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2-4 患者対応力アップで増患を目指す
1  待ち時間を短縮する順番予約システム
(1)順番予約システムの具体例
患者の待ち時間を少しでも短くするために、予約制を導入する病医院が徐々に増えてきました。
待ち時間を減らすために予約システムを導入する場合には、予約した患者と窓口に来た患者の受付順番ルールを明確にすることに注意が必要です。
ここで、予約の中でも順番予約をするシステム導入時の具体例を以下に紹介します。

診療開始までの受付対応
診療開始時間までに来院している患者の診療が終了する時間から、予約の受付をスタートしておきます。
例えば、毎朝9時に10人くらいの患者が来ていれば、予約は9時30分からスタートさせ、受付番号11番から15番までの予約受付をします。
(※つまり、朝一番に予約を取っても11番の番号からの予約になります)

窓口と予約の患者の順番
受付番号11番から15番まで予約の患者を入れ、同16番から20番までは、窓口来院患者の受付順番を入れます。
次に21番から25番までは予約の患者とし、窓口来院と交互に順番を入れます。
(*予約機械は、自由に発行番号が設定できます)

予約時間に遅れてくる患者
予約すると、時間ギリギリに来院する人が多く、呼び出した時にまだ患者が来院していないケースがあります。そのような場合には、3~5番程度順番を繰り下げて対応するようにします。

お年寄りの患者の場合
受付時間中は普通の電話でも予約を取れるように対応し、受付する事務職員が受付番号を取ってあげるようにします。

導入当初は、月曜日や土曜日の忙しい日は避け、それ以外の曜日でスタートさせます。また、順番も導入当初は予約の比重を少なくして、患者の動向に合わせて増やしていくと良いでしょう。

(2)予約忘れの患者への対応
予約日時を忘れてしまい、連絡なく無断キャンセルになってしまう患者がいます。患者本人も日常の生活が忙しいのでやむを得ないことではありますが、予約患者のために診療時間を確保している都合上、予約した日時に来院して欲しいのが正直なところでしょう。
そこで『前日や当日の朝に、予約確認の連絡をする』という対策を講じます。これにより、患者の無断キャンセルを防ぐことができます。
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2  短い説明でも患者満足を引き出す秘訣
ある患者が外科手術後、主治医から手術部位の運動機能は回復しないと告げられて強いショックを受け、仕事も手につかない状態になりました。当然リハビリに対しても消極的になってしまい、その患者は指1本の怪我でしたが、医師のひと言で生活そのものにも支障が出てしまったのです。
患者から、「先生の説明は病気の説明でしかなくて物足りない」という話を聞くことがあります。患者は、日常生活上どのように対応していったらよいかという具体的な説明を求めているのです。
このように、医師と患者が考える「説明」に対する認識のズレが、患者の不満につながっていることが多いようです。
患者数が多く、医師から十分な説明ができない場合でも、看護師など他の職員から患者の生活を中心にした説明ができると、患者の満足度は高いものになるはずです。
例えば、「この指の機能は手術前の状態まで完全には戻りませんが、リハビリによって訓練をすれば、日常生活には支障がないようにできるので、一緒に頑張りましょう」「血液検査の結果この数値はなかなか下がりませんが、食事や日常生活でこの点に注意をしていけば悪化が食い止められます」という具合に説明します。
このほかにも、患者の気持ちに対する共感や同調の言葉をプラスできると、なおよいでしょう。よく患者から受ける質問は、「今日お風呂に入っていいですか?」ではないでしょうか。この時に「駄目です」と返事をすることは適切ではありません。下記のレベル1~3までの言葉が使えるとよいでしょう。

添えたい一言~レベル1から3まで
レベル1
  「今日お風呂に入ると病状が悪化してしまうので、控えていただけますか?」と、なぜダメなのかという理由を添える。
   
レベル2
  「今日みたいに暑い日(寒い日)はお風呂にゆっくり入りたいですよね」など共感の言葉をプラスする。
   
レベル3
  レベル2の言葉に、さらに「明日、症状がおさまったらお風呂に入ってくださいね」とレベル1の言葉をプラス表現に変えた言葉を付け加える。

病気や薬の知識が豊富であることは当然ですが、患者が本質的に知りたいのは、自分の生活がどうなるかという視点だと思われます。この気持ちを忘れずに患者への説明を心掛けましょう。ただ、医師一人では十分な説明時間が取れないことも多いため、職員にも同じような気持ちで患者に接してもらえるよう、継続的に研修などを行いましょう。
3  セカンドオピニオンへの対応
最近はマスコミなどでセカンドオピニオンという言葉が頻繁に報道されているため、ほとんどの患者がその言葉を理解していることでしょう。また、少々重度な病状では、聞ける・聞けないは別として、心の中ではセカンドオピニオンを聞いてみたいという気持ちを持っていると思われます。
セカンドオピニオンを聞いてみることは、よい方法であると思われます。ついでに言い添えると、「セカンドオピニオンを聞いてみたいのですが…」と話をした時にとても不機嫌になる先生であったら、主治医としては疑問に思った方がよいということです。
現在の診療は非常に細分化されてきているために、何が正しい治療なのか、また患者本人にとって何がベストなのかということが、なかなか判断しづらい上に、情報も大量にありすぎて判断に迷う状況です。したがって、患者の不安な気持ちからすれば、セカンドオピニオンを聞きたいという要求は自然なものであると思われます。

【他院から来院してセカンドオピニオンを希望している場合】
患者は病気に対する強い不安感から、勇気をふりしぼって来院しているのです。その気持ちを汲んで、安心してもらえるような言葉掛けをしましょう。また、決して前医を否定せず、客観的な表現でのセカンドオピニオンを心掛けると良いでしょう。

【自院の患者が他院でのセカンドオピニオンを希望した場合】
決して不快な顔はせず、患者が自分の説明で納得できなかったことを反省すべきです。また、どれほど説明を尽くして患者が頭では理解してくれたとしても、どうしても感情として理解したくない気持ちがあることも当然だと思わなければいけません。
患者が納得できるのであれば、幾らでもセカンドオピニオンを聞いてきて欲しいという立場で対応します。

セカンドオピニオンは比較的最近浸透してきたために、病医院によっては、まだ十分に対応がなされていません。しかしセカンドオピニオンの対応一つで病医院の評判が大きく左右されます。患者の気持ちを中心に考えて、おおらかでやさしい対応を心掛けましょう。
4  会話技術を向上するポイント
院内での声掛けは、とても大切なことです。
「マニュアルに書いてあるから話しかける」、「聞かれた質問だから答える」、「知っている患者だからお話する」のでは、十分な対応であるとはいえません。患者だけでなく、周囲にいる人も笑顔になるような二言目を話しかけるだけで、患者との関係が変わってくるのです。

患者 「診察券はここに置いていいですか?」
  職員 「はい、結構ですよ。今日はとても暑くなってきましたね。よろしければ冷たいお茶もありますよ」
     
患者 「予約時間に少し遅れてすみませんでした」
  職員 「大丈夫ですよ。いつもお仕事の都合をつけて来院してくださって、ありがとうございます」

上記のような対応をされて、嫌な気持ちになる人はいないでしょう。
患者からの言葉を「はい」「いいえ」もしくは、無言のうなずきだけで受け取らず、キャッチボールの要領で必ず「言葉のボール」を投げ返すようにしましょう。
5  「病院の品格」を高める礼状
患者に評判の良い医師は、とても細やかな心遣いをされる方が多いのですが、職員全体が医師と同じ水準で心遣いができるかというと、そうとも限りません。院長先生がまめであっても、職員がそれに倣うことができないのでは、病医院全体のレベルは向上しません。
例えば、いただきものがあったときに職員が順番にお礼状を書くことは、とてもよい練習になります。できれば葉書は官製ではなく、おしゃれなカードを準備しておき、書き手も同じ職員ばかりではないように順番に書くようにします。
挨拶、お礼の言葉、プラスひと言でオリジナリティを出し、結びの言葉をつけます。1枚のお礼状を書くだけで、ずいぶん多くの要素が含まれてきます。
「病院の品格」を高める第一歩として、職員の書くお礼状を実践するとよいでしょう。
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