(1)出資持分の定めのない社団に移行する場合の税法上の問題点 |
出資持分の定めのある医療法人が、出資持分の定めのない医療法人に移行する場合、下記のような問題が発生します。 |
|
|
①医療法人に対する贈与課税の問題 |
● |
当該医療法人が、適切に運営されている場合 |
|
● |
出資持分の放棄による出資金含み益に対する法人への課税は発生しない。 |
|
|
|
● |
当該医療法人が、適切に運営されていない場合 |
|
● |
出資持分に多額の含み益がある場合、出資者が放棄することにより、個人には課税が生じない。また、医療法人が含み益に対する払い戻しをする必要がなくなるため、結果的に利益を得ることになる。 |
● |
その受けた利益に相当する分が、出資者の親族等に分配される可能性がある場合、不当に相続税や贈与税を減少させたことになる。 |
⇒ |
これを防止するために、出資者が放棄したことによる含み益の帰属先である医療法人に贈与課税する。 |
|
|
|
|
|
②出資者個人に対する課税の可能性 |
● |
みなし贈与の問題が考えられるが、出資者全員が放棄することが前提となっているため、出資者に対する課税はない。仮に、放棄に反対したものに対し、時価で払戻ししたとしても、その他の出資者が全員放棄していれば、みなし贈与の課税はない。 |
|
|
|
|
(2)明確化の背景 |
① |
社会医療法人の創設 |
|
極めて公益性の高い医療法人を創設 |
|
(医療法第42条の2、医療法施行規則第30条の35の2) |
② |
公益法人制度改革 |
|
平成20年12月1日 新制度施行
従来の公益法人(社団法人、財団法人)は自動的に特例民法法人に移行。5年以内に公益社団・財団法人の認定を受けるか、一般社団・財団法人の認可を受けなければ解散となる。 |
|
|
|
|
(3)持分の定めのない社団移行時の非課税に対する贈与税の取り扱い |
①相続税法第66条 第4項 (人格のない社団又は財団等に対する課税) |
持分の定めのない法人に規定する公益法人等その他公益を目的とする事業を行う法人に対し財産の贈与又は遺贈があった場合において、当該贈与又は遺贈により当該贈与又は遺贈をした者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときについて準用する。
⇒法人に対して、贈与税を課税する。 |
|
|
|
②資産課税課情報 第14号 (14 不当減少についての判定) |
(相続税等の負担の不当減少についての判定)
14 |
法第66条第4項に規定する「相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」かどうかの判定は、原則として、贈与等を受けた法人が法施行令第33条第3項各号に掲げる要件を満たしているかどうかにより行うものとする。 |
|
|
|
|
③相続税法施行令第33条第3項(人格のない社団又は財団等に課される贈与税等の額の計算の方法等) |
3 |
贈与又は遺贈により財産を取得した法第六十五条第一項に規定する持分の定めのない法人が、次に掲げる要件を満たすときは、法第六十六条第四項の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められないものとする。 |
|
|
一 |
その運営組織が適正であるとともに、その寄附行為、定款又は規則において、その役員等のうち親族関係を有する者及びこれらと次に掲げる特殊の関係がある者(次号において「親族等」という。)の数がそれぞれの役員等の数のうちに占める割合は、いずれも三分の一以下とする旨の定めがあること。 |
|
イ |
当該親族関係を有する役員等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者 |
ロ |
当該親族関係を有する役員等の使用人及び使用人以外の者で当該役員等から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの |
ハ |
イ又はロに掲げる者の親族でこれらの者と生計を一にしているもの |
ニ |
当該親族関係を有する役員等及びイからハまでに掲げる者のほか、次に掲げる法人の法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員((1)において「会社役員」という。)又は使用人である者 |
|
(1) |
当該親族関係を有する役員等が会社役員となっている他の法人 |
(2) |
当該親族関係を有する役員等及びイからハまでに掲げる者並びにこれらの者と法人税法第二条第十号に規定する政令で定める特殊の関係のある法人を判定の基礎にした場合に同号に規定する同族会社に該当する他の法人 |
|
|
二 |
当該法人に財産の贈与若しくは遺贈をした者、当該法人の設立者、社員若しくは役員等又はこれらの者の親族等に対し、施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給、役員等の選任その他財産の運用及び事業の運営に関して特別の利益を与えないこと。 |
三 |
その寄附行為、定款又は規則において、当該法人が解散した場合にその残余財産が国若しくは地方公共団体又は公益社団法人若しくは公益財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人(持分の定めのないものに限る。)に帰属する旨の定めがあること。 |
四 |
当該法人につき法令に違反する事実、その帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装して記録又は記載をしている事実その他公益に反する事実がないこと。 |
|
|
|
|
④資産課税課情報 第14号 (15 その運営組織が適正であるかどうかの判定) |
15 |
法施行令第33条第3項第1号に規定する「その運営組織が適正であるか」どうかの判定は、財産の贈与等を受けた法人について、次に掲げる事実が認められるかどうかにより行うものとして取り扱う。 |
|
|
|
|
具体的には、下記要件に該当するかのチェックが必要となります。 |
|
|
●要件1: |
定款、寄附行為又は規則(これらに準ずるものを含む。以下同じ。)において、それぞれ次に掲げる事項が定められていること。(以下該当箇所抜粋) |
|
● |
学校法人、社会福祉法人、更生保護法人、宗教法人その他の持分の定めのない法人 |
|
|
(イ) |
その法人に社員総会又はこれに準ずる議決機関がある法人 |
|
A |
理事の定数は6人以上、監事の定数は2人以上であること。 |
B |
理事及び監事の選任は、例えば、社員総会における社員の選挙により選出されるなどその地位にあることが適当と認められる者が公正に選任されること。 |
C |
理事会の議事の決定は、次のEに該当する場合を除き、原則として、理事会において理事総数(理事現在数)の過半数の議決を必要とすること。 |
D |
社員総会の議事の決定は、法令に別段の定めがある場合を除き、社員総数の過半数が出席し、その出席社員の過半数の議決を必要とすること。 |
E |
次に掲げる事項(次のFにより評議員会などに委任されている事項を除く。)の決定は、社員総会の議決を必要とすること。
この場合において、次の(E)及び(F)以外の事項については、あらかじめ理事会における理事総数(理事現在数)の3分の2以上の議決を必要とすること。
|
|
(A) |
収支予算(事業計画を含む。) |
(B) |
収支決算(事業報告を含む。) |
(C) |
基本財産の処分 |
(D) |
借入金(その会計年度内の収入をもって償還する短期借入金を除く。)その他新たな義務の負担及び権利の放棄
|
(E) |
定款の変更 |
(F) |
解散及び合併 |
(G) |
当該法人の主たる目的とする事業以外の事業に関する重要な事項 |
|
F |
社員総会のほかに事業の管理運営に関する事項を審議するため評議員会などの制度が設けられ、上記(E)及び(F)以外の事項の決定がこれらの機関に委任されている場合におけるこれらの機関の構成員の定数及び選任並びに議事の決定については次によること。 |
|
(A) |
構成員の定数は、理事の定数の2倍を超えていること。 |
(B) |
構成員の選任については、上記ハ(イ)のBに準じて定められていること。 |
(C) |
議事の決定については、原則として、構成員総数の過半数の議決を必要とすること。 |
|
G |
上記ハ(イ)のCからFまでの議事の表決を行う場合には、あらかじめ通知された事項について書面をもって意思を表示した者は、出席者とみなすことができるが、他の者を代理人として表決を委任することはできないこと。 |
H |
役員等には、その地位にあることのみに基づき給与等を支給しないこと。 |
I |
監事には、理事(その親族その他特殊の関係がある者を含む。)及び評議員(その親族その他特殊の関係がある者を含む。)並びにその法人の職員が含まれてはならないこと。また、監事は、相互に親族その他特殊の関係を有しないこと。 |
|
|
|
|
|
●要件2:事業の運営、役員の選任等が適正に行なわれていること |
● |
贈与等を受けた法人の事業の運営及び役員等の選任等が、法令及び定款、寄附行為又は規則に基づき適正に行われていること。
|
(注) |
他の一の法人(当該他の一の法人と法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第4条第2号((同族関係者の範囲))に定める特殊の関係がある法人を含む。)又は団体の役員及び職員の数が当該法人のそれぞれの役員等のうちに占める割合が3分の1を超えている場合には、当該法人の役員等の選任は、適正に行われていないものとして取り扱う。 |
|
|
|
|
●要件3:社会的存在として認識される程度の規模を有していること |
● |
贈与等を受けた法人が行う事業が、原則として、その事業の内容に応じ、その事業を行う地域又は分野において社会的存在として認識される程度の規模を有していること。この場合において、例えば、次のイからヌまでに掲げる事業がその法人の主たる目的として営まれているときは、当該事業は、社会的存在として認識される程度の規模を有しているものとして取り扱う。
(以下抜粋) |
|
|
ヌ |
医療法(昭和23年法律第205号)第1条の2第2項に規定する医療提供施設を設置運営する事業を営む法人で、その事業が次の(イ)及び(ロ)の要件又は(ハ)の要件を満たすもの
|
|
|
|
(イ) |
医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第30条の35の2第1項第1号ホ及び第2号((社会医療法人の認定要件))に定める要件(この場合において、同号イの判定に当たっては、介護保険法(平成9年法律第123号)の規定に基づく保険給付に係る収入金額を社会保険診療に係る収入に含めて差し支えないものとして取り扱う。)
|
|
|
(ロ) |
その開設する医療提供施設のうち1以上のものが、その所在地の都道府県が定める医療法第30条の4第1項に規定する医療計画において同条第2項第2号に規定する医療連携体制に係る医療提供施設として記載及び公示されていること。
⇒ 社会医療法人の認定要件 |
|
|
(ハ) |
その法人が租税特別措置法施行令第39条の25第1項第1号((法人税率の特例の適用を受ける医療法人の要件等))に規定する厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たすもの。
⇒ 特定医療法人の承認要件 |
|
|
|