病医院の資金繰り改善対策 -　医療・福祉経営改善ナビ

（１）キャッシュフロー計算書とは
病院会計において、損益は必ずしも現金等の収支と一致せず、損益計算書上は利益があっても現金が不足すれば病医院は倒産に追い込まれてしまいます。銀行からの借り入れは現金の増加、つまり収入となりますが、損益計算における収益ではありません。また、減価償却費は損益計算上、費用となりますが、同一会計期間における現金支出とは一致しません。キャッシュフロー計算書の作成目的は、損益計算書とは別の観点から病医院の資金状況を開示し、病医院の現金創出能力と支払い能力を査定するのに役立つ情報を提供することと、利益の質を評価するのに役立つ情報を提供することにあるとされています。
キャッシュフロー計算書は、病医院の財務状態を評価するのに役立ちます。

●病医院が将来の資金流入を生み出す能力があるか
●病医院が債務や配当金を支払う能力があるか
●利益やそれに伴う現金の受け取りや支払いの違いの理由
●病医院の投資と財務の取引の現金及び現金以外の側面

　①

直接法と間接法

キャッシュフロー計算書を作成する方法には、直接法と間接法があります。実務では間接法によることが多いです。これは、間接法によって作成することが簡便であることが理由の１つとなっています。また、損益計算書との関連性も直接法に比べて明確です。

　②

キャッシュフローの種類

●	営業活動キャッシュフロー
	直接法、または間接法により作成することが選択でき、どちらの方法で作成しても結果は同じ金額となります。医業活動との関係性を明らかにするため、支払利息の支払額は「財務活動」に、受取利息や受取配当金の受取額は「投資活動」にそれぞれ記載することも出来ます。

●	投資活動キャッシュフロー
	医業活動以外での資産に関わる全ての資金の動きを示します。主に固定資産の取得や資金の貸付による資金の増減、他社への資本投資に関して記載します。

●	財務活動キャッシュフロー
	医業活動以外での負債と資本の部に関わる全ての資金の動きを示します。主に借入金による調達や返済の増減や、医療法人の出資金や債権に関する発行益・配当金支払・買戻・返済などを記載します。

　③

キャッシュフローの意義

キャッシュフロー計算書は、様々な情報を提供します。その内容を検討することにより、病医院の活動に関して以下のことが明確になります。

①キャッシュを生み出す現金創出力
②資本の活用方針（病医院がどこへ向かっているのか）
③借入金に係る支払利息の負担能力
④外部からの資金調達への依存度
⑤収益力の質と量（企業は何によってキャッシュを稼いでいるのか）

（出典：『キャッシュフロー分析と企業価値判断』シグマベイスキャピタル）

（２）キャッシュフロー計算書の分析ポイント
フリーキャッシュフローが黒字か赤字かを分析することは、非常に重要です。
フリーキャッシュフローは病医院が自由に使える資金であり、次の算式で計算されます。

フリーキャッシュフロー＝営業キャッシュフロー＋投資キャッシュフロー

　①

フリーキャッシュフローが黒字の場合の会社の状態

●

営業、投資の各キャッシュフローともに黒字

⇒金余り状態

●

営業キャッシュフロー黒字、投資キャッシュフロー赤字

⇒営業活動で得た資金を次の投資に回している健全な状態

●

営業キャッシュフロー赤字、投資キャッシュフロー黒字

⇒	要注意のサイン
	投資キャッシュフローの黒字はいつまでも続かないため、黒字のうちに営業キャッシュを黒字にする対策を取る必要がある。

　②

フリーキャッシュフローが赤字の場合の会社の状態

●

営業、投資の各キャッシュフローともに赤字

⇒	資金不足を起こしている状態
	営業を続けるには借入金に依存することになるので将来的に行き詰まる可能性がある。

●

営業キャッシュフロー赤字、投資キャッシュフロー黒字

⇒	資産の売却等リストラ途上にあると見ることができるが、早期に営業キャッシュフローを黒字にする立て直しが必要

●

営業キャッシュフロー黒字、投資キャッシュフロー赤字

⇒	投資拡大中であるが、過大投資になっていないか注意が必要