(1)大幅に縮小した会計事務所マーケット
近年、会計事務所マーケットは大幅な縮小傾向にあるといわれています。その背景には、中小・零細企業の廃業の増加に加え新規開業率の低下が急速に進んでいるのに対して、税理士の増加と金融庁の取組みでもある公認会計士の大量増加により事務所間の競争が激化し、税理士法人の急増が会計事務所の大型化と業務内容の高度化・複雑化に拍車をかけています。その結果、大規模事務所と小規模事務所という、会計事務所業界の二極化が益々進んでいくものと考えられます。加えて、給与計算や記帳代行などの会計業務への異業種の参入による低価格化競争など、今までのような会計業務だけを行っていては、顧客満足度は得られず、事務所を維持させていくことが困難な時代であることを所長先生は認識しなければりません。したがって、事務所を永続発展させるためには、緊急の対策を講じなければいけないのです。

■事業所数の推移
 平成18年平成13年平成8年平成3年
事業所数5,911,0386,349,9696,717,0256,753,858
前回比▲438,931▲367,056▲36,833

■会計事務所数の推移
 平成18年平成13年平成8年
事業所数32,66433,71633,534
前回比▲1,052182
事業所・企業統計調査より(総務省)

■税理士・税理法人数の推移
 平成20年平成18年平成16年
税理士数71,18570,06868,642
税理士法人数1,6551,175693

■公認会計士試験合格者の推移
 平成20年平成19年平成18年平成17年平成16年
合格者数3,023 2,695 1,372 1,308 1,370

(2)勝ち組になるためには組織経営への早期転換が必須
多くの事務所では、所長先生が税理士業務に加え経営者として、そして営業マンとして事務所を切盛りしています。しかし、いつまでも所長先生が事務所のすべての業務を管理するような個人経営を行っていては、事務所の成長発展は望めません。会計事務所の二極化により、その明暗がはっきりしてきている中、いつまでも何もせずに手をこまねいていたら関与先の減少は否めません。
厳しい状況下で、事務所を永続発展させ勝ち組へと昇りつめるためには、顧客満足度を得られるような新たな商品を開発し、新規関与先の獲得に勤める必要があります。そして、会計事務所の二極化へ立ち向かうには組織戦の準備が必要なのです。しかし、いつまでも個人経営を行っていては現状の業務をこなすことで手一杯になり、新規関与先を獲得するための活動など出来るわけもありません。事務所が手遅れの状態になってしまう前に、個人経営の事務所から脱却し、組織運営への早期転換をおこなわなければいけません。
事務所を組織経営へと転換することにより、個人経営にはなかったメリットが得られるようになります。そのメリットは、事務所をより強固なものへと成長させてくれるものなのです。

■事務所の組織化により得られるメリット
攻めと守りの分担で専門家が育つ
新規分野を担当する人材がいる
専門的ノウハウが蓄積する

 攻めと守りの分担で専門家が育つ
 事務所を組織経営にするには、まず各業務を役割分担して職員に任せることから始めます。その際、業務を拡大に導く攻めの仕事が適しているのか、または既存業務のレベルアップを図っていく守りの業務がてきしているのか、職員の能力を見極める必要があります。そして、役割の範囲と責任を明示してあげることにより、それまで所長先生の指示でのみ動いていた職員が、自発的に行動するようになり、能力向上を図ることもできます。攻めと守りの業務を分担することにより、各業務の専門家を育成することが可能になります。
  
 新規分野を担当する人材がいる
  組織を拡大し職員が増えていくと、既存の業務だけでは経営が賄いきれなくなり、新たな業務を取り扱わなければなりません。事務所を組織化することにより職員の能力が向上し、業務の効率化が図れ、人材を新規分野に配置したり、新たな人材を採用したりする余裕ができます。
 コンサルティングなどの新規業務を取扱うということは、新たなマーケットが広がり、関与先の拡大が見込めるのです。
  
 専門的ノウハウが蓄積する
 役割分担を行うことで、業務の役割と責任の範囲が明確になるため、職員の能力の判断が容易になります。そのため欠けている能力も明確となり、それを補うために自己学習や研修会などを活用し、さらなる能力の向上を図ることができます。そして身につけたスキルを職員間で共有することにより、専門的なノウハウを事務所の財産として蓄積することができます。
(1)役割分担することからはじまる組織経営
事務所の組織経営とは、所長先生がそれまで行ってきた業務を役割分担し、部下に任せることです。その実現のためには、さまざまな人材が必要になってきます。
組織には攻める人と守る人が必要です。攻める人とは、新しいアイデアや企画を作り出し、積極的に取り組んでいく人です。所長先生が行っていた新規関与先開拓を行う営業職や、そのために必要な新商品の開発を行う企画担当者がそれにあたります。守る人とは、言われたことはきちんとこなせるし安心感のある人です。事務所の既存業務の会計・税務担当者が守る人と言えるでしょう。
そして、それぞれの良い点を引き出し、人材を活用する経営幹部や管理者が必要になります。経営幹部や管理者は、経営者の方針を職員たちに伝える非常に重要な役目を担っています。
このように、一般企業では当たり前のように行われている組織経営、役割分担が、会計事務所の多くで行われていないのが実情です。会計事務所にも組織経営が必要だということは、自明の理なのです。

(2)必要な人材は借金をしてでも確保する
会計業界には所長先生を含め数名で活動を行っている事務所が圧倒的に多く、組織経営が必要だといわれてもどうすればいいのだ、人材が不足しているから組織経営は無理だ、と思われる所長先生も多いことでしょう。しかし、そのような言い訳を言っているだけでは、ただ事務所が傾いてしまうのを待っているのと同じです。
新規に人材を確保するとなるとさまざまな費用がかかりますが、目先の最大効率化を目指していたら、数年後、そのつけが必ず回ってきます。勝ち組になるためには、今、お金を使わなければなりません。一般企業では、先行投資は当たり前のことです。会計事務所でも、輝かしい将来のために、借金をしてでも優秀な人材を確保しなければなりません。