売上と雇用量との間には、一定のバランスがとれていることが必要となります。また、一定のバランスをとることが経営の要諦です。
ところが、世間一般の景気が悪くなったり、あるいは経営のカジ取りが良くなかったりすると、経営が落ち込んだりします。その結果、雇用が相対的に過剰となります。
職員に対しては給与・賞与を支払わなければならないため、雇用の過剰を長く放置しておくと、人件費の負担に耐えられなくなって倒産に追い込まれてしまいます。近い将来に回復することが見込めないと判断されるときは、早い段階で過剰雇用を解消するための手段を講じる必要があります。

過剰雇用を解消する手段としては実務的にさまざまなものが考えられますが、職員から退職者を募集することも１つの有力な手段です。不幸にして経営不振に直面したときに、過剰雇用を解消するために職員に自主的な退職を呼びかけることを「希望退職」といいます。ただ単に経営の危機の克服や経営再生を訴えて自主的な退職を求めるのではあまり人事上の効果が期待できないので、通常は、退職金支給の面で優遇措置を講じます。
例えば、「退職金規定に基づく退職金に、その30％相当額を上積みするので、退職希望者は病医院に申し出てほしい」と、職員に呼びかけます。
当然のことながら、退職金支給について優遇措置を講じた分だけ、病医院側の資金負担が増大して経営を圧迫します。しかし、職員の人数が減ることによってそれ以降の賃金・賞与や福利厚生費の支払額が減少するので、中・長期的にみて人件費の節減が図られます。人件費を節減し、収支のバランスを適正水準に回復させると同時に、資金を商品開発や機械設備の近代化などに有効に活用し、経営再建への展望を切り開いていきます。