>税理士法人への報告規定   >Ⅰ 『税理士法人への報告規定』策定の目的   
1-1 『税理士法人への報告規定』策定の目的
『税理士法人への報告規定』を策定する目的は、大きく以下の3点になります。

(1)税理士法人が管理・監督義務を果たすため
(2)事務所職員による質のバラツキを抑えるため
(3)トラブルを抑止し、突発的な業務に素早く対応するため

(1)税理士法人が管理・監督義務を果たすため
税理士及び税理士法人には、職員に対する管理・監督義務が課されます。
この義務を果たしていくために、『税理士法人への報告規定』を策定することになりますが、その際に考慮すべきポイントは全て、税理士法に記載されています。

■『税理士法人への報告規定』策定における税理士法上のポイント
署名押印の義務
計算書類、審査事項等を記載した書面の添付
脱税相談等の禁止
信用失墜行為の禁止
秘密を守る義務
会則を守る義務
研修
帳簿作成の義務
使用人等に対する監督義務
助言義務         等

税理士法では、上のように税理士及び税理士法人に対して様々な義務を課しています。これらの義務をきちんと果たしていくためには、税理士及び税理士法人が職員と綿密に連携をとって業務を進めていくことが欠かせません。
例えば、税務申告書の作成にあたっては、税理士の署名押印が必要ですが、これには相応の責任が伴うため、税理士は申告書の内容だけではなく、毎月の巡回監査の内容等についても把握しておく必要があります。
また、脱税相談や信用失墜行為、守秘義務等については、税理士はもちろん、会計事務所の職員に対しても課されている義務であり、職員がこれを犯すことのないよう管理・監督する義務が、税理士及び税理士法人には課されています。
このような管理・監督義務を果たしていくためには、「口頭による指示・指導」では限界があります。やはり、『税理士法人への報告規定』といった形で、文書化し、職員に周知徹底する必要があります。

(2)事務所職員による質のバラツキを抑えるため
『税理士法人への報告規定』策定のもう一つの目的は、職員による業務品質のバラツキを抑えることです。特にポイントなる業務には、以下のものがあります。

巡回監査
顧客からの質問・相談
決算検討会
決算
書面添付       等

巡回監査は、職員が単独で顧客を訪問し監査をしてきますが、職員の知識レベル、キャリアに違いがあるため、監査の質にバラツキが生じてしまいます。
そこで、監査結果については、「発展らくらく税理」により税理士法人への報告を義務付けることで、監査項目の網羅性、担当者のレベルの違いによる業務の質のバラツキを平準化して監査漏れ・誤りの撲滅を図ります。
また、巡回監査時等に受ける関与先からの相談内容に対する回答内容にバラツキがあっては困ります。そこで、顧客からの相談については、必ず税理士法人に報告するようルールを整備しておきます。相談に対する回答内容に不備があった場合、税理士法人が訂正を加えることで、相談対応に関する質を担保することができます。
決算検討会や決算、書面添付については、打ち合わせるテーマの範囲と目的、対応方法、消費税、役員報酬に係る届出などサービスの範囲とリスク管理の観点から規定を整備します。

(3)トラブルを抑止し、突発的な業務に素早く対応するため
会計事務所の業務においては、トラブルの他、突発的に発生する業務がいくつかあります。それらに対して、的確に対応していくためにも、職員と税理士及び税理士法人の連携は欠かせません。ポイントは以下の5点です。

税務調査への対応
税務当局からの照会対応
意見聴取への対応
相続税申告
クレーム対応

税務調査への対応は、顧客満足に直結する業務でもあり、非常に重要です。質の高い税務調査対応を行うには、担当職員と税理士の間での事前の情報共有がポイントになります。どのようなタイミングでどのような情報共有を行うのか、明確に規定しておく必要があります。
また、クレーム等のトラブルについても、初期の対応いかんによって、その後、さらに大きなトラブルに発展するかどうかが大きく左右されてしまいます。特に、税法上の問題においては、スピーディに対応していれば、リカバリーすることも可能であったのにもかかわらず、担当者のところで無駄に時間をかけ過ぎたため、挽回することができず、大ごとに発展するケースもあります。
そこで、クレームやトラブルが発生した時も、すばやく税理士法人に報告がいく仕組みを構築しておく必要があります。税理士法人がトラブルの内容を素早く把握し、場合によっては税理士が直接対応する等、適切な対応をとることで、万一トラブルが発生しても、それによる損害を最小限に抑えることができます。
こうした仕組みを的確に機能させ、会計事務所の職員に対して、周知徹底を図るためにも、『税理士法人への報告規定』の策定は必須といえます。

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