病医院の増患対策　-　医療・福祉経営改善ナビ

（１）掲示物で変わる院内の雰囲気
患者が院内で多くの時間を過ごすのは、待合室になります。待合室の壁に貼られているのが業務用のポスターばかりだったり、また黄ばんでしまっている古いものばかりだったりすると、味気なく感じてしまいます。
そこで、ある程度テーマやストーリーを持った絵をそろえると、院内がまとまった雰囲気に変わります。例えば風景画、お花の絵、抽象画などで統一したり、色合いを待合室中待合などで統一したりすると、院内の雰囲気が落ち着きます。
すべて印刷された綺麗なポスターが掲示されていると、スッキリとした印象を受け見た目にも美しいのですが、職員が一生懸命に手書きで書いた患者へのポスターも気持ちが伝わり、好印象を与えます。

【患者に向けた手書きポスターの具体例】

●病気の予防は○○から	●職員の紹介
●予防のためには○○しましょう	●今日の研修会発表
●治療の流れは○○です	●地域交流コーナー

上記のような、患者の知りたい情報を職員が自分たちの勉強会、ミーティングなどで取り上げてまとめ、ポスターを制作します。そうすれば患者とのコミュニケーションにもなり、職員自信の勉強、自信、喜びにもなります。

（２）院内情報は階層化して伝える
さまざまな情報を伝えたいために、掲示物で院内がいっぱいになってしまうと、大切な情報まで埋もれてしまい伝えることができなくなってしまいます。
気をつけなければいけないのは、病院から伝えたい情報と患者が知りたい情報が食い違っているという点です。患者は自分自身の病気について一番情報を求めています。かかりつけの病院が、それに最適な技術や経験を持っているかどうかを知りたいのです。
また、あまり他人に相談しにくい内容の場合は、患者がパンフレットを持って帰れるように用意しておくことも大切です。

【院内情報の階層化】

●	階層その１
	病院の理念や大切な情報は、患者が入り口から入って来た時に、一番見やすい視線の先に大きく掲示する

●	階層その２
	注意して欲しいこと、大切なお知らせや案内などは、数行以内にまとめた言葉で、文字のフォーム（字体やフォント）を揃えて掲示。高さは待合室で座った視線から見やすい位置にする

●	階層その３
	細かい注意事項、興味のある方だけへのお知らせは、待合室のボードや玄関横のボード、中待合の壁などに掲示

●	階層その４
	さらに興味を持ち、深い情報を知りたい方のために、自宅へ持ち帰って読めるようなパンフレットを受付に用意する

（３）院内掲示物の工夫
院内情報で個性を出そうと思っても、病院にふさわしくない情報を掲示しても意味がありません。以下のような具体例を参考にし、各病院で掲示物の工夫をしてください。

①	病医院名の由来
	病医院名は、院長先生の名前のついたシンプルなものから、診療所では「いきいき」や「なごやか」など、親しみやすい名前のものなどさまざまなものがあります。開業時に院長先生が考え抜き、想いを込めた名前なのでしょう。しかし、その名前の由来は、あまり患者に伝えられていません。患者に自院の名前の由来を伝えることは、自院の理念を伝える良い手段になります。先生の手書きで書かれたものだと、より一層やさしさが伝わりよいでしょう。

②	混雑予想
	空いている時間にゆっくり治療を受けたい、という気持ちは、誰でも共通でしょう。「いつもこの時間（曜日）はどうして混雑してしまう」、「この時間帯に来てくれれば、お待たせしないで済むのに」という、病院の混雑状況を図にして掲示してみましょう。

	■「混雑状況のお知らせ」掲示例


	患者からすれば、自分の都合に合わせた来院が可能になり、院側からすれば、患者の分散を図ることができます。

③	手作り時刻表
	バスや電車を利用して来院される患者のために、「診療時間にポイントを当てた時刻表」を手作りしてみます。少し大きめの字で、診療時間にかかわる部分が抽出してある時刻表があると、見やすくて便利です。

④	マグネットシート
	プリンターで印刷できるマグネットシートで、自院のロゴマークや案内掲示などをデザインし、金属製の扉や機会に貼り付ける場合、テープで貼るよりも見た目にも美しく、楽しいものになります。

病院では、診察室、レントゲン室、処置室などがすぐにわかる配置になっているため、サイン表示に気を使わないことが多いようです。しかし、初めて来院し、しかも体調不良で気分が最悪の状態の患者にとっては、どの場所へ行けと言われても、すぐには分からないでしょう。
わかりやすいサイン表示は大切なのです、床にカラーラインを引くのも良いと思います。
このようなハード面の工夫だけでなく、職員の言葉によるユニバーサルサービスも大切なのです。

●	「右手奥のトイレでこのコップに尿を取ってきてください。コップはトイレの一番奥に検尿コップと大きく表示したカウンターがありますから、その上においてきてください。お願いいたします」

●	「診察室を出て右手奥のレントゲン室へどうぞ」

●	「廊下突き当りの処置室で点滴します」

このように、患者の頭の中にイメージが浮かぶような言葉と、大きな手振りで対応ができれば、サイン表示がわかりにくくてもカバーできます。
トイレが綺麗な病院は評判も良く、トイレは患者から安心・信頼を獲得する大切なポイントになります。

（１）清潔ですか？

●床や洗面台は１日に一度ではなく、気付いたら何度でも掃除
●いつ清掃したかを記入するチェック表を壁に貼っておく
●清掃依頼カードを設置
●タオルが汚れていないか確認。できればペーパータオルやエアータオルがよい
●便座シートの利用

ゴミ箱にペーパータオルが溢れているのも印象がよくありません。院内感染の心配や、気分が悪くてトイレに駆け込んでしまう患者もいるので、十分な気配りが必要です。

（２）ユニバーサルデザインになっていますか？

●	扉が外側へ開く場合、中に入ろうとしている患者の顔面直撃になる可能性はないか
●	トイレのカギも幼い子供から目の悪いお年寄りまで理解できるよう、シールなどで分かりやすく表示しているか
●	洗面台や便座など、小さい子供用のものがあるか

（３）視覚、聴覚の工夫をしていますか？

●	出入りする際、他の人からの視線が気にならないようになっているか
	⇒　構造的に困難な場合は、大きめの観葉植物で出入り口をカバーするのが有効
●	トイレの音や臭いが外に漏れないようにしているか
	⇒　トイレ近くはＢＧＭを少々大きめにしたり、空気清浄機を設置したりする

男性は女性用トイレのことが、女性は男性用トイレのことがよく分かりません。職員全員と、トイレミーティングを行い、それぞれに気が付いた点を話し合いましょう。
伸びていく病医院の設備投資は、常に患者を主役とする観点で検討されています。病医院における主要な設備投資とは次のようなものです。

（１）患者向け

①	治療機器、検査機器
	ＣＴ、ＭＲＩ、レントゲン、超音波、リハビリ機器、内視鏡、その他検査機器　等

②	待合室
	液晶テレビ、イス、空気清浄機、空調設備、BGM　等

③	病医院全体
	待合室の増築、駐車場・駐輪場の整備　等

（２）職員

●ユニフォームの更新	●業務を楽にする設備投資
●休憩室の整備	●レセコンの能力アップ
●給料のアップ	●コンピューター操作技術のスキルアップ
●院内旅行等レクリエーションの充実	等

（３）院長向け

●高級乗用車　　　　　　●ゴルフ会員権　　　　　●趣味の絵画　　　等

■	ルールその１
	患者中心の病院では当然設備投資は（１）→（２）→（３）の順番ですべきです。

■	ルールその２〈設備投資に対する借金について〉
	（１）と（２）の設備投資については、借入金で賄ってもよいでしょう。ただし、（３）の投資については自己資金で行うべきです。

	この投資の順番と借金のルールを守れば、病院経営も順調になり、結果的にはストレス減少につながります。

眼科における医療施設のユニバーサルデザインへの取り組みの事例を紹介します。

（１）ユニバーサルデザインの取り組み過程
目に障害を持つ眼科患者のために、職員が不自由さを体験し、ハード面だけではなく、ソフト面での向上にもつながる「見やすさ調査・使いやすさ検証」を行いました。

（２）ユニバーサルデザインの特徴とポイント
①見やすくて分かりやすい案内表示・サイン

●	案内表示は濃い背景色に大きな白い文字である。
	色のコントラストや文字の大きさで認識性が高く、遠くからでも見やすくわかりやすい。逆に背景が白の案内表示だとまぶしさを感じさせ、文字が読みにくいなどの点も考慮したデザインになっている。

②分かりやすい動線　⇒　時計回りに動く動線

●	受付、会計、検査、診察ゾーンが診療の流れに沿って配置。
	照明器具の並び方を見て方向を確認できるように、ライン状の照明器具を設け、分かりやすくする。

③照明はまぶしさへの配慮と適切な照度

●	視覚障害や高齢者の場合、照明の明るさに強弱があると、見づらく不快感の原因になる。
	待合スペースはダウンライトを等間隔で配置、外光利用のセンサーと連動させながら500ルクス程度の照度になるように計画されている。

④床は安全性を重視

●	床は転倒の危険を防ぐために滑りにくいカーペット張りとし、色は、ものを落とした際に見つけやすいように無地のグレーを採用。
	床がフラットであっても、明度差が大きい組み合わせは、段差があると感じさせてしまう危険があるので、細かなパターン模様を使う。点字ブロックの代わりにビニールタイルを設置し、靴や杖の感触で方向を誘導。

⑤使いやすい家具と手すりで動作を楽に

●	待合スペースの椅子は、座りやすいように座高は低め、奥行きは浅め、クッションは硬めで、長時間座っていても疲れにくいように配慮。椅子の背面に手すりを設け、足元スペースを広く確保して、立ったり座ったりの動作を楽にする工夫。

⑥だれでもトイレの設置

●	高齢者、杖をついている人、車椅子の人、子供、オストメイト（人工肛門・人工暴行保有者）などさまざまな利用者に配慮し、木目の壁と濃い床・白い設備機器のコントラストでわかりやすい工夫。

⑦小児外来

●	待合スペースは色彩も明るく楽しい雰囲気。丸みを帯びた家具と飽きさせない工夫のコーナーやキャラクターをつけた検査器具など、子供の目線にたったやさしい空間。

⑧空間全体の色彩

●	グリーン系の家具と床のパターン、オレンジ系の家具と床のパターンの色の使い分けでフロアを認識させ、雰囲気も変わるので効果的。

⑨見やすくて分かりやすい案内表示・サイン

●	案内表示は濃い背景色に大きな白い文字である。色のコントラストや文字の大きさで認識性が高く、遠くからでも見やすくわかりやすい。逆に、背景が白の案内表示だとまぶしさを感じさせ、文字が読みにくいなどの点も考慮したデザインになっている。