(1)経済環境の悪化で事業所数の減少が加速
金融危機に端を発した世界同時不況の影響を受け、わが国においても企業等の淘汰が急速に進んでいます。事業所数の推移をみていきますと、平成3年に675万件あった事業所は、10年間で80万件以上減少し、平成18年には、600万件の大台を割り込んでいます。
業種別に見ていきますと、特に製造業においてその減少幅が大きく、平成13年から18年までの5年間で15%近くも減少している状態です。

■事業所数の推移
年 度 事業所数
件 数 増減率(%)
平成3年 6,753,858 −
平成8年 6,717,025 -0.6
平成13年 6,349,969 -5.5
平成18年 5,911,038 -6.9

■業種別事業所数の推移
産 業平成13年 (件)平成18年 (件)増減率 (%)
建設業606,944548,861-9.5
製造業643,353548,442-14.7
卸売・小売1,807,2841,604,688-11.2
不動産業328,633320,365-2.5
サービス業54,43649,043-9.9
飲食・宿泊869,549788,263-9.3
情報通信業60,10359,436-1.1
運輸業139,007130,911-5.8
その他1,840,4781,861,029-1.1
合 計 6,349,9695,911,038-6.9

(2)廃業の増加による顧問先の減少
企業の経営環境の悪化により、企業倒産も相次いでおり、国内においては、新設事業所よりも閉鎖・廃業する事業所の方が多いという現状です。
この影響は貴事務所の顧問先にも確実に及んでいるのではないでしょうか。

年 度新設事業所数 新設率廃業事業所数廃業率
平成13年1,541,939件23.6%1,925,464件29.5%
平成18年1,358,485件 22.1%1,743,583件28.4%

(3)特定業種の減少が顕著になる
会計事務所マーケットの縮小とともに「業種別の開業率と廃業率」において明確な差が生じてきています。
 特に、飲食店・宿泊業や金融・保険業での廃業率が高くなってきており、この動きからは限られた業種に特化した戦略を採ってきた会計事務所では、顧客マーケットの縮小とともに衰退を余儀なくされることが推測され、それは現実のものとなってきています。

【業種別開廃業率】

(1)税理士登録数の増加
事業所数や顧問先が減り続ける一方、税理士数は増加傾向にあります。税理士数は平成18年に、7万人を突破し、毎年着実に増え続けています。それに伴い、税理士法人も増加傾向にあり、会計事務所の大型化も進展しています。
大規模事務所と小規模事務所という会計事務所業界の二極化が益々、進行していくものと考えられます。会計事務所の合併や顧問先争奪の激化が予想されます。

【税理士・税理士法人数の推移】
年 度 税理士数 税理士法人数
平成16年68,642人  693法人
平成18年70,068人1,175法人
平成20年71,185人1,655法人

(2)顧問料値下げ圧力の増大
会計事務所を取り巻く、経営環境は一変し、会計事務所も競争時代に突入しました。業績悪化に伴い、顧問先からの顧問料値下げ要求も高まっており、多くの事務所では減収傾向にあります。
また、既存の顧問先に対する他事務所からの安価な業務提案などによって、顧問先の流出も発生しています。防衛対策が不可欠であり、従来型のサービスを今までどおりに提供している旧態依然とした会計事務所では、事務所の存続さえ、難しい状況なのです。

【例:A会計事務所における顧問料の推移】
年 度顧問先数 月額顧問料
平成 9年600件45,596円
平成14年774件43,125円
平成20年844件40,496円

(3)異業種参入による競合の熾烈化
記帳代行業務や給与計算業務等の税理士資格を必要としない業務には、大型税理士法人のグループ会社や独立系の記帳代行業者、給与計算専門会社等の異業種参入が進んでいます。
それによって、税理士業界の中で標準化が図られていた価格体系は崩壊し、低価格化競争に突入しています。

【異業種参入が進む業務】
●記帳代行業務
●給与計算代行業務
●社会保険・労働保険手続き  等

(4)公認会計士の大量合格による税理士業務への参入
制度改正や金融庁が進める取り組み等により、今後、公認会計士の大量増員が見込まれています。
これらの公認会計士は既存の監査法人では、受け入れきれない状況であるため、就職先や仕事を求めて税理士業界に進出してくることは必至です。そして、これにより会計士業務ができる税理士との競争に突入します。
顧問先の争奪がますます激化することが予想されます。

【公認会計士試験合格者の推移】
年度合格者数
平成16年1,370名
平成17年1,308名
平成18年1,372名
平成19年2,695名
平成20年3,023名

(1)事務所IT化の遅れによる電子申告への未対応
会計事務所は体制の未整備のため、IT化への対応が十分とはいえません。その代表的な例が、「電子申告への未対応」です。
本格的に取り組んでいる事務所では、全顧問先の電子申告を実現しているところもあります。電子申告の推進によって、事務所と関与先の双方で手間が省け、業務効率化につながります。これからの会計事務所は、電子申告の推進だけでなく、事務所業務のIT化についても積極的に取り組んでいく必要があります。

【電子申告のメリット】
●申告書の提出が事務所からできる
●申告書に顧問先の印が不要になるため、時間短縮・業務効率化が図れる
●会計事務所のペーパーレス化が図れる
●会計事務所のイメージアップ
●国が推進する電子政府実現のサポート

(2)システム進化への対応不能で顧問先主導の自計化が進行
ソフトウェアの発達によって、会計事務所の多くの業務にシステムの活用が進んでいます。特に会計事務所に必須である会計システムを例に挙げても、メジャーから小規模まで、20〜30のメーカーが乱立して商品開発を進め、商品を市場に投入しています。
企業に対して、直接アプローチを行っているメーカーもあるため、価格や担当者の使いやすさなどの理由から、独自にシステムを導入する顧問先が今後さらに増えてくることも予想されます。会計事務所側で、未対応なシステムの対応に追われるといった可能性もないとは言えません。
マルチに会計システムに対応できる体制を構築するか、会計事務所主導でシステム導入や自計化を推進していくか、その選択が迫られているのです。


(3)ASP型会計システムが会計事務所業務の常識を覆す
現段階における会計システムの最たるものがインターネットを活用したASP(SaaS)会計システムです。技術革新によって、現在主流であるスタンドアローン型やサーバー型といった会計システムとは、一線を画すものです。

【ASP(SaaS)会計のメリット】
●パソコンとネット環境だけで、いつでも、どこからでも使用できる利便性
●サーバー上で会計データ共有だから、最新データをリアルタイムに確認できる
●ネット上でデータ確認が可能なため、巡回監査の省略も可能になる
●システム更新は自動実行、事務所と顧問先の双方に手間が不要
●会計データの保管の必要がないため、データ管理等の省力化が図れる

また、平成21年5月には経済産業省を中心とした国策として「J−SaaS」が本格稼動するなど、会計システムを取り巻く環境は更なる激変が予想されます。システムへの対応が会計事務所の将来を大きく左右するといっても過言ではありません。