（１）お年寄りの患者の特質を知った上で接する
 患者の中でも最も人数の多いお年寄りの患者には、次のような特質があります。十分に心得た上で接しなければなりません。

【お年寄り患者の特質】
�� 身体機能が低下して心身共にとても不安定な状態
　 患者は心身共に弱り、不安を感じ、また動作も不安定になっています。
　 　
�� これまでの様々な人生経験があり、自分の過去に誇りを持っている
　 生活は豊かで多様化しています。患者を外見や性別、動作、話し方だけで判断してはいけません。収入や社会的な地位・家庭の環境・文化的な好みなど、様々な要素があることを理解し、一人ひとりの患者を大切にします。
　 　
�� 健康な人、若い人と同じ接し方を望んでいる
　 身体的に衰えても、子供扱いされたり過剰な気遣いをされたりすると、かえって不快に感じます。人格を尊重した上での優しさを忘れてはいけません。
　 　
�� プライバシーの保護と個性の尊重を大切にする
　 決して年齢のせいで差恥心がなくなっているわけではありません。身体的な衰弱が原因でやむをえない行動と考えましょう。「おじいちゃん」「おばあちゃん」という呼び方は、お年寄りを傷つけることが多いので、必ず、きちんと名前で呼ぶようにします。
　 　
�� サービスは確実に評価される
　 専門的なことの理解力は衰えているかもしれませんが、サービスの質や人間の態度を評価する力はしっかりしています。特に、人の態度や接し方から相手の心情を読み取ることに対して敏感です。嫌々接されたり、若い人と差別されたりすることを大変嫌います。

（２）お年寄り患者へのアプローチ法
お年寄り患者へのアプローチとして重要なのは、��雨天対応、��ユニバーサルデザイン、��やさしいイメージづくりです｡

��雨天の対応
● 徒歩で通院する患者がゆっくり傘をたたむことができるスペースと、スッキリ収納できる傘立てを用意します。また、せっかくの傘立てが古い傘でいっぱいでは台なしなので、忘れ物の傘は小まめに回収します。
　 　
● 車で送迎してもらう患者の乗降場所に、雨に濡れないようなひさしがあると良いでしょう。
　 　
● 運転して送迎してきた人が駐車して戻って来るまで、待機するためのベンチがあるとより良いでしょう。
　 　
● 入り口付近にベンチを設置します。もし入り口に喫煙スペースがあるなら、喫煙者用のベンチと外で待つ患者用のベンチをできるだけ離し、設置します（タバコの煙が不快な患者も当然います）。
　 　
● フロア入り口のスロープが滑りやすくなっていないか確認します。マットを敷いたり、防滑施工を行っている業者に頼んだりするなど、転倒事故が起こる前にできる対策をとります。
　 　
● 自転車置き場が、入り口から遠く離れていてはいけません。雨の中、自転車や乳母車で通院してくる患者にも、気を配った設計にできると良いでしょう。

��ユニバーサルデザイン
● 階段の上り下りが辛い人のために、入り口の階段をスロープに変えると良いでしょう。デザインよりも患者重視の外観にしましょう。
　 　
● 手すりの素材に注意しましょう。耐久性や耐候性に優れていますが、冬のステンレスの手すりは非常に冷たく、他にも滑りやすいなどの不快感があります。
　 　
● スロープの傾斜が真っ直ぐ道路に向かっていると、車椅子やベビーカーが車道に飛び出してしまう危険性があります。建築前に向きを確認するか、建築後なら車道に出てしまわないようにストッパーを設置します。

��やさしいイメージ作り
● ガーデニングやシンボルツリーで、やさしい雰囲気を作ります。
　 　
● ガラスの掃除を徹底します。光線の角度により、意外に汚れが目立ちます。手の届かない部分は、脚立などを使って曇りのないように保ちましょう。
　 　
● 駐車場や前の道路は必ず毎日掃除します。病院としての清潔感はとても大切なので、できれば１日２回は掃除したいところです。

（１）女性患者に嫌われると４倍以上の減患効果
女性患者１人にファンになってもらえれば、「子供」｢配偶者」「親御」「近所の友達」と４倍の患者を連れて来てくれる可能性が高くなります。逆に、女性患者に嫌われることは、４倍以上の減患効果となります。
インターネットの普及により大量の情報が溢れている時代だからこそ、親しい人の口コミ情報に誰もが大きな信頼を寄せています。特に40代、50代の女性の口コミは侮れません。

【女性患者の傾向】
【キャリアウーマン】
●美しくありたい ●化粧をしている ●好きなことにはお金を遣う
●ブランド志向 ●雰囲気第一 ●ビジュアルの説明が好き
●バッグは必携 ●マスコミ情報に敏感 　

【主　婦】
●午前中の来院が多い ●子供の送迎がある ●話好き
●買物のついで ●財布のヒモを握っている ●子連れで来院
●夕方は忙しい ●運転が苦手 　

（２）女性小物のこまめな補充で一石三鳥の効果
診察の際、場合によって女性患者が口紅や化粧を落とすので、ウエットティッシュやコットン、綿棒、あぶら取り紙などを用意しておくと喜ばれます。しかし、トイレに女性用小物を常備しても､持って帰られてしまうことも懸念されます。とりあえず一度に置いておく量を少なめにして、こまめに補充する方法が良いでしょう。
このように職員がこまめにトイレやパウダーコーナーなどへ足を運ぶことにより、汚れなどのチェックができ、また受付カウンターから待合室へ出ていくことで、患者とのコミュニケーションを取る機会が多くなることもプラスの要因になります。
つまり、コミュニケーションの機会増加、小物の節約、トイレの清潔チェックと、一石三鳥の効果が得られます。

（３）見落とされがちな診察室内での細部のこだわり
女性患者特有の特徴は、スカートにハイヒール、そしてバッグです。診察室には、アウターを掛けるハンガーやカゴ、バッグや携帯電話を置くトレイの準備が必要です。
短いスカートの人がベッドに横になる場合は、女性職員がすぐにひざ掛けやタオルなどを掛けるようにします。ひざ丈スカートやパンツでも、体型があらわになるのを気にする場合があるので、暑くないかぎり掛けるようにします。

【診察時の女性患者に対する心配り】
● 患者に対する治療内容の説明が、中待合へ筒抜けにならないよう少し声のトーンを低くして話す
● 待合室のＢＧＭの音量をボリュームアップして、診察室の話し声が聞こえないようにする

治療終了後も、女性患者は身支度に時間がかかります。まだボタンを全部止めていないうちに次の患者を呼んではいけません。待合室が混雑している時でも「女性患者は大切な口コミ患者である」という気持ちで、目の前の患者が少しでも恥ずかしい思いをしないよう注意します。
診察室の中に入ったら、時間の流れをゆっくりと感じてもらえる応対を心掛けます。もしゆっくりとした動作を待つことが厳しい場合は、第２診察室、第３診察室を作り、女性患者は第３診察室に入ってもらい、次の患者は第１診察室で診察をするような流れにするとスムーズになります。

（４）子育てママに喜ばれる気配り
2006年９月２日付、日本経済新聞の「何でもランキング」に取り上げられた「子育てママがうれしい気配り」ランキングを見てみましょう。

【子育てママがうれしい気配りランキング】
第１位 ベビーカーが通るまで扉を押さえてくれる
第２位 電車やバスで席を譲ってもらう
第３位 ベビーカーに乗った子供が落とした靴下や帽子を拾ってくれる
第４位 ベビーカーが挟まれないようエレベーターの扉を開けておいてくれる
第５位 駅の階段などでベビーカーを運んでもらう
第６位 子供や母親に話し掛けてくれる
第７位 子供がぐずっている時おおらかに接してくれる
第８位 子供や妊婦の傍で喫煙を控えてくれる
第９位 お利口にしている子供をほめる
第10位 道や公園であいさつを交わすなど子供と関わる近所の人の態度
第11位 自分の子供を遊ばせているついでにまとめて面倒みてくれる知人
第12位 病医院や美容院に行くとき、長時間子供を預かってくれる
第13位 パーキングエリアなど外出先で子供にトイレの順番を代わってもらう
第14位 通学時間帯に街で子供を見守ってくれる近所の人
第15位 乳幼児連れや妊婦の荷物を持ってくれる

また、次に挙げる事項は、してもらったことはないが期待したいことです。

【子育てママが期待していること】
●子供や妊婦の傍で喫煙を控える
●バス停などで並ぶ際に順番を代わる
●外出先で子供にトイレの順番を代わる
●優先席に座っている若者らに「席を譲ってあげて」と頼む
●スーパーなどで上や下の方の棚にあるものを代わりに取る

これらを参考に、院内でできる気配りを考えるとどうでしょう。

● 扉を通りやすいものにする（手に荷物を持っていても、ベビーカーを押していても出入りしやすくする）
● 子供や母親に話し掛ける。ぐずっていてもやさしく接する。お利口にしている子供をほめる
● 子供を預けられる（チャイルドコーナー・託児所の充実）

これらは比較的すぐ実行できると思われます。子育てママに喜んでもらえる院内環境整備に努めましょう。
（１）子供の患者の傾向を探る
子供の患者は１人で来院することはあまりなく、ほとんどが親や家族と一緒に来院します。したがって、子供にとって居心地のよい病医院は、すなわち親や家族にとって居心地のよい病院となります。
風邪が流行する時期や夏休み中などは、特に子供の患者が多くなります。楽しい病医院づくりで、子供の患者のファンを増やすと良いでしょう。

【小児患者の傾向】
●お医者さんは怖いというイメージ ●症状を言葉できちんと伝えきれない
●おもらし、嘔吐しやすい ●午前中の来院が多い
●視線が低く、視野が狭い ●下校時間後の来院が多い
●騒いだり泣いたりする ●におい・音など五感が敏感
●感情の起伏が激しい ●じっとしているのが苦手
●子供間の興味の流行・すたりは早い 　

（２）子供ならではのサービス
��喜ばれる３点セットは着替え用Ｔシャツ、ズボン、紙オムツ
●治療中に子供が暴れて服が汚れてしまった
●気分が悪くて戻してしまった
●小さい子供を連れて来院した親が、替えの紙オムツを持ってこなかった

上記のような状況に備え、受付に着替え用のＴシャツ、ズボン、紙オムツを用意している病院もあるようです。金額的に安いものでも、患者満足度アップには確実につながることでしょう。
Ｔシャツは１枚数百円、紙オムツは１枚100円程度です。多額の費用がかかるサービスをする必要はありませんが、１人につき100〜200円のサービスや、少額で準備できるものは、可能な限り実行しておきましょう。

��兄弟姉妹の薬間違いを防ぐ
 兄弟で来院していて違う薬を処方する場合、薬袋は同じで名前だけ違っているだけなので、飲み間違えてしまうこともあるでしょう。また兄弟姉妹は、名前の１文字を共有しているなど、間違いやすい名前もよくあることです。
誤って飲んでしまうことのないよう、工夫した上で説明するようにしましょう。また、男子と女子の薬袋の色を変えることも、対策の一つになります。

【兄弟姉妹に対するお薬間違い防止策】
●薬袋の色を変える
●シールを貼る

別の方法としては、２〜３種類の薬袋を用意しておき、その他に子供の好きそうなキャラクターのシールを用意します。そして子供患者自身にシールを選んでもらい、そのシールを貼ることで「自分の薬袋」との意識を持つことを促します。
そうすることで、少しでも薬に対する嫌な気持ちが薄れることが期待でき、誤りも避けられることでしょう。滅多にないことですが人為ミスが重なって、大きな医療事故につながることを忘れてはいけません。薬袋を何種類か用意することが厳しいようであれば、目印シールだけでも用意しましょう。