医療法人設立と運営の実務　-　医療・福祉経営改善ナビ

医療法人制度は、大きく社団と財団に分かれます。その相違点は下記のように整理されます。医療法人社団は、個人又は法人が拠出（現金、不動産、備品等）して設立する法人で、医療法人財団は、個人又は法人が無償で寄附した財産に基づいて設立される法人です。

◆社団と財団の違い

形態		社団	財団
医療施設の種類		①病院（20床以上）②診療所（0から19床）③介護老人保健施設
設立者		個人又は法人（財産を拠出（寄付）する者に限る）
財産の形態		拠出	寄付
構成機関	議決（評議）機関	社員総会（社員は３名以上）	評議員会（評議員会は理事の定数を超える数）
	執行機関	理事（理事会）・社員総会で選任（原則３名以上）	理事（理事会）・評議員会で選任（原則３名以上）
	監査機関	監事・社員総会で選任（１名以上）	監事・評議員会で選任（１名以上）
解散時の残余財産の処分方法		国若しくは地方公共団体又持分の定めのない医療法人に帰属

注意点は、設立者は株式会社でもなれますが、利害関係者である場合（医療機器メーカーなど）、拠出しても医療法人の役員にはなれないということです。
最も大きな違いは、特定医療法人だけが医療法上の根拠規定を持たない点です。
法人税率においては、特定医療法人は22％、社会医療法人は医療保健業については非課税となっています。
また、平成21年度税制改正で、社会医療法人が救急医療等確保事業の用に供している病院および診療所について、固定資産税等（固定資産税・都市計画税・不動産取得税）が非課税となります。
その他、社会医療法人のみが収益事業を行えると定められています。

◆社会・特定医療法人制度との違い

社会医療法人

特定医療法人

医療法人

根拠法

医療法

租税特別措置法

医療法

認可・承認・
認定

都道府県知事

国税庁長官

都道府県知事

要件

●	役員数理事６人監事２人以上　同族割合３分の１以下
●	｢救急医療等確保事業｣等を実施
●	自由診療制限
●	役員報酬支給基準
●	特別の経済的利益なし
●	多額の遊休財産がない
	等を満たすもの

●	役員数理事６人評議員12人以上監事２人以上　同族割合３分の１以下
●	差額ベッド30％以下
●	自由診療制限
●	給与（年間3,600万円以下）
●	特別の経済的利益なし等を満たすもの

●	役員数理事原則３人監事１人以上　（財団の場合は、評議員会：理事の定数を超える数）
●	基金制度が利用できる

残余財産の
処分

国もしくは地方公共団体又は他の社会医療法人

国もしくは地方公共団体又は同種の医療法人

国もしくは地方公共団体又は持分の定めのない医療法人

収益業務

できる

できない

法人税率

医療保健業非課税
（収益・附帯事業22％）

22％

30％

固定資産税等

非課税（救急医療等確保事業施設に限る）

課税

（１）「基金制度」とは
基金制度は、「医療法人が拠出者に対して、定款の定めるところに従い返還義務を負うものであり、剰余金の分配を目的としないという医療法人の基本的性格を維持しつつ、その活動の原資となる資金を調達し、その財産的基礎の維持を図るための制度」と位置づけられています。

｢基金｣の定義：持分の定めのない社団医療法人に拠出された金銭その他の財産

（２）特徴
基金の返還は行われますが、出資金についての返還ではないため、医療法人形態としては、出資持分の定めのない社団となります。

●	基金制度を採用した出資持分の定めのない社団
●	出資額限度法人と似ているが医療法で規定されている点で大きく異なる
●	基金の拠出者の権利に関する規定及び基金の返還の手続が定款に定められている
●	「基金」の返還に係る債権には、利息を付してはならない
●	「基金」の返還は、定時社員総会の決議によって実施される
●	定款の規定に従い返還義務を負う
●	特定医療法人・社会医療法人に移行する場合は、「基金」を返還
●	出資額限度法人から移行する場合は、出資金の払戻しを行う