1  事業用資産の買換え特例とは
個人が、事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等を譲渡し、一定期間内に特定地域内にある土地建物等の特定の資産を取得し、その取得の日から1年以内に買換資産を事業の用に供した場合には、買換えの特例の適用を受けることができます。

この特例を受けますと、売った金額より買い換えた金額の方が多いときは、売った金額に課税割合をかけた額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。
売った金額より買換えた金額の方が少ないときは、その差額と買い換えた金額に課税割合をかけた額との合計額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。
これらの場合の課税割合は20%です。

譲渡所得の計算

譲渡収入≦買換資産の取得価額のケース
譲渡収入×20%-(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×20%=譲渡所得金額
譲渡収入>買換資産の取得価額のケース
A―(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×A/譲渡収入=譲渡所得金額
A=譲渡収入-買換え資産の取得価額×80%
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2  事業用資産の買換特例の適用要件
この特例を受けるための適用要件は次の通りです。

買換えのための譲渡資産と買換資産は、ともに事業用のものに限られます。
譲渡資産と買換資産とが、一定の組合せに当てはまることです。この組合せの代表的なものとして次のものがあります。
a. 東京都の23区、大阪市などの既成市街地等内にある事務所や事業所として使用されている建物または敷地用の土地で、所有期間が10年を超えるものを譲渡して、既成市街地等でない地域にある事業用の土地や建物を取得する場合
b. 譲渡の日の属する年の1月1日現在の所有期間が10年を超える事業用の土地や建物を譲渡して、国内にある土地等、建物または機械装置を取得する場合
買換資産が土地の場合、取得する土地の面積が、原則として譲渡した土地の面積の5倍以内であることです。なお、一定の農地への買換えの場合は10倍または30倍以内とされることがあります。
資産を譲渡した年か、その前年中、あるいは譲渡した年の翌年中に買換資産を取得することです。
事業用資産を取得した日から1年以内に事業に使うことです。なお、取得してから1年以内に事業に使用しなくなった場合は、特例は受けられません。
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3  具体例
既成市街地等内にある事業用の土地・建物を3億円で譲渡し、既成市街地等外にある事業用の土地・建物を2億8000万円で取得しました(うち土地1億円、建物1億8000万円)。
なお、買換えた土地の面積は譲渡した土地の面積の5倍以内です。
また、譲渡資産の取得費用および譲渡費用は1000万円です。
譲渡資産は長期所有です。

課税長期譲渡所得の計算

A=3億円-2億8000万円×80%=7600万円

課税長期譲渡所得=A-1000万円×A/3億円=7346万円
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4  留意事項
特定の事業用資産の買換え特例が適用されない譲渡には下記のようなものがあるため注意が必要となります。

収用交換等による譲渡
贈与(低額譲渡とみなされる場合も含む)
交換(他の交換の特例の適用は可能
出資
代物弁済としての譲渡(金銭債務の弁済に代えてするものに限る)
棚卸資産又は雑所得の基因となる土地等の譲渡

また、次のような資産は事業用資産に該当しません。

事業用資産の買換えの特例を受けるためだけの目的で、一時的に事業の用途に使ったと認められる資産
たまたま、運動場、物品置場、駐車場などとして利用していた空地またはこれらの用途のために一時的に貸し付けていた土地
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