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第三者評価は、福祉施設がもつ考え方（理念・方針）を実現させるためのプロセスや仕組みにおいて、何が課題かに気づくための有効な手段となります。理念や方針を実現させるために、組織マネジメントにおける課題は何か？また、どのような視点でサービスの質を向上させなければならないか？これらに気づくために第三者評価制度はあると言っても過言ではありません。 組織マネジメントに問題があると感じているが、もしくはサービスの質を向上させなければいけないと感じているが、漠然と感じているだけで、具体的にはどこに手を付けたらよいか分からない。そうしたときに、第三者の新たな視点で問題提起を促し、経営の課題に気づきを与えてくれるのが第三者評価制度です。 一つの角度からだけモノを見るよりも色々な角度からモノを見た方が、その全体像が掴めます。同じように、施設自身だけでは気づかないうちに一つの見方になっていたものが、違う角度から施設を見てもらうことにより、自分達では気づかなかった指摘や見解を得ることができます。 以上のように、第三者の客観的な視点で施設を見てもらうことにより、そこから新たな気づきを得ることが第三者評価制度の目的だといえます。 ■第三者評価の主な2つの目的
福祉サービス第三者評価システムは、評価結果を広く情報提供することを通じて利用者の福祉サービスの選択に資することと、事業者が自らのサービス向上に役立てることにより、利用者本位の福祉の実現を図るものです。そのために、東京都福祉サービス評価推進機構が認証する多様な評価機関が事業者と契約を締結して評価を行い、評価結果は事業者の同意を得た上で、事業所情報と共に公表されます。 なお、第三者評価は、サービスの種別ごとに評価推進機構が設定する共通の評価項目や評価手法を使って行われます。評価推進機構では、第三者評価の普及・推進を図り、今後も絶えず評価項目や手法の改善に努めています。 （１）評価手法 「利用者調査」と「事業評価」の２つがあります。
（２）評価項目 事業評価の８つのカテゴリーのうち、カテゴリー１〜７は事業推進の『しくみ（方法と展開）』、カテゴリー８はその『成果』という構造になっています。 カテゴリー１〜７の『方法と展開』は、事業所が向かう方向とその実現に向けて一丸となって進むための『方向性と推進力』、具体的に業務を進めていくための『業務の方法と実施』、それらに必要となる情報に関わる『情報の収集と活用』で構成されます。 ■方向性と推進
■業務の方法と実施
■情報の収集・活用
■成 果
福祉施設を取り巻く環境は大きく変わってきています。これからの福祉施設は、このような環境変化に対応させるためには、経営体質の強化とサービス向上への取り組みが重要となっています。 サービス種別ごとの環境変化を整理すると以下のような点が挙げられます。法人として、それぞれの環境変化に対して自法人として何に取り組むべきかを明らかにする必要があります。 ◆福祉施設を取り巻く主な環境変化
こうした環境変化に対応するためには、サービスを支える施設運営管理、人材育成、サービス向上への取り組みなどを継続して行わなければなりません。このような幅広い観点で、福祉施設を経営するために、施設長（園長）を中心とした職員の業務や役割、組織を整備し、常に点検し、 改善に向けて実践していく必要があります。これらのことを自主的にチェックし、なおかつ問題点を客観的に把握し、 改善の優先順位をつけていくことは、どうしても目の前にある日常業務に目がいきがちになるため、なかなか大変なことです。 したがって、外部の専門知識を有した評価調査者が客観的に評価し、サービスの質をより高めるための改善点を明らかにし、新たなる目標を掲げて利用者に喜ばれる施設になることを目指した福祉サービス第三者評価を受審することが有効です。 ◆環境変化に対応するために、福祉施設が取り組むべきテーマ
次に、第三者評価制度の流れと活用ポイントをご説明させていただきます。 第三者評価は、利用者調査、訪問調査、書面調査にて行われていますが、申込みから評価結果の公表まで概ね１ヶ月半から２ヶ月くらいかかります。 全体の流れは以下のとおりです。 ◆福祉サービス第三者評価の流れ
（１）利用調査の目的 福祉サービス第三者評価制度は､利用者本位の福祉の実現に資するよう､利用者のサービス選択のための情報提供と事業者の質の向上に向けた取り組みを促進することを目的に実施されています。その手法は2つあり､ 一つは｢事業評価｣、そしてもう一つが「利用者調査」となっています。より利用者本位の福祉の実現に資する観点から｢利用者調査｣は行われています。そうした位置づけの中で、利用者調査の目的は次のように定義できます。
（２）位置づけ 福祉サービスを実際に利用する利用者本人のサービスに対する意向を確認することは､利用者本位の福祉サービスの実現にあたって不可欠です。また、利用者調査は､事業評価と並んで第三者評価を構成する重要な柱となる評価の手法でもあります｡ （３）調査対象の原則
福祉サービスは､利用者の個別状況に応じたきめ細かな対応が求められることから､より多くの利用者の意向をその状況で取り得る客観的なデータとして収集し､その声や傾向を評価の中で活用することが望まれます｡ そして、利用者全員に調査参加の機会を公平に確保します。回答が可能な一部の利用者のみに実施すればいいということではありません｡ ただし現実には、利用者の中には調査されること自体に苦痛を伴う方や、実際にできない状態の方もいらっしゃいます。そのため、利用者一人ひとりの状況を事業者とともに話し合ったうえで、無理にない範囲で最大限に実施することが重要です。全数調査を実施することを重視するあまり、利用者が精神的に苦痛、不安に感じるようなことにならないよう、利用者の意思や気持ちを尊重することが大切になります。 （４）留意点 ｢利用者調査｣は､現在の利用者が受けているサービスに対する意向や満足度を把握するためのものです。そして､その目的を果たすためには、評価するものが客観的な立場で、利用者本位の観点に立って、調査を行わなければなりません。 利用者の立場に立つということは、その実施において、利用者の個別性に応じた福祉サービスの性質や利用者の調査参加への機会の公平性の確保の観点が求められます。そのため、利用者本人の全数調査を行い､その結果を公表することを原則としています。そして、調査においてはできる限り多くの利用者本人にアプローチすることが求められています。 調査方式としては、利用者一人ひとりの状況に応じて「アンケート方式」か「聞き取り方式」のどちらかを選択することができるようにしています。この場合に考慮しなくてはいけないことは、評価対象サービスのなかには、一部の障害者施設や高齢者施設のように、アンケート方式や聞き取り方式では意向を把握することが難しい利用者が多いと想定されるサービス種別があるということです。 しかし､その場合であっても､利用者本位という観点に立って調査方法を工夫していく必要があります。そこで､評価者が共通評価項目に関する意向や満足度を把握(推察)することが難しい利用者に対しては、調査時に観察することができた場面において､評価者が見ることができた｢利用者と職員の相互関係｣から評価者が感じたことをコメントとして公表するという｢場面観察方式｣を実施します｡この方式の場合､利用者本人に直接アプローチ調査を行い､共通評価項目に対する回答を得るという｢利用者粗の原則から考えると､アンケート方式や聞き取り方式と同等の｢利用者調査｣とすることは難しいですが、評価者が調査時に観察することができた場面を通じて、間接的にではありますが利用者本人にアプローチするという、利用者に焦点を当てた利用者を志向する調査であるといえます｡ このように､ ｢利用者調査｣は､ ｢アンケート方式｣と｢聞き取り方式｣のほか、アンケート方式や聞き取り方式では意向を把握することが難しい利用者に対する｢場面観察方式｣をも組み合わせていくことにより､利用者調査が持つ一定の限界を踏まえつつも､あくまでも「利用者本人に焦点を当てていくことを主眼とする」という考え方を貫いています｡ （５）利用者調査の流れ
この流れは、利用者の全数を対象とし、サービスに対する意向や満足度を把握する調査であることが前提となっています。 （６）共通評価項目の位置づけ 機構の定める共通評価項目をすべて取り込んで評価を行うことが必要となっています。
（７）標準調査票の位置づけ 機構では､利用者調査の様式例として標準調査票を提供しています。標準調査票に示された利用者調査の質問文は､調査項目の一例です。したがって、評価機関が質問文の表現を共通評価項目の内容に則って､独自に工夫することができます。質問文を工夫することが許されているのは、各事業者が日頃利用者に対して使用している表現などを用いることで、質問文の主旨についての理解度が上がり､回答の信憑性が高まるという効果が期待できるからです。そのため、事業者と質問文に関する打合せを行い、調査を実施していくことは有効な結果を導くことになります。ただし、調査の結果は共通評価項目の文言により公表されますので、質問文の工夫をする際には、共通評価項目と乖離しないよう､細心の注意が必要になります｡ （８）共通評価項目による調査 ��アンケート方式･聞き取り方式 共通評価項目による利用者調査の方式には、 ｢アンケート方式｣と｢聞き取り方式｣の2つの方式があります。この2つの方式を利用者の状況に応じて使い分け、利用者に合った方式を選択して調査をすることになります｡ それぞれの方式の特性(メリット･デメリット)を理解し、評価機関は事業者に説明し十分協議したうえで、利用者一人ひとりに調査の方式を設定します｡
��サービスの形態による調査実施方式の設定 第三者評価の対象サービス(44サービス)は、以下の3つの形態に分けることができます｡
利用者調査では､これら3形態によって調査の実施方式が設定されています。次のフロー図に沿って、評価を実施する事業者での利用者調査方法を確認することができます｡ 
（９）第三者評価における利用者調査の活用 ��経営情報として利用者調査結果を活用 利用者調査の結果は､利用者の調査時の意向､気持ちを客観的に集めた結果であり､調査時点に利用者が主観としてとらえた一つの事実です。調査結果が公表されることは重要であり、それと共に事業者が利用者調査の結果の背景を考え、課題を探ることは、利用者の視点で経営を見直す良いきっかけになります｡ 集計の結果や利用者の発言をそのまま評価結果報告に引用するということではなく、評価機関が評価全体のプロセスの中で当該事業者の経営課題を探る際に、参考情報として有効に活用することで、事業者にとって納得性の高い改善課題を導き出せる可能性があります｡ 以下に､利用者調査の活用方法の一例を記載します。 ��活用参考例
��訪問調査の際のインタビューにも活用 利用者調査の結果の｢背景｣を確認するためには、利用者調査の回答内容を事業者の自己評価情報と同様の扱いをすることが大切です。訪問調査時に、事業者にその原因をインタビューすると回答結果の背景についての理解を深めることができます｡
（10）利用者へのフィードバックについて 利用者は､本調査に回答した直後から､自分たちの意向や要求を表明したことで､何か変わってほしいという期待の気持ちを持っています。評価結果は東京都の場合、｢とうきょう福祉ナビゲーション｣によって、インターネットを介して公表されます｡ しかしながら現時点では､サービス利用者がインターネットから直接情報を得ることは必ずしも一般的であるとはいえません｡ 事業者によっては、評価結果を自ら利用者にわかりやすく開示することで､利用者に今後の協力を得ながら、サービスの改善に活かす工夫をしています。事業者から利用者に結果を開示する際には、個人が特定できないように、また、特定の利用者に不利益が生じることのないように、事業者側で十分に配慮する必要があります。そのことを評価機関は事業者に伝えることが不可欠です｡ また、評価機関が利用者に直接フィードバックすることも可能です。その場合は契約時に、利用者へのフィードバックは評価機関が行う旨の取り決めをすることが必要となります。 これらの工夫により、次回の利用者調査への関心度と協力意欲が増すことが期待できます｡そのことで利用者本位の福祉サービスの向上に寄与できる可能性が高くなります｡ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
