税理士法人合同会計は、群馬県の高崎市にある。高崎市は、県庁所在地でもある前橋市よりも人口が多い、群馬県一の都市である。 地方都市の経済規模縮小が叫ばれる中、「お客様の繁栄があって、はじめて我が社の発展がある」という理念を掲げ、地元高崎の繁栄に身血を注ぎ、お客様から絶大な支持を得て成長を続ける同事務所に、事務所経営のポイントを伺ってみた。 加藤勝二先生率いる合同会計グループは、現在従業員60名、グループ会社４社からなる。セミナールームも備えた立派な自社ビルに事務所を構え、群馬県でも１、２を争う有力な事務所だ。しかし、昭和47年、東京の会計事務所で４年半の下積みを終えた加藤先生が地元高崎で税理士法人合同会計の前身である「加藤税理会計事務所」を立ち上げた当時は、わずか３坪の事務所からのスタートだった。
加藤先生は高崎に戻るまで東京の事務所で働いていたため、顧問先は全く無く、職員もいない、文字通り、ゼロからのスタートだったのだ。事務所開業以来、会計業務のみなでなく、地元の中小零細企業の経営指導に取り組んできた同事務所。その背景には、先にも述べた、同事務所の理念があってのことだ。中には、順調に業績を伸ばし、東証１部上場を果たした企業もあれば、経営に行き詰まり、若くして自らの命を絶ってしまった経営者もいたそうだ。 事務所を立ち上げて38年間、加藤先生はさまざまなお客様を見てきて、どうしたら後者のような悲しい出来事を防げるのか、税理士として力になれるのかを悩み、活動してきたのだ。 その活動の結果が、４社からなる同グループの、お客様に対するワンストップサービス提供のバックアップ体制、そして同事務所の特色でもある事業再生や相続への特化へと繋がっていったのであろう。そして何より、自分たちの利益を優先させることなく、お客様の利益を最優先に考え取り組んできた姿勢が評価され、顧問先や地元の銀行など、さまざまな方面から相談を寄せられるようになったのだ。 ■税理士法人 合同会計「経営理念」および「品質方針」
加藤先生は、高崎経済大学経済学部卒業後、就職浪人をして見事税理士試験に合格した。そして加藤先生が税理士のスタートとして選んだのは、東京の会計事務所。昭和43年のことだった。 東京の会計事務所時代のことを加藤先生は、「ここでは仕事だけでなく、社会の厳しさを教えてもらいました」と語る。 当時の加藤先生は、厳しい税理士試験に合格したばかりで、「自分は税理だ」というプライドがあったのだそうだ。しかし、所長先生にその思いを見透かされ、「君はまだ税理士ではない。税理士となる資格を与えられただけなのだ」と言われたのだ。 税理士として一人前であるという自負心を持っていた加藤先生にとって、所長先生の言葉は深く響いた。当時のことは、今でもハッキリと加藤先生は覚えているそうだ。 厳しい税理士試験を乗り越えて晴れて税理士となったら、誰しもプライドが芽生えるものだろう。そして、人によっては、お客様への奉仕の気持ちを忘れてしまう。そのような税理士にはならないようにと、所長先生は加藤先生のことを思い、厳しい言葉をかけたのだろう。 その思いを感じ取った加藤先生は、所長先生の言葉を現在も肝に命じており、自分の事務所を持つようになってからは職員たちにも、所長先生の言葉を言い聞かせている。 昭和47年、お世話になった東京の会計事務所を退職し高崎に戻り事務所を開設した加藤先生。しかし、開業したばかりで顧問先が無かったということもあるが、開業後も２年間ぐらいは月に10日、高崎から東京に片道約３時間かけて通い手伝いに行っていた。 ■合同会計グループの沿革
家電量販店業界No.1企業のヤマダ電機は、もともと群馬県前橋市にあった個人経営の電気店だった。そして当時、加藤先生がヤマダ電機の税務顧問を担当していたのだ。 ヤマダ電機との出会いは昭和48年、開業して間もないころだった。当時、群馬県にナショナルの問屋が４つあった。そこに計算センターというものがあり、系列店の経理を全て見ていたのだそうだ。そして、その４つある問屋のうち３つを加藤先生が顧問として担当していた。 ナショナルが計算センター制度を廃止することを決めた際、採算にあう店舗を持っていって良いと言われ、加藤先生は38店舗を引き継いだ。その中の１店舗がヤマダ電機だったのだ。 当時は月商２百万程度の小さな商店にすぎなかったヤマダ電機だが、その営業手法は目を見張るものがあったそうだ。 当時から山田社長は５年後のビジョンを持っており、どことどこに、どのくらいの店を出したいという考えを持っていた。そして、山田社長は計画を実行し、予定よりも早く結果を出していたのだそうだ。 ヤマダ電機が成長して行く過程を見てきて加藤先生が一番感心したのは、山田社長の集客方法だった。 ヤマダ電気は学生アルバイトを３〜４人雇い、住宅地図をコピーして地区を決め、それぞれに回らせるのだそうだ。そして、各家庭にどのような家電製品があり、何年頃に購入したのか調査させた。その際、山田社長は、学生アルバイトに「商品を売るな」と言ったのだそうだ。商品を売りつけられるとなると相手は警戒し、話をしてくれなくなるからだ。そして、学生アルバイトにちょっとした手土産を持っていかせ、担当エリアを徹底的にリサーチさせた。 そのリサーチ結果を商品別に、購入後10年以上のものとそれ以外、メーカー別に分類した。そして当時、ヤマダ電機はナショナルの特約店だったので、他メーカーかどうかも全て分類した。そして、リサーチ結果から、購入後10年以上の家電製品に注目し、該当する家庭に対し徹底して営業をかけたのだ。 このリサーチ結果から販売の見込みを立て、ナショナルに何台購入するから安くしろと交渉することができた。現在の量販店に繋がる手法を、当時から行っていたのだ。当時はナショナルが安くなるといえばそのブランド力から必ず売れた時代なので、その手法をさまざまな家電製品で行い、売上を伸ばしていったのだ。 そのマーケティング力と販売法に、加藤先生は「この社長は凄いと感心させられた」と当時を思い出していた。そしてあれよ、あれよという間にヤマダ電機は大きくなっていったのだそうだ。 加藤先生が山田社長の経営を見ていて勉強させられたのは、ヤマダ電機が大きくなる過程での数値管理だという。「最初は私が教えたんだけどね」と笑いながら語ってくれた。 現在、合同会計グループは、以下の４社からなっている。 ■合同会計グループ
お客様のあらゆる相談にも対応できるよう、グループ４社が連携して個人、法人を問わず、サービスの提供に努めている。 事務所の規模を拡大し、職員を雇用するとなるとリスクが伴なうが、加藤先生は常にお客様を第一に考え、お客様のニーズに対応できる体制をつくり常にチャレンジを怠らないのだ。 取材時、現在あるコンサル案件に需要があるという話題が出た際も加藤先生はメモを執り、すぐに担当者に調査させるという迅速な対応をとっていた。お客様のためになることはどんなことでもチャレンジしようという姿勢がうかがえた。 お客様のためになるということはニーズがあるということであり、裏を返せば事務所の利益に繋がるということだろう。お客様の利益を追求することによって、事務所の規模もスキルもともに成長していくという、加藤先生の掲げる経営理念をそのまま体現しているのだ。 真似をしようとしてすぐに出来るものではないが、会計人として加藤先生、そして合同会計グループの取り組みは見習うべきものが非常に多いことだろう。
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