法定労働時間を超えて労働きせたときは、割増賃金を支払うことが労働基準法で規定されています。法定の割増率は「25％」ですが、病医院の中には25％超にしているところがあります。

法定休日に労働させたときにも、割増賃金を支払わなければならないことが労働基準法で規定されています。法定の割増率は「35％」ですが、病医院の中には35％超に設定しているところがあります。

経営不振に対応して、法定を上回る賃金割増率を法定水準に引き下げることも、賃金調整の１つです。例えば、30％に設定している時間外労働の割増率を経営不振の期間だけ25％に引き下げます。あるいは、50％に設定している休日労働の割増率を当分の間35％に引き下げます。

時間外労働や休日労働に対する賃金割増率を経営不振に対応して引き下げるときは、給与規定を変更することが必要です。給与規定を変更することなく引下げを行うと、賃金の全額払いを規定した労働基準法第24条に違反することになります。
例えば、次のように規定している時間外労働の割増率を25％に引き下げるときは、「改訂例」のように改訂します。

【現　行】
第○条 （時間外手当） 所定就業時間を超えて勤務した時は、次の算式による時間外手当を支給する。
　 時間外手当 ＝ 所定外労働時間 × 時間単価 × 1.30

【改訂例】
第○条 （時間外手当） 所定就業時間を超えて勤務した時は、次の算式による時間外手当を支給する。
　 時間外手当 ＝ 所定外労働時間 × 時間単価 × 1.25

また、次のように規定している休日労働の割増率を法定基準の35％に引き下げるときは「改訂例」のように改めます。

【現　行】
第○条 （休日勤務手当） 休日に勤務したときは、勤務した時間数に応じて、次の式で算出した休日勤務手当を支給する。ただし、課長以上の役職者に対しては、支給しない。


【改訂例】
第○条 （休日勤務手当） 休日に勤務したときは、勤務した時間数に応じて、次の式で算出した休日勤務手当を支給する。ただし、課長以上の役職者に対しては、支給しない。


時間外労働手当、休日労働手当について、減額や不支給という措置をとることは許されません。
例えば、時間外労働について、

● 一定の時間数を超える時間外労働に対してのみ支給する（例えば、１カ月10時間までは不支給とし、10時間を超える分に対してのみ支給する）
●
 一律に一定割合をカットする（例えば、本来支払うべき時間外労働手当を一律に20％カットし、残りの80％を支払う）
● 時間外労働手当は支給しない

などの取扱いは認められません。これらの手当は、労働基準法で支払いが義務づけられているからです。
いくら経営不振のために支払能力が乏しくなっているとはいえ、業務の都合で時間外労働を命令したときは、労働した時間数に応じて時間外労働手当を支払わなければなりません。また、法定休日の労働を命令したときは、休日に労働した時間数に応じて休日労働手当をきちんと支払うことが必要です。