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近年、単純なヒューマンエラーを原因とする重大な医療事故が多発していることは事実です。その原因は多様であり、一概に定義することは困難ですが、近年の医療事故については下記のような傾向が挙げられています。これらの複合要素が事故の多発原因と考えられています。
■医療事故発生要因を構成する背景要素  国民皆保険制度の基本概念は均質・均等・平等であり、いわゆる護送船団方式的な考え方のもとに質の向上を怠ったことから、リスクという概念そのものを希薄にし、制度疲労が増大した。  医療提供側の論理（プロダクトアウト）により運営がなされ、患者主体の医療が一般的になおざりにされ、顧客（＝患者）満足の充足（マーケットイン）への転換が遅れた。  医師およびその医療技術中心の運営および専門技能者集団による縦割り組織が、チームケアへの転換を遅らせリスクに対する全院的な対応を遅らせた。  医師、看護師その他の医療専門職が、戦後における、いわゆる自由の中でプロフェッショナルとしての倫理観や使命感を希薄にした。  IT化が進む中、種々の情報が獲得しやすくなり、患者が主権者として意識し始め、マスコミを通じて積極的に主張を行うようになった。  医療機関に働く職員（特に医師以外のスタッフ）が、職場に生きがいや働きがいを見出すような職員満足（Staff Satisfaction）制度の不足・不備が顕在化している。 現場からは、医療事故・紛争の発生原因の大きな要因は、職種、資格、診療科目で分断された、病院独自の組織環境における関係者間のコミュニケーション不足にあるという指摘もなされています。 基本的に、医療事故対策の考え方は医療機関の規模に関わらないものであり、院内全体で取り組むべき課題ですが、職員や部署数も少ないため、部署・職種別で研修や教育を重ねるよりも、部門横断的な活動によって、医療安全に関する共通認識を得ることが最大のリスクマネジメントになるといえるでしょう。 診療所や小規模病院における医療事故防止対策のポイントとしては、次の5点が挙げられます。 ■医療事故防止対策のポイント
●カンファレンス等、臨床現場のコミュニケーションを多く持つ
●現場のリスクを確実に把握し、院内の共通認識とする ●病院全体のリスクマネジメントの意識を高揚する ●リスクマネジメント委員会で充実した討議を行う ●事故防止マニュアルの充実 |