(1)使用目的に合わせて形式を定める
マニュアルに記載する内容は、業務によって違いがあります。また、使われ方もさまざまです。したがって、マニュアルの形式も、それに適したものである必要があります。
マニュアルを常に持ち歩かなければならないような場合には、手帳サイズで作成しておいたほうが便利です。
たとえば、送迎を担当する自動車の運転者に持たせるべき交通事故発生時の対応に関するマニュアルのようなものは、そうした形式が適しているといえます。
一方、日常的に活用する業務マニュアルは、持ち歩く性格のものではないでしょうから、見やすさと使い易さを考慮したマニュアルとすることが望ましいです。
このように、マニュアルの形式も用途によっていろいろなものがあるといえます。
しかし、マニュアルの形態について何も取り決めていないと、それこそマニュアルの数ほどの形態が存在することになってしまいます。
やはり、管理という側面から考えると、マニュアルは、目的に応じて一定の形式を定めておくべきです。

■マニュアルの形式は「使われ方」を考慮して決める
形式 メリット デメリット 活用法
文章形式 詳細まで説明ができる 要点を確認するのに時間がかかる
ボリュームが多く、使いにくい
諸規程、規則
ガイドライン
手順書形式 業務の流れが分かりやすい
要点をすぐに確認できる
ボリュームが少なく、見やすい
コンパクトになっているために文字が見にくい 業務手順書
作業工程表
フローチャート形式 業務の流れが分かりやすい
要点をすぐに確認できる
ボリュームが少なく、見やすい
詳細まで説明することが難しい 緊急対応
作業工程表
緊急連絡網
図を取り入れた形式 ビジュアル的に見やすい
強調したい部分を強調できる
ボリュームが少なく、見やすい
詳細まで説明することが難しい 緊急対応
緊急連絡網
手帳サイズ形式 持ち運びが容易
いつでも確認ができる
詳細まで説明することが難しい 職員行動指針
事故対応

(2)マニュアルのレイアウト作成
マニュアルの書式をどのように構成するかも、記載する内容や用途によって違いがあります。業務によっては文章だけで説明できるものもあります。
しかし、場合よっては図表やイラストなどで説明したほうがわかりやすいこともあります。また、業務の流れを示すのであればフローチャートが適しています。その他チェックリスト方式というものも考えられます。
レイアウトを考えるうえで基本となる要素としては「見出し」「キャプション」「本文」「図表」「ページ番号」などがあります。これらを読みやすいように配置することが大事になります。

視線の動きに沿ったレイアウトにする
人間の視線は、文章が横書きの場合は左から右へ、また上から下へというふうに流れます。レイアウトを検討するにあたっては、この性格を頭に入れておく必要があります。

             ■視線の動きを考慮する
循環の動き


読みやすい文字列配置にする
文字列をどのように配置するかも、読みやすくするうえでは重要です。
文字列の配置の方法としては左揃え、右揃え、中央揃え、インデント(字下げ)、均等割りなどがあります。これは文字列だけでなく、図表などの配置についても応用できます。
人間の自然な視線の動きに合わせるやり方の基本は、横書きならば左揃えということになります。一方、右揃えにすると文字列に変化をつけることができます。中央揃えはレイアウトに安定した印象を与えたいときなどに効果があります。

             ■視線の動きに合わせる
視線の動き

見出しを階層化する
見出しを階層化することで読みやすくなります。
見出しの大きさによってインデント(字下げ)をすれば、文章の区切りがはっきりします。また、見出しの文字の大きさに変化をつけたり、記号をつけたりすれば、探している箇所をみつけやすくなります。

           ■見出しのレイアウトを工夫する
レイアウト

目次には検索機能がある
目次は、マニュアル全体を概観するときに役立つものです。目次をみれば、マニュアル全体の内容をすばやく把握することができます。また、目次があれば、どこに何が書かれているかを容易に見つけ出すこともできます。つまり、検索機能もあるということになります。目次の作成にあたっては、文字サイズを変えたりインデントを使ったりして、目的の箇所をみつけやすいように工夫をすることも必要です。
なお、目次の版面を本文と同じ大きさにすると項目とページ番号との間が空きすぎることから、目次の版面を小さくするか本文と同じ大きさの版面であれば余白を入れて調整すればよいでしょう。

           ■目次にも工夫して該当箇所を見つけやすくする
該当箇所

フォームを標準化する
以上のように、マニュアルの形式を検討し、レイアウトや目次などについて読みやすくなる工夫をすることが大切です。
ただし、作成担当者が個々に考えるとなると、統一のとれないものになるおそれがあります。
そこで、マニュアルの様式について一定のフォームを作成しておき、このフォームのなかでレイアウトを工夫してもらうようにするとよいでしょう。そのほうが使いやすいものになるでしょうし、新たにマニュアルを作成する場合にも、フォーム自体のデザインで悩むことはなくなります。
ただ、マニュアルの内容によっては、同じフォームでは対応しきれないケースもあるでしょうから、その場合は例外として別様式のフォームを使ってもよいことにしておきます。
福祉事業所のマニュアルは、文章が長く、すぐに要点を掴みにくいなどの面があります。
これを次ページの手順書のような形式にして業務を整理すると、仕事の流れが一目で確認でき、かつ活用しやすいものとなります。

■手順書形式のフォーマットの例

業務名  
業務の目的
 

作業のステップ 作業のポイント
1    
2    
3    
4    
5    
6    
7    
8    
9    
10    
文書管理
番号
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(1)業務の標準化とは
福祉事業者として、法人の理念、ビジョンなどの目標を掲げることは、大切なことですが、これらを実現させるためには、まず目の前の顧客である利用者、家族などのサービスに対する満足度向上への取組みが重要となります。
もし、頻繁に事故やトラブルが発生し、利用者、家族から高い満足度を得られないようなサービスレベルであるならば、悪い評判が広まり、利用者離れを起こし、安定経営は望まれません。
また、職員一人ひとりが自分のやりたいようにサービスを行っていたとしたら、サービスの質にばらつきが出てしまい、利用者が混乱してしまうかも知れません。
このような状況にならないために、サービスの質の維持と向上を図り、かつ効率的な業務を職員が行えるよう、業務の標準化が必要です。
福祉サービスは、基本的に人が人に対してサービスを提供していく、いわゆる対人サービスの代表的な業種であり、人手を省いてサービスを低下させてしまうという方向ではなく、システム的、合理的に業務内容と作業手順を見直しして、サービスの効率を十分に向上させていかなければなりません。
例えば、ファーストフードチェーン店で、商品を注文して、商品を受け取るまでのやり取りについては、どの店でもほぼ同じような対応であると思います。その会社では、接客方法が統一されているばかりか、製造工程がきめ細かくマニュアル化されています。
これが、最も解りやすい標準化された業務の例です。
どの店でも同じ対応、同じ味、同じ価格であり、一見すると画一化されていると思えてしまうかも知れませんが、顧客はどの店でも安心して商品を購入することができます。
この安心感の積み重ねが信頼感へとつながっていくのです。

福祉事業所においては、上記例のように決まった商品を販売するといった単純なサービスではありませんので、なおさら対応する職員によってばらつきを起こしやすくなり、一つひとつの業務の標準化が必要となります。
業務を標準化することによって、全ての職員が、効率よく、安心して業務を行うことができるようになります。新人教育においても、業務が標準化されていると、一定レベルにまで短い期間で引き上げることができます。
例えば、下記図にある事業所における排泄介助の流れを手順として示したものがあります。
業務の標準化の第一段階としては、このように業務一つひとつを作業手順として流れを示していくことです。これが、比較的早く業務を標準化できる方法です。
このように、業務の流れが手順として示されると、職員によって対応が違う、やるべきことを忘れるということを防ぐことができます。

■排泄介助時の作業手順例(標準作業時間 10分)
1 優しく声掛けし、入園者の同意を得る。(身体及び、体調の変化を確認する。)
2 カーテンを閉め、プラスチックグローブ(使い捨て手袋)を着用する。
3 寝具を足元に扇だたみにし、衣服は上に折り上げ、下着衣を下げオムツを開いて便尿の状況をチェックする。
4 暖かい清拭タオル(使い捨て)で前方から後方にきれいに拭く。(必要に応じ、シャワーボトルにて洗浄を行う)
5 側臥位にし、汚れたオムツ(尿取りパッド)を内側に巻き込み、臀部・陰部を拭き、新しいオムツを差し込む。
6 仰臥位にし、オムツを広げ、上端を腸骨部に合わせる。
7 腹部を圧迫せず、股関節を締め付けない位置に当てる。
8 プラスチックグローブを脱ぐ。
9 下着衣を上げ、しわにならによう衣服を整える。
10 換気(窓の開閉・消臭スプレー)を行い、痛い所、不都合な所はないか確認し、後片付けを行う。
11 介護者は終了後、手洗いを行う。

しっかりした福祉の理念、価値観を持って、利用者が満足できるようなサービスを常に提供し、その質を向上させていく事業所になることが業務の標準化の目的です。
安定したサービスを行うために、決められた手順を間違いなく行えるように、全職員がその手順を理解し、実技、訓練を通じて習得することが、事業所のサービスの標準化につながります。 業務の標準化は、サービス水準を一定レベルに保ち、サービスの質の向上を図るために不可欠なものです。

(2)業務の標準化により生産性の向上を図る
「生産性の向上」というと、製造メーカーなどをイメージするかも知れません。
工場では、一定の時間内により多くの製品を製造するために、高い性能の機械を導入し、人員削減させていくような方法が採られてきました。
しかし、福祉事業所は、人的サービスを提供する事業であり、人に変わって機械でサービスを提供できません。
したがって、福祉事業所における生産性の向上は、人が行う作業時間をいかに効率的に行うかを考えなければなりません。
現場では、「忙しくて人が足りない」、「利用者とゆっくり話をする時間が取れない」などという話をよく耳にします。
正しい手順を理解していないために、手順を間違えてやり直しをするケースや、手順を先輩に確認しながら仕事を行うケースが多い事業所であるならば、業務の効率化を検討するべきです。
業務の生産性が高まると、利用者とのコミュニケーションの時間を増やすことも可能になります。

(3)標準時間を定め、作業を効率的に行う
効率よくサービスを提供するために、どのような仕事でも時間のムダは避けるべきです。管理者の立場からも、時間の無駄遣いは、事業運営上においては大きな損害をもたらします。
以下に時間の無駄遣いの例を示しました。これにより2つのパターンがあることが分かります。

仕事が遅いケース
イ) 仕事をし始めるのが遅い人
ロ) 作業自体をゆっくり行う人
ハ) 余計な仕事までする人

例えば、上記ハ)の例では、利用者に配布するプリントに、必要もない絵を一生懸命描いて自己満足に陥ってしまうような例です。きっと、周囲の人は「もっと他にやることがあるでしょう」と思っているかも知れません。

かけるべき時間をかけないケース
このケースでは、仕事自体が中途半端になり、結果的にもう一度やり直しになってしまう場合です。
やり直しで済めばまだよいのですが、手抜きや見落としのために、利用者から苦情が出たりすれば、事業所の評判を落とすことになります。まして、それが原因で事故が発生したとすれば、取り返しがつかなくなるかも知れません。
大半の職員が一生懸命に仕事をしていても、たった一人のこのような取組みが全てを台無しにしてしまうかも知れません。

こうした時間のムダを避けるために、作業時間の標準化を進めることです。マニュアルに従って、作業を進め、平均的な時間を計測し、標準時間を設定します。
さらに、日々、または週ごとに行われる業務については、開始時間も定めておくと仕事が効率的に進みます。
福祉の業務は、人を相手にする仕事であり、なかなか予定通りに進まない場合もあり、状況の変化にも適切に対応しなければなりません。そのため、こうした種類の業務にも「目標時間」として標準時間を設定しておくべきです。なぜなら、標準時間を設定することによって、人はなるべくその時間内に、やるべきことをやろうとするからです。また、そこで生じたロスタイムや余った時間が明らかになることによって、他の業務で調節することも可能になります。
業務を効率よく安全に行い、サービスの質の向上を図るためには、日頃の業務を見直して作業標準を作成し、その作業を確実に遂行するための研修が有効です。
それと同時に、標準時間の設定も忘れてはなりません。なるべく時間外業務を減らすためにも標準時間の設定は重要となります。

(1)よいマニュアル(マニュアル)とは
良いマニュアルとは、一言でいうと使いやすいものになっているかどうかです。
各事業において、各種マニュアル(例:感染症マニュアル、事故防止マニュアルなど)が整備されていると思いますが、良いマニュアルと悪いマニュアルを下記の通り比較してみました。

良いマニュアル 悪いマニュアル
様々な職種の職員が協力し合い、現場の実態に合っている
その事業所における最も優れた方法が手順化されている
マニュアルの作成の目的が職員に周知され、業務に活用されている
要点が整理されており、文章が短く解りやすい
一部の職員だけで作成しており、現場の実態が反映されていない
他事業所のマニュアルやインターネットなどからコピーしたものをそのまま準用
マニュアルが棚の奥に保管されており、業務に活用されていない
文章が長く、どこに要点があるのか解りにくい

(2)マニュアル作成手順


現状の客観化
矢印
比較検討
矢印
改善
(手順方法検討)
矢印
標準化

現状の客観化
現在行っている業務の進め方を、時系列的に順を追って書き出すことを指しています。
工程図(フローシート)的なものでも良いですが、できるだけ作業を細分化し、注意すべき事項なども忘れずに記入しておくことが必要です。
自分だけが分かっている業務を第三者(初心者)にも分かるように記述することが、客観化ということです。

比較検討
複数の職員の手順が客観化されたところで、各人の手順を比較し、その違いなどを検討します。意外に、人によって、それぞれ違う順序や、やり方になっていることに気づくかも知れません。

改善
比較検討した結果に基づいて、作業手順ややり方の一番効率の良いやり方を決めていくことです。この検討改善は、非常に重要なステップで、事業所としての利用サービスの基本を決めていくものとなります。

標準化
前段の改善工程で決められたものを、何人かの職員(新人や経験者を交えて)が実際にやってみて、確定した作業方法を標準とします。これが標準化です。

(3)作成方法の種類
マニュアル作成方法には、3つの方法があります。

■マニュアル作成における留意点
実作業 時系列記述法
業務の一つひとつを文章化する方法
要点記述(工程図)理想的手順記述法
なすべきことを箇条書きして、それを並べ替えて肉付けする方法
見本からの転記法
他事業所設からの作業マニュアルや書物から抜粋して作成する方法

は、当事業所の実態に合わないケースが出てきます。また、職員の意見を反映することも出来ずに事業所独自の業務改善の余地も出てこないので、あまりお勧めできません。
の方法は、関係法規に従う会計、経理規程や実施基準が一定の人事管理、事務作業、あるいは、設備の定期検査などのように理詰めで作成できる標準には適していますが、対人サービスにおいては、留意事項が不十分なものになりますし、作業手順を実際にチェックしないで机上で行うので、工程が抜けてしまうなどの問題が生ずることも多くなります。
実際の福祉サービス業務においては、が一般的に行われている方法ですので、本テキストではそれについて解説していきます。

(4)時系列記述法によるマニュアルの作成
時間を追って、実際の作業を書き出していくのがこの方法の基本です。
利用者の状況、事業所の実態などによって手順が異なりますので、職員間で話し合いを行い、実際の作業内容を確認しながら作成していきます。


フローシート作成
矢印
作業の手順内容
の検討
矢印
マニュアルの
構成検討
矢印
文章化

フローシート作成
行っている業務全てを順に文章で書き出すのには、相当な慣れが必要となります。一般には、初めに工程表(フローチャート)に記入する方法がよいでしょう。
短い文章で、各工程を表し、それを矢印でつなぎます。留意事項や作業者数、作業時間などを項目に記入すると便利です。
この作業工程表は、マニュアルの作業ガイドだけでなく、目次の役割を果たすことも可能になります。

       ■フローシートモデル
フローシートモデル

作業の手順内容の検討
書き出した手順でよいのか、他の順序はどうかについて職員同士で検討します。現状と違う手順を考えたら実際にやってみることが必要です。
動作がスムーズに行えるか、時間配分なども含めて検討します。

マニュアルの構成検討
図や留意事項があった方が解りやすいケースもあります。その場合、どこに入れるかを検討します。
またマニュアルはどの業務においても共通の様式で作成しますが、章や節、作業の分け方、文章の書き方、文字のフォントなどの細かい点も検討しておくことが望ましいです。

■マニュアル構成検討例
○○園 手順書作成統一ルール
1 1業務当り、裏表1枚(A4)以内を原則(内容によっては、3枚程度まで可)

2 書式は、MSゴシック、12フォント

3 エクセルにて作成(標準フォーマットは事務局データに保存)

4 項目欄
  々猝椰瑤蓮10〜15項目程度
  行間は適宜広げるのは可

5 具体的内容欄
  _嫋鮟颪形式で要点をまとめる
  ▲好謄奪廚鮗┐江豺腓蓮◆内に番号表示
  ステップがない場合は、○のみ

6 業務上の留意点
  ヾ慙記録、参考資料は適宜入力
  ▲如璽拭画面の貼り付け可

7 その他
  ヽ銅蟒臀颪亡浜番号付与
  原則1年ごとに内容見直し(但し、必要に応じて随時変更は可)
  F睛童直しは、各業務責任者の承認を必要とし、承認後は本部事務局へ即日報告
  な鷙雜紂∨槁事務局にて、管理番号に枝番をつけ更新状況が分かるようにする
  ソ駑猜欖匹蓮1部(全書式)は本部事務局にて保管(各部署ごとに、担当業務部分の保管は可)

文章化
文章は、何回も複数の職員の目を通して読み返し、解りやすくなるよう丁寧に作成します。また、文章にしてみると、図やチャートの効果が大きいことが分かってきます。
これを繰り返すことで、よりよい手順書になります。

        ■PC図を挿入したマニュアル例

マニュアル例