過剰雇用が発生し、しかも経営の先行きが不透明であるときは、病医院としては、過剰雇用を速やかに解消することが求められます。過剰雇用の状態を放置しておくと、人件費負担の重さから経営収支がさらに悪化し、病医院の存立そのものが危うくなる可能性があります。
この場合、希望退職を実施して過剰雇用を解消するという選択肢もありますが、希望退職は、退職するかどうかの決定を本人の意思に委ねるため、退職の申し出が病医院側の目標人員に達するという確実な保証はありません。目標人員に達するかもしれないし、達しないかもしれません。目標人員に達しなければ過剰雇用は解消せず、従って経営の再建・再生もそれだけ遅れてしまいます。これに対して、整理解雇は病医院の一方的な意思で行うものですから、過剰雇用を必ず解消できます。

整理解雇は、問題点も大きいです。それは、病医院のイメージが大きくダウンすることです。整理解雇を実施したことがマスコミで報道されたり、あるいは人を介して伝わることにより「危ない病医院」「人を大事にしない病医院」というマイナスイメージが持たれます。
さらに、整理解雇の対象とならなかった職員の間に「今度は自分が解雇されるのではないか」という心理的動揺が広がり、勤労意欲が低下する可能性もあります。
整理解雇は、解雇・退職という行為を伴うため、職員とその家族の生活にきわめて大きい影響を与えます。
いうまでもなく、病医院としては、職員の雇用を守るべき責任があります。職員も、病医院が雇用を守ってくれることを強く期待しています。整理解雇は、病医院が自らの責任を自ら放棄するものです。したがって、十分慎重でなければなりません。