年度経営計画策定法 -　医療・福祉経営改善ナビ

全社レベルでおこなった現状分析と経営課題の析出作業の要領において、部門を単位として必要な分析項目を選択し、部門の現状と課題を明確にし、部門計画策定に反映させます。

そして、全社年度利益計画の内容を踏まえて部門計画を策定するのであって、その要領、要点は先述した全社の年度利益計画に準じてこれをおこないます。部門計画は、看護部門、事務部門、病棟部門等、又分院ごと等、経営組織単位ごとに策定し、そのポイントは以下のようなものとなります。

（１）部門基本方針の検討、決定ポイント
部門基本方針は、部門活動の基本方向、また努力の重点、そして達成すべき目標設定の考え方等を明確にしたものとなります。そして、その検討、決定のポイントは以下のようなものになります。

①	全社年度利益計画との整合性を確保する全社の年度経営方針のなかで、各部門に対する「活動方向」「期待する役割」「課題」等が明示されています。そして、それに添った形で「部門基本方針」は検討、決定されなくてはなりません。また、「全社年度利益計画の達成を図るために部門としてどうあるべきか」まで踏み込んでこれを検討することが望ましく、このような形で決められることにより、「全社年度利益計画との整合性」が図られるのです。
②	部門の重要課題に対する取り組み方向が明示されていること部門環境変化への対応策、また前年度の反省に立った改善課題等、部門で取り組むべき課題は多種多様に存在します。そして、その中の重点課題に対しては、「部門としてどのような方向で取り組む」のかを明確にする必要があります。
③	部門責任者の価値観が込められていること部門責任者の価値観、そして仕事に対する取り組み方、姿勢がどのようなものであるかを部門構成メンバーに理解させておく必要があり、部門基本方針にその点を盛り込んでおくべきでしょう。それによって部門構成メンバーは、各状況において部門責任者の意図を理解し易くなり、その判断も賢明なものとなる場合が多くなると考えられます。

（２）部門目標の検討、決定ポイント
部門目標は、「１年間の病医院活動において到達すべき部門の目標」を示すものです。この目標には「定量的」「定性的」なものがあります。

【部門別目標項目例】

担当部門	定量的目標	定性的目標
看護部門	・売上高・粗利益率・医療事故件数の撲滅	・患者満足度の向上・接遇向上
事務・総務部門	・事務用品等の消耗品の管理・精算までの時間短縮・残業時間改善・新規採用人員・新入職員定着	・顧客満足度の向上・接遇向上・全社能力開発・労使関係の円滑化・管理職年棒制の導入
給食部門	・給食材料のロスの低減・食品事故件数の逓減（異物混入など）	・患者魔族どの向上・新たなメニューの開発

（３）良い部門目標のポイント

①	職員の意欲を喚起するようなものであること低い目標ではなく、努力すれば達成可能なハードルであることが重要です。
②	測定可能な目標であることこれは、「達成できたか否か」が測定可能な目標であるか、ということです。定性的目標は「達成レベルが不明確」なケースが多く、「何を、いつまで、どのレベルまで」といった達成度合いを測れるような目標表現をするべきです。
③	目標達成の裏づけがあることこれは目標達成のための手法を吟味したうえで、目標を設定することにより、この裏づけを得ることができます。

（４）目標検討・決定のポイント
「部門目標をどのように決めるか＝部門計画の妥当性」と考えられるでしょう。その検討・決定のポイントは「全社の年度経営目標の検討」の場合と同様です。

①	納得性の確保目標の検討・決定の過程において部門メンバーが論理的、感情的に納得することが必要です。このため、部員を目標の検討・決定の場に参加させることが肝要になってくるのです。
②	挑戦レベルにあること現状に努力を加えるだけで達成できてしまう目標では、その目標は弱いと言わざるを得ないでしょう。担当者のやる気を失せさせないレベルかつ挑戦性を確保した目標を設定することが重要なのです。
③	達成方法の確保「達成方法の確保なくして目標の挑戦性はなし」という思考のもと、目標の目標たる裏づけがそこには必要になってきます。
④	評価の基準性目標の決め方が曖昧であると、評価の段階で「さじ加減」をすることにもつながり、不公平な評価結果を生むこととなってしまいます。よって、できるだけ「妥当性」「納得性」のある目標をここで決定することとします。

部門目標、方策を踏まえたうえで「業務計画」を策定します。この業向け各とは、「各部門の１年間の業務を具体的に計画するも」のであり、これは各医療機関の策定様式にしたがうこととなります。

【部署の計画策定】

①	看護部門の計画策定入院患者や、来院予定患者数を想定し、患者数の多い診療日であってもスムーズな対応ができる体制ややり方についての訓練や仕事の分担を計画。
②	人事部門の計画策定要員計画、教育訓練計画、福祉計画等を策定する
③	経理部門の計画策定資金運用計画、資金調達計画等を策定する
④	総務部門の計画策定行事計画、事務合理化計画等を策定する