支給に際しては、次の項目を要件として費用に認められますので、証憑書類を事前に整えられるよう注意をする必要があります。

【決算賞与が認められるための要件】
�� 事業年度終了の日までに、賞与金額を職員ごとに、かつ、すべての職員に通知する。
�� 事業年度の終了の翌日から１カ月以内に全額支払う。
�� 未払いの賞与として決算時に経理処理する。

決算賞与を支給した場合の節税額について説明します。

【　例　】
次の条件の法人で決算賞与を支給した場合の節税額の計算
�� 当期利益：3000万円
��法人税率：40％
��決算賞与：1,000万円

��何も対策をしなかった場合の税額
当期利益3,000万円　×　40％　＝　1,200万円
�� 決算賞与を支給した場合の税額
当期利益（3,000万円−1,000万円）　×　40％　＝　800万円

何も対策をしなかった場合1,200万円の税金を支払うことになりますが、決算賞与を支給することで納税額が800万円となり、400万円も節税できたことになります。

（実質負担額）
決算賞与支給額1,000円　−　節税額400万円　＝　600万円

何も対策を行わなかった場合と比較して600万円の支出増加にはなりますが、職員のモチベーションが向上し、より一層仕事にはげみ更に売上げが伸びることが期待できます。

（１） 要件のすべてを満たさなければ、支給額全体が認められない
決算賞与を費用として認めるには、要件のすべてを満たさなければなりません。
各要件の注意点は以下のようになります。


��決算日までに決算賞与の支給額を各人別に全員に通知していること
税務調査でその証明を求められることがあります。
そのため、各人への通知は書面で行い、決算日までに通知を受けた旨のサインをもらっておく必要があります。
��決算日後１ヶ月以内に全員に支払っていること
決算日後１ヶ月以内に各人に銀行振込をすれば証拠として残ります。
現金支給の場合には、各人から領収書をもらっておくことが重要となります。
��決算で経費として未払金計上をしていること
経費としての経理処理が必要となります。
支払通知書を職員に交付し、各人から確認印を受領するなどして、通知の履歴を後日証明できるように準備しておく必要があります。

（２） 決算賞与支給の手続き
決算賞与については、税務調査時に通知をしたかどうかの確認が必要となるので、書面で決算賞与を通知する必要があります。
決算賞与の書面通知方法としては、２通りの方法があります。

【決算賞与の通知方法】
�� 個別に決算賞与支給明細書を渡す方法
�� 決算賞与一覧表を作成し、職員に提示する方法
　　職員から確認の押印、サインをもらうことが重要となります。

どちらの場合も、決算賞与については通知日が重要となりますので、日付の記載を忘れないように注意する必要があります。

（３） 職員モチベーション
業績が好調のため決算賞与を支給することは、職員の来期に向けたモチベーションの向上につながります。しかし、このプラスの回転（好循環）が回り続ければ良いのですが、業績が落ち決算賞与の支払いをストップした場合、職員のモチベーションは一気に下がってしまいます。
経営者側としては、業績が悪いときは決算賞与が無いのは当たり前ですが、職員の立場としては、今までもらえていた賞与がストップした場合、法人に対する「不安・不満」が発生する可能性があります。結果として売上げの低下、モチベーションの低下といったマイナスの回転（悪循環）が発生することにもなりかねません。