(1)職員に周知すべき、よくある脱税の手口
職員が脱税指導及び類似行為を行ってしまった場合、業法違反として所長税理士も処罰の対象となります。職員が脱税と気がつかずに、脱税行為に加担してしまうことのないよう、一般的な脱税の手口について、職員に周知しておく必要があります。

■よくある脱税の手口
領収証工作架空人件費売上の除外在庫の圧縮

領収証工作
脱税で、昔からよくあるパターンは領収証を工作することです。
領収証は、その取引があったかどうかを判断できる証拠になります。そして、領収証があれば帳簿上はその金額を経費とできるため、偽の領収証を使って脱税する手口が非常に多いのです。
領収証の工作方法には(イ)改ざんと(ロ)偽造の2パターンあります。

(イ)
改ざん
改ざんは、白紙の領収証をもらって好きな金額を書き込むか、あるいは、領収証の数字を書き換えて水増しします。たとえば、「1」を「9」、「3」を「8」に書き換えたり、桁数を増やしたりするといった具合です。

(ロ)偽造
一方、偽造は、単純な手口では市販されている領収証を買ってきて、架空の業者などの領収証を作るといったものがあります。
悪質なものになると、偽の領収証を闇業者から買う方法があります。

架空人件費
本当は雇っていない人を雇っているように見せかけたり、架空の人物を仕立て上げて雇っているように見せかけたり、人件費を実際よりも多く払ったように偽装する方法です。
これも昔から多い手口なのですが、現在では、従業員を雇った場合、従業員の住所、氏名、給与額等を役所に提出しなければなりません。ですから、架空の人物を雇ったようにした場合、税務署がその人物の所在などを確認すれば分かってしまいます。また、人件費の水増しをしても、社会保険の面などから調べれば、簡単に発覚します。
ただし、調査官が頭を悩ませる手口があります。アルバイトなど、社会保険の加入義務がない人を雇ったように見せかけて脱税する方法です。住所や氏名等を役所に提出する必要がないので、その人物を特定することが難しいのです。

売上の除外
個人商店や飲食店など、現金商売をするところでよく見られるのが、売上を「抜く」という脱税行為です。しかし、売上にはそれに対応する仕入があり、仕入先をチェックされれば、簡単にばれてしまいます。
そこで、知恵のある人は、売上を隠すとともに、抜いた分の売上に対応する「仕入」も隠します。たとえば、洋品店の経営者が、毎日の売上から数十着分の売上を抜いていたら、税務調査で、仕入れた服の数と売上数を付き合わせると、仕入の数の方が多くなります。この仕入の余った分はどこに行ったのか追及されれば、簡単に脱税が見付かってしまうのです。
ところが、抜いた売上分だけ、仕入れた服の数も減らして帳簿に付けていると、税務署が仕入の数から売上を調べても脱税は発覚しません。

在庫の圧縮
脱税は、売上を隠すか、経費をでっち上げるかがほとんどなのですが、このほか、期末の在庫を少なく見せかけるという方法があります。利益が少なく計上され、その分、かかってくる税金が少なくなるからです。
その具体的方法としては、期末の卸棚表を書き換えるか、破棄して実際よりも少ない在庫量を帳簿に記載するということが多いようです。以上のような脱税の手口を職員に周知し、仮にそのような場面に出くわした際に、見て見ぬふりをすることのないよう、ましてや決して加担する事のないよう、普段から口酸っぱく教育しておくことが重要です。

(2)脱税まがいの節税相談を受けた場合の対応策
「こうすれば税金が安くなる」、「こうすれば節税できる」といった内容の、いわゆる「節税本」と称されるものが、世の中にはんらんしています。そのため、まれに顧客から、「これで節税できる」と顧客が勝手に思い込んだ方法について、相談を受けることがあります。
しかし、一般的にいえば、事実を無視して虚構をつくったものは、いつか必ず見破られるものです。このようなケースでも、その節税方法は結局、本人だけが「可能だ」と思い込んでいるのであれば、やはり真実を伝えるべきです。そして、会計事務所は、その結果の恐ろしさを顧客に十分認識させる必要があります。

■脱税まがいの相談を受けた場合の対処ポイント

中身をよく吟味し、十分聞く
本人だけが思い込んでいる「節税」であれば、真実を伝える
結果の恐ろしさを十分認識させる

例えば、以下のようなケースを考えてみます。

例)交換の特例
「交換の特例」の場合、交換できれば譲渡所得に対する所得税と住民税は課されない。
しかし相手方の資産は、棚卸資産であって固定資産ではない。これをなんとか交換の特例を使えるよう、固定資産に仕立てたい、といった相談。

この場合、税理士(もしくは会計事務所の職員)としてどう対応するのが正解でしょうか。
ここでなんとか固定資産にもっていくよう、取得時の背景、現時点での所有目的を固定資産に仕上げようとしたのでは、結果的には脱税に手を貸したことになります。
ここでは事実確認をまず第一にすべきです。始めから、「なんとか節税へ誘導しよう」と考えると、とんでもないことになってしまいます。
交換ができると信じて交換したものの、結局「交換特例」不適ということになった場合、両者ともに納税が発生します。そうなった場合は、間違いなく責任の所在が問われることになります。税理士(会計事務所の職員)は、そういったリスクについて十分認識して行動し、アドバイスをしなければなりません。
お客さんの認識は「節税」であっても、結果は「脱税」であるということを、税理士や会計事務所の職員として十分認識し、かつお客さんに事実を伝えるべきだといえます。
ちなみに顧客から脱税まがいの相談を受けた場合は、以下の点に注意して対処するようにします。

■脱税まがいの節税相談を受けた場合の対処ポイント
(3)顧客が脱税を意識しているケースへの対処法

結論的には脱税には手を貸さないことです。
しかしそれでは身も蓋もありません。とにかくこのようなケースでは、相手の話をじっくり聞くことが大切です。事情、背景、経緯、目的、方法を相手に十分話させて、相手を理解することです。
本人が「脱税だ」と認識しているのですから、脱税の手法についてアドバイスしたのでは、会計事務所の職員として失格です。といっても正面きって、「脱税は駄目です」と伝えても、それを承知の上での相談ですから、相手もそんなことは分かっています。
脱税相談を受けてしまった場合の対処フローは以下の通りです。

■脱税相談を受けた場合の対処フロー
「脱税のコストやエネルギーは、脱税で得るお金以上」というのが通説です。くれぐれも、脱税方法のアドバイスをしないよう、職員に対しても再度徹底を図りましょう。

■脱税相談を受けた場合の対処ポイント
正論を言う前に、相手の事情をよく理解する
脱税の手口は絶対アドバイスしない
脱税のリスクをはっきり伝える
「脱税で得たお金は死に金になる」ことを伝える
正論を言うのはいいが、感情的対立は避ける
最後は、はっきりと手を引く


(4)会計事務所が脱税行為に加担した場合の罰則
税理士が関与先の脱税行為に加担した場合、通常、税理士法違反によって税理士資格が剥奪されます。さらに、場合によっては、脱税の共犯として告発される可能性もあります。
特に、税理士の大半は税法以外の法律に詳しくないため、刑法における共犯を甘く考えがちです。しかし、いったん脱税指南をしてしまえば、立件可能性はともかく、教唆犯として犯罪の構成要件を満たすことになることは肝に命じておくべきでしょう。税理士が主犯になることはないとしても、「聞かなかったこと」では済まされない共犯者になりかねません。
また、当然ですが、「職員が勝手にやったこと」も税理士法違反に該当します。
税務判断を職員がやること自体、ニセ税理士行為に当たり、雇用主である所長税理士は名義貸し又は、管理監督責任が問われることになります。
共犯にされてしまうよりはまだましですが、税理士資格の停止要件には十分該当します。
近年では、脱税犯に対しても罰金刑ではなく、収監がなされるケースも増えてきています。脱税の共犯者に対する収監の可能性も含めて、会計事務所の所長先生並びに職員は脱税に加担することの恐ろしさを十分に肝に命じておくべきでしょう。

■脱税相談に対する罰則
資格取り消し刑事罰

(1)職員による「にせ税理士行為」とは
職員による不正行為で特に多いのが、俗に「にせ税理士行為」と呼ばれるものです。

■税理士事務所職員による「にせ税理士行為」とは…
関与先からの繋がりで、単発の個人確定申告等を事務所を通さず、個人的に引受け(もちろん作成税理士欄は空欄ですが)、個人的に報酬を受け取るというもの

にせ税理士行為は、税理士会主催の税理士事務所職員の研修会等で、必ず話に出ます。又、その際には、にせ税理士行為が発覚した場合のリスクや罰則についても、いやというほど聞かされますが、一向になくならないのが実情です。

■税理士事務所職員による「にせ税理士行為」の罰則及びリスク
【罰則】 2年以下の懲役または100万円以下の罰金
【リスク】 懲戒解雇


(2)にせ税理士行為がなくならない理由

税理士会等で盛んに「にせ税理士行為」の撲滅に向けた取り組みが行われていますが、このような不正行為は一向に後を絶ちません。なぜ、にせ税理士行為がなくならないのか、その理由について、簡単に考えてみたいと思います。

■にせ税理士行為がなくならない理由
職員一人で完結する業務のため不正の温床になりやすい
業務自体は資格の無い職員でも行える
責任がないので脱税まがいの処理を行える

職員一人で完結する業務のため不正の温床になりやすい
会計事務所の仕事が、基本的には一人で完結する仕事であるため、不正が行われやすい、といった事情があります。業務自体は資格の無い職員でも行える
多くの会計事務所では、資格を持っていない職員が、顧問先の決算や申告の打ち合わせ、申告書の作成まで行ってしまっています。そのため税理士本人が関与先と打ち合わせを行わないケースも非常に多くあります。
そのため、ついつい関与先は担当者の事を「資格を持っている税理士」だと勘違いしてしまって、彼らのことを「先生」と呼んでしまうことも決して少なくありません。
また時々税務署がこういう税理士事務所の職員のことを「先生」と呼ぶことまであるので、顧問先や税務署から先生呼ばわりされることで職員自身が自分の事を税理士だと思い上がって部外者に対して「税理士の○○です。」と名乗ったり、名刺を作って配ったり、あまつさえ、事務所を通さずに個人で仕事を受けるケースまで出てきてしまいます。

責任がないので脱税まがいの処理を行える
不正を行う職員は、「事務所を通すよりも安い料金でいいですよ」、「事務所を通さない方が税金を安くできますよ」等、魅力的なトークを使って個人で仕事を受けようとします。そして、彼らは本当の税理士よりも自分の方が税金の抜け道をたくさん知っていて、関与先にとってどれほど融通のきく存在であるかをアピールします。
にせ税理士行為では本当の税理士よりも「節税」(にせ税理士が行う「節税」は多くの場合「脱税」のこと)や「安さ」を魅力的に語ることができるのは、「責任を取らないから」です。責任を取らないからこそ、税金を不当に安くしたハイリスクな申告書を作成しても平気なのです。

(3)にせ税理士行為によって事務所が受ける損害
にせ税理士が会計事務所にとってなぜ迷惑なのかという理由は、もちろん、本来の事務所の仕事を不当に奪っているから、という理由もありますが、そのほかに、にせ税理士行為による悪行やレベルの低い仕事のせいで会計事務所の評価まで悪くなってしまう可能性があります。
また、職員による「にせ税理士行為」が発覚した場合は、その職員を懲戒解雇により処分することになりますが、その際その職員が担当していたその他全ての業務を引き継がなければならなくなります。
そのことによる人的負担、関与先に与える迷惑、そして関与先が抱く事務所に対する不信感、この3つが最大の損害といえるのではないでしょうか。
なお、にせ税理士に対する罰則規定として、税理士法第59条において、以下のように規定されています。■第59条
次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
〜中略〜
3.第52条の規定に違反した者
〜後略〜


■第52条(税理士業務の制限)
税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。

つまり、実際の収監もあり得るということです。職員に対しては、このことをよ強く認識させておく必要があります。
(1)税理士法人社員に課される競業禁止義務
先の税理士法改正によって新たに制定された税理士法人制度では、以下のような「競業禁止義務」が明確に規定されています。

■税理士法第48条の14(社員の競業の禁止)
税理士法人の社員は、自己若しくは第三者のためにその税理士法人の業務の範囲に属する業務を行い、又は他の税理士法人の社員となつてはならない。
2 税理士法人の社員が前項の規定に違反して自己又は第三者のためにその税理士法人の業務の範囲に属する業務を行つたときは、当該業務によつて当該社員又は第三者が得た利益の額は、税理士法人に生じた損害の額と推定する。

税理士法人の社員は、他の社員の承諾の有無に関わらず、自分自身や第三者のために、税理士法人の業務の範囲に属する業務を行ってはいけないことになっています。また、同様に、他の税理士法人の社員にはなれません。
また、社員と税理士法人間の取引や、社員と税理士法人の利益が相反する取引については、商法第75条(社員会社間の取引)の規定が準用されることとされています。なお、税理士常人の社員が税理士事務所を設置することも固く禁止されています。


(2)競業禁止義務が規定されている理由

税理士法人の社員に対しては、なぜ、このように厳しい競業禁止義務が課されているのでしょうか。
税理士法が、税理士法人の社員に対して、例外なく競業を禁止することとしているのは、以下の理由によるものです。





法人の事業上の秘密を保ち、利益衝突を避ける必要があること
法人の事務所を本拠に税理士業務を行い、法人の業務を執行する社員たる税理士が個人としても税理士法人の業務範囲に属する業務を行うこととなると、委嘱した納税者にとって、責任の所在が曖昧で法律関係が不明確となり、委嘱者(納税者)保護に欠ける面があること


(3)勤務税理士の競業禁止義務違反がもたらすリスク
勤務税理士が競業禁止義務に違反した場合は、前述の通り、その取引を法人のためになされたものとみなし、それによる利益も法人のものとすることができますが、対外的にはそれだけでは済みません。
すなわち、税理士法第48条の20において、「違法行為等についての処分」ということで、以下のように規定されています。

■税理士法第48条の20
財務大臣は、税理士法人が、この法律若しくはこの法律に基づく命令に違反し、又は運営が著しく不当と認められるときは、その税理士法人に対し、戒告し、若しくは1年以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は解散を命じることができる。

つまり、勤務税理士による競業禁止義務違反が発覚した場合、場合によっては、税理士法人が一定の行政処分を受ける可能性もあり得るということです。
税理士法人の社員である勤務税理士は、このことをよく肝に銘じておく必要があります。

(1)元税理士事務所職員に対する名義貸し行為
以前、税理士事務所に勤務しており、資格を取得できないまま退職した者が、退職後も在職中培った知識・技能・人脈を頼りに、引き続き業務を行っているケースがあります。在職中に関与していた会社の経営者に「従順さ(きわどい税務・会計処理をしてくれる)」を気に入られ、退職後も面倒を見てもらっているケースが大半です。
当然、無資格のまま税務代理や税務書類の作成等、税理士業務を行えば、税理士法に違反する事になります。そこで、そういった元税理士事務所職員は、多少のコストをかけてでも、資格取得者の名義を借りる算段をつけようとします。
また、こういった無資格の元税理士事務所職員に対して、名義を貸すことで小遣い稼ぎをしている税理士が存在していることも事実です。ただし、名義貸しが発覚した場合、名義を貸した側も罰せられることになりますし、それが勤務税理士だった場合、事務所の評判に大きく傷がつくことになります。


(2)代表者死亡に伴う他事務所からの名義借り行為
代表者のみが税理士資格を保有していた事務所が、代表者の死亡後も引き続き業務を行うために、他の税理士の名義を借りる事があります。
元々、代表者同士仲が良かったりした場合に、死亡した代表者の息子から頼まれて名義貸しに応じてしまう、といったケースもあるようですが、その場合は、名義貸しに加え、複数事務所の設置禁止に抵触する恐れもあります。

■名義貸し及び複数事務所の設置禁止に抵触するケース




名義貸しが発覚した場合、借りた側は「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」という非常に重いペナルティを負うことになります。
また、事件が報道されることで、社会的な制裁をも受けることになります。
貸した側の税理士が法的なペナルティを受けるケースは、多くありませんが、当然、所属の税理士会からは登録停止や除名処分が下されます。また、法令遵守がこれだけ叫ばれている現代社会において、このような事件にかかわった税理士は、当然のことながら社会的信用を失い、事務所の評判にも大きな悪影響を与えてしまいます。

(3)勤務税理士の名義貸し行為がもたらすリスク
万一、所属の勤務税理士が名義貸し行為を行っていた場合、事務所にはどのようなリスクがもたらされるのでしょうか。リスクの大きさを十分に認識したうえで、名義貸し行為の禁止を徹底することが重要です。

■勤務税理士の名義貸し行為によるリスク
名義を貸したにせ税理士の起こしたトラブルに巻き込まれるリスク
名義貸しの事実が広まった場合、事務所の評判が低下するリスク

名義を貸したにせ税理士の起こしたトラブルに巻き込まれるリスク
一番ありがちなリスクが、名義を貸したにせ税理士が作成した申告書等に問題があった場合、名義を貸した(判子を捺した)税理士に責任が及ぶケースです。
にせ税理士は基本的には、一切責任を負わないため、危ない橋を渡りがちです。税務署は署名のある税理士に問い合わせを行うため、余計なトラブルに巻き込まれる可能性は高いといえます。

名義貸しの事実が広まった場合、事務所の評判が低下するリスク
にせ税理士行為で逮捕される事件が散見されますが、その際、貸した側の税理士も罰せられる可能性があります。また、関与した税理士名や所属していた会計事務所名が公表される場合もあります。
当然、会計事務所の評判の低下や、関与先との関係悪化等の被害が懸念されます。このようなリスクを十分に踏まえた上で、勤務税理士に対しては、くれぐれも名義貸し行為をすることのないよう、改めて徹底する必要があります。
(1)期限のある書類の提出漏れ
期限のある書類の提出漏れは、最も起こりやすい過失のひとつです。期限のある仕事について、本人が自分の頭の中だけで把握している状態を放置していれば、ミスは繰り返されます。期限のある仕事の「見える化」を図り、組織で共有する仕組みが必要です。提出を失念しやすい書類について事例をあげておきます。■提出を失念しやすい書類
青色申告承認申請書
簡易課税制度選択不適用届出書
青色事業専従者給与に関する変更届出書   等々

青色申告承認申請書
「青色申告承認申請書」の提出を失念した結果、青色申告が取り消されてしまうといった事例が多く発生しています。特に、年1回の決算のみの関与先で、起こりやすいと言われています。
青色申告が取り消されてしまうと、繰越欠損金があって黒字決算の場合、欠損金の繰越が適用されないことになります。その結果、過大な税額が発生してしまいます。
このような過大納付税額について、関与先から損害賠償請求を受けるケースも増えており、大きなリスクに繋がります。

簡易課税制度選択不適用届出書
「簡易課税制度選択不適用届出書」の提出を失念してしまう事例も多く発生しています。
簡易課税制度を選択している事業者が、多額の設備投資等を行う予定があれば、原則課税を選択しないと、仮に消費税の還付があっても、受けることができません。
設備投資等の予定を把握していなかったために、書類を提出しなかったというケースは少なく、大半は、設備投資等の予定は十分把握していたにも関わらず、担当者の単純な不注意によって提出を失念してしまっています。

青色事業専従者給与に関する変更届出書
「青色事業専従者給与に関する変更届出書」の提出漏れも、まれに発生しています。
青色事業専従者給与の額が変更になった場合、この「青色事業専従者給与に関する変更届出書」の提出が必要になります。
提出を失念していたことが税務調査等で発覚した場合、届出給与額と給与支給額との差額について過去にさかのぼって修正申告が発生してしまいます。
これも、給与額の変更について知らされていなかったため提出が漏れてしまったというケースは少なく、大半が給与額の変更について知らされていたのに、担当者の不注意により提出を失念してしまっています。
ちなみに、修正申告で発生する過大納付税額については、損害賠償の対象となります。

(2)税法に対する誤った理解や認識不足を原因とする申告ミス
最終的には税理士の知識・能力による部分が大きいですが、こちらに関しての対策も重要です。

■よくある税制に対する認識不足
簡易課税方式における仕入率
個別対応方式の選択
受取配当金等の益金不算入
各種特例の失念
外国税額控除   等々

簡易課税方式における仕入率
消費税における簡易課税制度のみなし仕入率について、事業区分を誤ってしまうケースが散見されます。担当者の思い込みによるケースが大半であり、申告にあたって、依頼者の事業内容をきちんと確認すれば防げるミスです。

個別対応方式の選択
消費税の仕入額控除方式について、一括比例配分方式を選択すれば還付を受けられるのに、誤って個別選択方式を選択してしまうミスもまれに見受けられます。これも、単に担当者の不注意によるものが大半を占めています。

受取配当金等の益金不算入
配当金はその支払法人において、課税後の利益から支払われるものであるため、これに対して課税すると二重課税になります。このことから、「受取配当金等の益金不算入」が認められています。ところが、これも不注意により適用を失念してしまうケースが散見されます。
各種特例の失念
その他、税法には様々な特例が設けられています。国の施策等により、頻繁に新たな特例が制定され、また廃止されていますので、ミスを防ぐには、情報の収集と更新が欠かせません。

外国税額控除
日本国内で生じた所得及び国外で生じた所得については、日本で課税されますが、国外所得について外国の法令で所得税に相当する租税の課税対象とされる場合、日本及びその外国の双方で二重に所得税が課税されることになるため、、一定額を所得税額から差し引くことができます。これを外国税額控除といいます。

これを失念し、損害賠償請求を受ける事例も多く発生しています。
(3)事務所の信用を失墜させる行為
税理士及び税理士法人は、自己についてはもちろん、税理士一般の信用を失墜するような行為をしてはならないと税理士法に規定されています。

参考)
税理士法第37条(信用失墜行為の禁止)
税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。

これは税理士及び税理士法人の使命に照らして、社会から要請される当然の義務であり、職員もこれに拘束されることはいうまでもありません。
信用失墜行為には様々なものがありますが、こでは特に以下の3点について解説していきたいと思います。

飲酒運転
犯罪行為
詐欺行為

飲酒運転
職員の飲酒運転で、所長税理士の使用者責任が問われる可能性があります。
飲酒運転による悲惨な事故が後を絶たないことから、最近は罰則や取締りの強化と共に、社会の飲酒運転に対する目も一層厳しいものになっています。
そしてその厳しい目は使用者である会社(事務所)の飲酒運転に対する防止努力の姿勢にまで注がれるようになってきました。
実際に事故が起きたとき、たとえそれが私有の車であったとしても、マスコミ等で事務所名が流れたりした場合、事務所のイメージは大きく損なわれることになります。また、それのみならず、日ごろの飲酒運転に対する事務所の姿勢までもが問われることになります。
以前は、自動車事故を起しても、それが会社所有の車や業務中の事故でない限り、使用者責任を問われることは、ほとんどありませんでした。
しかし、最近は会社の社会的責任として、社員の飲酒運転撲滅に積極的に取り組むことが求められるようになっており、もはや「私生活上のこと、業務とは関係ないこと」として使用者責任を逃れることは出来なくなっています。

犯罪行為
従業員の犯罪行為に対して、雇用者側がどこまで責任を負うべきか、という点については、様々議論が分かれるところです。
ただし、会計事務所においては、税理士法が適用され、その中で信用失墜行為の禁止が明確に謳われており、それは事務所職員にも及ぶことも明確に謳われています。
会計事務所の職員が犯罪行為を行った場合、信用失墜行為の禁止義務に抵触することになり、所長税理士も処罰の対象となります。
また、事件が報道され、所属事務所が明るみに出れば、事務所に対する社会的な信用も失墜してしまいます。
詐欺行為
詐欺行為も犯罪行為のひとつですが、関与先の金銭管理に直接関わることができる、という会計事務所の業務の特性ゆえ、職員による関与先に対する詐欺行為もまれに発生しています。
関与先から個人的にお金を借りて返さない、と言ったケースや、集金したお金を横領してしまうといったケースが、比較的多いようです。これらの信用失墜行為に対する懲戒処分について、財務省が以下のように告示しています。

■財務省告示第104号(税理士に対する懲戒処分等)
2 税理士が法第46条(一般の懲戒)の規定に該当する行為をしたときの量定の判断要素及び量定の範囲は、次の区分に応じ、それぞれ次に掲げるところによる。
〜中略〜
(2) 法第37条(信用失墜行為の禁止)の規定に違反する行為のうち、以下に掲げる行為を行ったとき。
〜中略〜
ヘ その他反職業倫理的行為(上記以外の行為で、税理士としての職業倫理に反するようなことをしたとき。)
戒告、1年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止