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第三者評価の旗印として病院機能評価が世に出て１２年が経ち、現在では全国の病院の３件に１件が認証を受けるに至っています。V3.0がリリースされた当初は、診療報酬上のインセンティブへの期待から認定に向け飛びついた病院も数多く見受けられました。 しかし、それはごく一部の施設基準の必須要件として掲げられるに留まっており、現在の厳しい医療情勢を考えるに、今後も『特別扱い』は期待できない状況が見て取れます。 こうした観点からは、受審するメリットは確かに希薄であるといわざるを得ませんが、本来求められる姿を追求することなしに、患者からの信頼を得ることはできないばかりか、そもそも病院自体の発展にも繋がりません。 認定証ありきでは全く意味がありませんが、少なくとも職員一人ひとりが評価項目で求められる水準を理解し、現状を客観的に把握し、何が不足しているのかを認識することは、病院を良くする近道であることに違いありません。 管理者である院長は、その点を自身の強い意思のもとに明確にし、その思いを職員に浸透させることが機能評価受審に当たって最も重要なポイントとなります。 （１）病院機能評価受審の目的 病院機能評価が影響する施設基準等には、次のようなものがあります。 ●施設基準上の必要条件 ⇒ 緩和ケア病棟入院料、緩和ケア診療加算 ●医療法上条件 ⇒ 臨床研修医の受け入れ施設となっている これらを維持・継続するためだけの目的では、活動が形骸化することが危惧されます。実際に、新規受審と更新受審の認定率は大きく違いがないといったデータも出ており、これは受審後の５年間で、構築した仕組みが機能しなくなったり、取り組みが中断したり、停滞あるいは後退している現状がうかがえます。 これらは本来の目的を見失ってしまい、場当たり的な改善に終始した結果であるといえるでしょう。「認定書がほしいというので仕方がなく･･･」といった考えでは、やらされ感ばかりが蓄積して、機能不全に陥ることは当然のことかもしれません。よって、第一にその目的を明確にし、そしてそれを職員に浸透させることが重要なのです。 【機能評価の必要性＝受審目的の明示】 ●評価項目を通して病院の現状を客観的に把握する。
●強みや弱みを的確に捉え、課題を明確にする。 ●二の足を踏んでいた改善活動のきっかけ作りとする。 ●問題意識をひろく職員一人ひとりに浸透させる仕組み作りとする。 ⇒ 目的を明確にし、改善に向けた具体的な活動を進めるためのツールとして活用 取り組んだ結果に認定証が付与されるという考えで取り組む 病院ごとでその目的は多少なりとも違いはあるでしょうが、病院をよくするために、そしてそれが患者のために、さらに地域の医療の貢献のためにと結びついていくことにおいては、共通の目的ということが言えるでしょう。そして、「ツールとして最大限に活用する」といった考えのもとに取り組む姿勢が重要です。 【認定医療機関における受審目的】
※出典 財団法人日本医療機能評価機構 （平成19年） （２）病院機能評価受審による効果 受審目的を明確にするにあたっては、財団法人日本医療機能評価機構（以下、「機構」）が紹介する「受審による効果」などのデータなども参考にするとよいでしょう。 【受審による効果】
※出典 財団法人日本医療機能評価機構 （平成19年） 上記によれば、職員の意識向上が最も多く35.5%を占めています。次いで組織の円滑化が16.5%という結果であり、一般企業に比して不足しがちなコミュニケーションの活性化などにも貢献していることがわかります。 病院機能評価受審をためらわせる要因の一つに、評価基準の高さがあります。特に200床以下の病院においては、評価体系が改定されるたびに、求められる水準がどんどん厳しくなっているとの印象を持った管理者も多いことでしょう。 実際にV4.0からV5.0への移行期には、初回認定率が15％を割り込んだという情報もあり、簡単には認定証がもらえないとのイメージが蔓延していたのも事実です。 （１）受審抑制のトップは人事考課制度 受審病院におけるアンケート結果では、どの分野に不得意な部分があるのかが傾向としてみることができます。
※出典 財団法人日本医療機能評価機構 （平成19年） 一般企業では定着している人事考課制度も、医療の分野では導入に至っていないことがわかります。近年では、民間病院でもその仕組みを確立する必要性が認識され、徐々に導入に踏み切る病院も現れていますが、公的病院においては相変わらず大きな障壁となって立ちはだかっている状況が伺えます。 しかし、病院が支出する費用のうち人件費の占める割合が総じて高い状況にあることは事実であり、病院職員は有資格者が大部分を占めているために導入が困難であるという考えは通用しない時代になってきているという背景もあります。 また、人事考課制度については、新規受審病院だけの問題ではなく、更新を控えた病院でも同様に、能力評価や目標管理制度の導入を職員のモチベーション向上に活用すべく、検討しなければならない項目の一つです。 （２）その他の受審抑制の要因 人事考課制度以外では、プライバシーへの配慮、指示命令系統、禁煙問題、診療録管理、ミキシングなどが挙げられています。いずれも認定留保になる可能性の高い主要項目であり、実際に再審査の対象となって改善に取り組まざるを得なかった苦い経験から出てきたものと思われます。 プライバシーについては、構造的な問題もありますが、職員一人ひとりの患者に対する「配慮」が求められているように見受けられます。 指示命令系統では、医師の指示による看護師による転記の問題があげられます。これは情報伝達エラーとされ、アクシデントの一番の要因になりますから、安全対策上での改善を必ず求められる項目です。 禁煙への取り組みは、一般病棟においてはかなり浸透してきており、この点で認定留保となる件数は近年減ってきています。代わって職員の勤務中の喫煙や、啓蒙活動の実施など内部の状況で評価を低くするケースが散見されます。 【その他の受審時での障害】
※出典 財団法人日本医療機能評価機構 （平成19年） 診療録管理は、現在でも改善要望事項になるリスクの高い分野です。職員配置（診療情報管理士）の問題、カルテの一元的管理、カルテの量的・質的点検の実施、退院サマリーの作成、疾病統計等々業務的にも医事課と兼任するにはハードな内容となっています。 注射薬の調製・混合については、薬剤師の業務に直結する評価体系です。つまり、看護師任せにする体制については厳格に改善を求め、ミキシングも抗がん剤などのハイリスク薬剤について薬剤師が関与すべきこと、また注射薬の個人取り揃えは全ての病棟に対して行うことなど、薬剤師の業務負担が増大することが懸念されます。 これらのハードルをどう捉えるかは、管理者の意識の問題であり、病院のスタンスの問題ということになります。評価項目に列挙された事項は、病院の「あるべき姿」を投影しているわけですから、すぐに対応できなくても、実施に向けてどう取り組んでいくかという姿勢は明確にする必要があります。
機構では、その性格について『高度に専門的で多面的な要素を持つ医療を適切に評価・分析・情報提供するという性格上、関連するそれぞれの専門領域における学術的な判断が基礎となるべきであり、医療機関の機能の改善・向上を図り、地域住民の信頼を高めるため、国民的な基盤に立って、特定の立場に偏することのない中立的な立場で活動が行われる必要がある。』として、こういった観点から学術的・中立的な組織運営がなされています。 （２）機構が提唱する第三者評価の必要性 機構が考えるその必要性は、以下のとおりです。
病院を始めとする医療機関が提供する医療サービスは、医師、看護師等様々な専門職種の職員の技術的・組織的連携によって担われていますが、医療の受け手である患者のニーズを踏まえつつ、質の高い医療を効率的に提供していくためには、組織体としての医療機関の機能の一層の充実・向上が図られる必要があります。
もとより、質の高い医療を効率的に提供するためには、医療機関の自らの努力が最も重要であり、そのため医療機関が自らの機能を評価するいわゆる自己評価が実施されているところですが、こうした努力をさらに効果的なものとするためには、第三者による評価を導入する必要があります。 ※出典 財団法人日本医療機能評価機構 また、期待される効果として実際の受審医療機関におけるデータは先に紹介しましたが、機構では全般的に以下の効果が期待されるとしています。
※出典 財団法人日本医療機能評価機構 （３）機構の組織概要機構の組織概要は以下のとおりです。
※出典 財団法人日本医療機能評価機構（平成２１年７月現在） （４）事業計画に見る機構の重点的取り組みホームページで公開されている機構の平成２１年度事業計画によると、財団としての活動では、平成２１年度内に公益法人移行の認定申請をすることのほか、各部門単位で以下のような計画が立てられております。 【病院機能評価等施策事業（概要）】
※出典 財団法人日本医療機能評価機構 （１）審査体制区分病院機能評価の受審体系は、許可病床数により４区分に分類され、区分ごとに評価者（サーベイヤー）の人数や、受審スケジュール、受審費用が異なります。
※出典 財団法人日本医療機能評価機構 ※感染症病床と結核病床は、一般病床に含めて考えます。※一般病床・精神科病床・療養病床のうちの一種の病床が全体の８０％以上を占める場合は、当該病床の審査体制区分となります。
※出典 財団法人日本医療機能評価機構 （２）受審費用病院機能評価の受審体系は、審査体制区分ごとに分類されています。 【本審査】
【窓口相談】
※価格表は、いずれも出典 財団法人日本医療機能評価機構 なお、訪問受審支援・専門員派遣、講師派遣につきましては、機構の旅費規定に基づき、現地までの往復交通費と宿泊費等は別途費用がかかります。（３）評価調査者（サーベイヤー） 評価調査者はサーベイヤーといわれ、診療管理、看護管理、事務管理の３領域について、それぞれ病院長経験５年以上、看護部長経験５年以上、事務長経験５年以上の者等が機構から委嘱される形となっています。 委嘱期間は２年間で、機構の依頼に基づき、受審病院の訪問審査等に当たります。 平成２０年度当初のサーベイヤーは９５５名（診療管理３４９、看護管理２８５、事務管理３２１）で、平成２１年度当初には７４名減って８８１名となっています。
※価格表は、いずれも出典 財団法人日本医療機能評価機構 サーベイヤーは、初任時研修と実地研修（ＯＪＴ）を経て実際の訪問審査に入っていきますが、平成２０年度のサーベイヤーの応募者のうち候補者とされた４１名（診療管理１５、看護管理１４、事務管理１２）についても５日間（病院実習１日を含む）の初任研修を実施後に機構から委嘱されています。その後の実地研修は初回訪問審査時に位置付けられ、リーダーや同じ領域の先輩サーベイヤーから指導を受けながら業務内容を習得することとなります。また、定期的な研修会も実施されており、平成２０年度には以下の研修会が実施されています。 ●固有項目研修会 ・固有項目（精神科領域）研修（２回・参加４８名） ●リーダー業務研修会 ・訪問審査でリーダーを務める事務管理領域対象（３回・参加５６名） ●評価項目解説研修 ・統合版評価項目Ver.6.0解説（３回・参加２１８名） | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
