世間はバブル景気で浮かれている中、２代目として事務所を任された待山先生は、時代に流されること無く、５年、10年先のことを見据えていた。
それまで、一般の中小零細企業を顧問先として取引してきた待山先生は、景気の影響を受けやすい中小零細企業をこのまま顧客としていても、事務所にとってプラスになることはない。そして、跡継ぎ不在に悩む中小零細企業の顧問先を多く見てきて、中小零細企業の将来性にも疑問を感じていた。 |
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そんな折、待山先生の背中を後押しする大きな出来事があった。昭和60年８月に施行された、「第一次医療法改正」だ。医療法の改正により、それまで様々な規制に縛られていた医業に対する規制緩和が行われ、その代わりに医療機関への課税化の動きが急速に進んでいったのだ。
「第一次医療法改正」により医療業界の構図を大きく変えたのは、「一人医師医療法人制度」であろう。改正以前は、診療所を開設する医療法人については、医師、歯科医師が常時3人以上勤務していることが要件とされていましたが、診療所経営の近代化のため1人又は2人でも認めることとされました。
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待山先生の読みは見事に当たり、その後バブル景気は崩壊。「第一次医療法改正」後、「一人医師医療法人制度」による規制緩和の影響もあり、医療機関は順調にその数を増やしていき、医業は会計事務所にとって大きなマーケットへと転換していった。
事務所の拠点を松戸に移したのにも大きな意味があった。元々、待山先生の出身地でもあったのだが、医療機関の新規開業の大きな兆候が松戸であることを察知していたのだ。そして、「一人医師医療法人制度」をうまく活用し、千葉銀行と提携して新規開業のお手伝いを行っていった。
その関係で、医薬品メーカーや薬の卸など、現在の待山会計コンサルティングには欠かせないルート先との縁が、自然と生まれてきたそうだ。
待山先生が事務所を引き継いだ時点では、医療機関の顧問先数は3件のみだったが、順調に医療分野で顧客を増やしていくこととなる。バブル景気に飲みこまれ、あのまま中小零細企業を対照に業務を拡大していたら、現在の待山会計コンサルティングは存在しなかったであろう。
経営精神からも分かるように、待山会計コンサルティングが成功を収めた一番の理由は、社会の変化に対して常にアンテナを張りめぐらせ、迅速に対応してきた点にあるだろう。
待山先生は「時代が後押ししてくれて、タイミングが良かったんだよ」と謙遜しているが、待山先生のように時代を読み、いち早く対応した会計事務所は当時、どれだけあっただろうか。若くして急速に顧問先を増やし、事務所を拡大していった待山先生を妬む同業者も多くいたが、待山先生は持ち前のマイペースさで事務所を拡大していった。待山先生の成功を妬むのではなく、その取り組み・考え方を見習わなければ成功はあり得ないのだ。 |
