1899年の施行以来、改正により対応してきましたが、企業経営の近代化、経営環境の変化に、つぎはぎだらけの商法では対応に限界が来ていました。

 近年頻繁に新聞紙上を賑わしている企業買収、市場での上場株式取得による経営権の取得などに代表される企業を取り巻く経営環境の近代化に対応すべく、会社法も近代化する必要に迫られていました。
また、会社に関する法律は現行商法、有限会社法、商法特例法を代表とする特別法によりばらばらに規定されていましたが、網羅性、統一性の面で問題を抱えていた点もありました。

 大きく捉えると「近代化への対応」「過去に積み上げられた課題対応の整理」の2点が、今回の会社法制定の背景にあるといえます。


■商法と会社法の関係

 これまでは、会社法という独立した網羅性のある法律は存在しませんでした。
会社に関する法律は「商法 第2編 会社」「有限会社法」「商法特例法」によって構成されていました。

 旧商法は明治32年に公布、施行されました。その後有限会社法が昭和13年に制定されました。株式会社の監査等に関する商法特例法は昭和49年に制定されています。このように会社に関する法律は、時代の要請に応え、都度、改正や新法律の制定により不備な点を補足してきました。

 特に最近10年間は企業経営の近代化、欧米化の進展に対応すべく、再三に渡り商法の改正が行われてきました。平成9年に3回、平成11年、平成12年にそれぞれ1回、平成13年は3回、平成14年から16年にかけては各1回、めまぐるしく改正されてきた経緯があります。


■会社法の活用

 これから起業しようとする経営者にとっては、最低資本金制度の撤廃と有限会社の廃止(株式会社への統合)が、最も大きな項目となります。
 最低資本金制度の撤廃により、会社設立が容易になる一方、有限会社に認められていた「決算公告義務がない」「役員任期がない」というメリットが活用できなくなります。

 すでに有限会社を設立している企業については、特例有限会社として存続することが可能ですので、心配はいりません。
 既存中小企業にとって大きな影響がある項目は「株式制度の変更」と「剰余金配分の見直し」ではないでしょうか。
 株式制度の変更により、特定の種類の株式にだけ譲渡制限をかけたり、株主間、社員間の譲渡は会社の承認は不要とするなど、資本政策、株主対策が柔軟に行えるようになります。戦略的な資本政策が取れる機動性が増したといえます。
 剰余金配分については株主総会ではなく、取締役会でも行えるようになります。また期中のいつでも剰余金からの配当が可能になりますので、配当政策も戦略的に行うことができるようになります。