神奈川県川崎市にあるLR小川会計グループは、税理士法人LRパートナーズと株式会社LR小川会計の２社で構成されている。同グループは現在、職員約90名を抱える神奈川県でも有数の事務所で、税務会計から社会保険の手続申請、記帳代行、資産管理・相続対策まで、お客さまのニーズに対応できるワンストップサービスを提供している。 昭和46年、小川湧三会長により小川税務会計事務所として川崎市・溝の口に開業された同事務所。開業以来の約40年間、地元川崎を中心に、経済・産業を支える中小企業のバックアップに努めてきた。その一環として小川会長は、地元のロータリークラブや経済会などの活動に、積極的に参加してきた。 ■LR小川会計グループの沿革
同グループの沿革を見てもらうと分かるように、昭和47年に独自の税務会計・経営業務プログラムを研究開発したり、昭和55年に業務強化及びお客さまニーズに応えるために4事業部制を導入したりと、会計事務所としては非常に早い時期での取り組みだと言えよう。 同グループの先見性のある取り組みを「お客さまにサービスを提供する上で、必要だったからやっただけです」と語る小川会長。 お客さまの繁栄が自分たちの幸せに繋がるというのが、小川会長の持論なので、常にお客さまのことを最優先して業務を行ってきた。そして、社名の冠LRの意味は、「LongRelations／なが〜いおつきあい」という、お客さまとの関係への願いが込められている。お客さまに新たなニーズがある場合はすぐにその業務に取り組み、同グループは常に進化しているのだ。 「うちは儲けるのが下手だから。事務所が何で大きくなったのか私も知りたいくらいです」と、笑顔で淡々と語る小川会長。小川会長の人柄と、お客さまのことを最優先に考える 同グループの取り組みが認められ、多くのお客さまを獲得したのだろう。 ■LR小川会計グループ 三つの願い
 LR小川会計グループが成長を遂げたのには、小川会長をはじめとする同グループの取り組みがその要因であることはもちろんだが、それ以外にも地元溝の口の、地の利と発展も大きく影響している。 同グループが拠点を置く川崎市の溝の口は、JR南武線（川崎駅−立川駅）と、東急田園都市線（渋谷駅−中央林間駅）が乗り入れている。また道路網では、国道246号（大山街道）と国道409号（府中街道）が交差しており、周辺地域からの路線バスが溝の口駅前に集中する、地域交通の要衝となっている。 川崎市の副都心として、市北部の行政および商業の中核機能を担い、その好立地から、以前より多くの企業や商店、病院・学校などが集まり、賑やかな街だった。 さらに駅前再開発が始まり、平成11年3月に駅前商業ビルおよび武蔵溝ノ口駅駅舎、ペデストリアンデッキが完成したことにより、更に溝の口は発展を遂げた。 同グループの自社ビルは、溝の口駅から徒歩５分ほどの立地にあるのだが、小川会長は「駅の方から近づいてきたんですよ」と、笑いながら語ってくれた。ペデストリアンデッキにより、同グループへのアクセスが格段によくなったのだ。 また、同グループのすぐ近くに、KSP（かながわサイエンスパーク）という、ベンチャー企業を支援する施設があり、企業家の育成やセミナーの開催、資金調達の支援、ビジネスマッチングなどを行い、施設には貸しオフィスも備えている。同グループとKSPが提携して、企業を支援する取り組みを積極的に行ってきた。 工・産業都市である川崎という立地と、地元溝の口の発展が、同グループの成長を後押ししたことは間違いないだろう。  昭和47年から現在に至るまで、同グループは自社で会計システムを開発してきた。当時としては、個人経営の会計事務所がオフコンを自前で購入し、システムを開発することは斬新なことだった。小川会長の先見性と行動力には驚かされる。 「夜中に、鉛筆をなめながらやっていましたよ」と言うように、システムの開発は小川会長ご自身が行っていたのだそうだ。 当時としては珍しかったオフコンを使用しているということで、同グループの取り組みは地元でも話題となり、周囲からの見る目が変わったそうだ。 小川会長の先見性、好奇心の旺盛さは全てお客さまのためを思ってのことであるが、現在の同グループの活動にも活かされている。 小川会長は、FPが日本に導入されると、いち早くその重要性と必要性に気付き取り組み始めた。その一早い行動力が、現在の同グループの活動を支える、資産管理や相続対策、事業承継へと活かされているのだ。 様々なことに興味を持ち取り組むが、どれも中途半端に終わってしまう人が多い中、小川会長は、全てはお客さまのためという思いから取り組んでいるため、全てにおいて業務に活かせるのだろう。 小川会長の先見性や物事への取り組み姿勢は、真似して真似できるものではないが、会計人として見習うべきであろう。 同グループは、月に10回ほど、地元の中小企業経営者向けのセミナーを積極的に開催している。同グループの事務所内にあるセミナールームで、中小企業経営者向けの事業承継セミナーや、個人向けの相続セミナーなどを毎月無料で開催しているのだ。 月10回のセミナーを定期的に開催することは、そう簡単にできることではない。地元のお客さまを第一に考える小川会長だからこその取組みだと思いきや、積極的にセミナーを開催する理由が、他にもあるのだそうだ。 「セミナーを行わないと、職員たちのマインドが内向きになっていってしまうんですよ。内向きになってしまったマインドを、再度盛り返すというのは非常に大変なこと。だからお客さんがほとんどいなくても毎月開催し、マインドが内向きにならないようにしていることが大切なのです」
毎月多数開催されるセミナーは、お客さまの問題を解決するためや、見込み客の獲得だけを目的としているのではなく、職員の活性化を目的としているというのだ。小川会長のように職員の教育まで考え、セミナーを開催している事務所はそうは無いだろう。どうしても見込み客獲得を、セミナー開催の目的としてしまうことだろう。40年に渡り会計事務所を経営し、多くの職員を育成してきた小川会長だからこそ考えつく職員の育成方法だ。 「多分、私がそのようなことを考えているなんて、事務所の社員たちも気付いていないと思います。お客さんが集まらないのなら、これを他の良いものにどう変えていくか考えてくれればいいんだけど、採算が合わないから止めちゃおうというのは一番ダメですね。入口は私が何でも作るけど、それをもっと社長をはじめ職員たちが、もっと活かしていってもらいたいですね」 同グループでは、10年以上も前から手作りの広報誌を毎月発行している。この広報誌はお客さまはもちろん、セミナーに参加してくれたお客さま等に幅広く配布しているのだ。小川会長、小川社長自らも原稿を執筆するこの広報誌は、多くのお客さまに好評を博している。 現在は、職員が中心となって製作行っているのだが、一時期、事務所名を入れるだけの、できあいの広報誌を使用したことがあるそうだ。しかし、小川社長はできあいの広報誌では意味がないと、すぐに止めてしまったそうだ。当時を振り返り、小川会長はこう語ってくれた。 「人の書いた原稿は、いくら良く出来た内容の原稿だとしてもピンとこないんですよね。だからできあいのものを使用するのはやめました」 その時を境にしばらくの間、同グループでは広報誌の発行を中断した形になっていたが、ある時職員が、また広報誌の発行を再開したいと小川会長に相談してきたのだそうだ。 「一回中断したものをまた再開するには、ものすごいエネルギーがいります。職員たちは３ヵ月に１回の発行でと言っていたのですが、やるなら毎月にしないと大変なので、毎月発行する形で再開させることになりました。現在でも何とか職員たちが頑張って、毎月発行することができています」  小川会長と職員たちの地道な活動は、顧問先からの信頼と、多くのお客さまの獲得へと繋がっている。リーマンショック以降、会計業界では顧問先の減少に悩まされているが、同グループではほとんどその影響を受けていないのだ。広報誌の発行は、直接売上に繋がるものではないのでその費用対効果は計り知れないが、厳しい経済環境の中、成長を続けている同グループを見ている限り、非常に重要な取り組みであると思い知らされた。 「お金にならないから、社長に怒られているんですよ。無駄なことばかりしてとね。でも、お客さんが税理士を変更しようと考えた時、ちょっと相談してみようかな、と思ってもらえるくらいにはなっているかなと思います」と小川会長は笑いながら語ってくれた。 |
