まず、評価目的、方法、ルールを職員に明示し、透明性を確保することです。特に評価者がルールを理解していない場合、評価結果は大きくばらつき、なぜその評価になったのか根拠が不明瞭になってしまいます。全職員がこれらを理解することにより、運用がスムーズに進められ、公平性と納得性が得られることとなります。
目的を明確にした後は、以下の項目を整理します。 （１）評価基準（職員に対する期待像）の明示 評価基準が最も重要です。基準については、役割・能力基準で整備する形になりますが、人事考課表において、さらに詳細な評価基準に落とし込む必要があります。この基準を職員全員が認識することにより、日常業務における「あるべき姿」が明確になるとともに、評価も客観的に行われ、結果に納得性を持たせることができます。 （２）具体的事実に基づいた評価を徹底 評価全般に言えることですが、人が人を評価するため、100%正しい運用はあり得ません。そこで、100%に近づける取組が求められます。評価の際には、感情の入る余地がある過去の振り返りや想像は徹底的に排除しなければなりません。評価対象となるスタッフの具体的事実のみを評価することが前提条件となります。 （３）面接制度を通じた結果のフィードバック 人事考課の目的は査定ではなく、職員の育成がメインです。考課結果をスタッフ全員に伝えることにより、育成のモチベーションを高めると同時に、透明性の高い考課制度を構築することとなります。 （４）考課者研修の定期的実施 評価を行う役職者を中心に研修会を定期的に実施することにより、評価ルールの理解浸透や運用上の問題点、評価事例の共有化等を図ります。 カギとなるのは、直接被考課者とやり取りする一次考課者のレベルです。レベルアップをするためには研修会の定期的実施がポイントです。 ■考課者研修例
人事考課の駆け込み寺的機関及び審査機関を設けます。考課者、被考課者間のトラブルや考課のバラつきをチェックし、問題を究明するなど公正な人事考課を行うための機関です。実務上、理事会や経営会議メンバーを選定するケースが多いです。 下記のとおり人事考課組織図を作成し、誰が誰を考課するのか、チェックは誰が行うのかを決定します。原則として、被考課者の評価を一番適切にできるのは誰かという観点で組み立てを行います。 複数の目で考課することによって、人事考課の制度が上がります。 部門ごとに、役職者を整理し、2人以上の考課が実施されるように組み立てを行います。
■人事考課の構成
取組評価は、あくまでも評価期間中（例えば、過去6カ月間）にあらわれた事実を問うものであり、個人の性格を問うものではありません。したがって、過去形で問われる内容です。その点では、仕事・役割評価と同様であり、取組評価は仕事・役割評価と同時に、評価が行われることとなります。
実際に評価項目に活用する際には、等級によって、組み立てを変えます。例えば、管理職であれば、管理・統率にウエートを置いた考課表にします。 （１）仕事・役割評価の組み立て 仕事・役割評価では、各等級に求められる仕事の結果や役割の遂行度を評価します。ここで用いられるのが、職務（課業）一覧表と役割基準であり、職務一覧表と役割基準で求められている等級ごとの役割や仕事がどこまで達成できたかを評価します。
取組評価においては、サービス統括者とサービス提供者の仕事に対する取り組み姿勢や意欲、医療人・組織人としての適性度を評価します。
能力評価とは、職員に期待し要求する発揮能力を、能力基準に照らして評価することです。能力の分類としては、役割と仕事を遂行するための知識・技能、理解力、指導力、総合判断力、管理能力等があげられます。
また、Sは5点、Aは4点、Bは3点、Cは2点、Dは1点と、ポイントを設定します。各評価項目の人事考課結果を点数化することにより、最終考課の集計がし易くなります。 ■評価段階
納得性を高めるためには、4つのテクニックがありますので以下に紹介します。 （１）進捗情報を常に発信する 人事考課制度導入の際に行う職員説明会はもちろんのこと、進捗状況を常に発信することが重要です。 また、説明会ではコンサルタント等外部ブレーンを活用し、公正性をアピールすることも有効です。 （２）評価項目策定は部門責任者を巻き込む 大枠は、管理部門で作成しても構いませんが、具体的項目については部門責任者と協議して決定します。現場の意見を入れることで、実務に即した評価項目が策定できますし、育成のポイントも明確になります。 （３）評価基準を明確にする 各評価項目において、SからDの基準を明確化します。どういう行動がＢなのか、Sなのかを、評価項目ごとに設定します。例えば、遅刻の数の許容範囲を話し合い、Bの基準を決定します。 （４）トライアルを実施し、不具合を調整する 実際に決定した人事考課表でトライアルを実施し、精度を高めます。評価結果にバラつきが生じた場合、内容を分析し、場合によっては評価項目を修正します。部署によっては、該当しない評価項目が発生するケースがあります。 |
