病医院の資金繰り改善対策 -　医療・福祉経営改善ナビ

（１）借入金返済力分析とは
借入金返済力分析は、債務償還年数が何年かを算出します。つまり、現在の銀行借入金額を何年間で返済できる力を持っているかを示すことです。
返済するための財源は、償却前経常利益（経常利益＋減価償却費）です。

借入金返済力は、たとえば下記のように計算します。

①現在の借入金残高	200,000千円
②経常利益	5,000千円
③減価償却費	7,500千円
④借入金返済力	①÷（②＋③）＝16年

この16年という年数が良い評価なのかという点については、金融機関のスコアリングシートから、下記のとおり債務償還年数のポイントを抽出しました。

【債務償還年数のポイント目安　満点　20ポイント】

これにより前述の例を評価すると、16年は20年以内に該当し、ポイント目安からは２ポイントと非常に低い評価であることがわかります。

（２）新規設備投資を行う際の判断基準として活用する
例えば新規設備投資を行った場合、①設備投資の効果で増加した利益、②設備投資によって増加した減価償却費、というものが返済原資となります。

【新規設備投資　債務償還年数分析の留意ポイント】

①新規設備投資金額	50,000千円
②借入金額	50,000千円	（返済期間10年、年間元金返済額5,000千円）
③新規設備投資効果	2,000千円
④減価償却費	5,000千円
⑤借入金返済力	②÷（③＋④）≒7年

よって、借入金返済力は約７年となり、銀行の返済期間を下回るため、この設備投資は問題がないものと評価できます。

【新規設備資金を５年間の借入金で調達する場合】

①新規設備投資金額	50,000千円
②借入金額	50,000千円	（返済期間5年、年間元金返済額10,000千円）
③新規設備投資効果	2,000千円
④減価償却費	5,000千円
⑤借入金返済力	②÷（③＋④）≒7年

借入金返済力は約７年と算出され、10年間借入れの場合と同じ結果になりますが、問題は毎年の返済額です。
10年間借入の場合、年間のキャッシュが7,000千円であるのに対し、年間返済額は5,000千円ですが、一方５年間借入の場合は10,000千円となり、年間の返済額が返済原資を3,000千円超過してしまいます。
このように、返済期間を設定する際は、借入金返済力と併せて、キャッシュフローの観点からも検討が必要です。

（３）借入金返済力分析による課題抽出
借入金返済力分析で、債務償還年数が銀行からの借入金償還年数を大幅に上回る数値となった場合は、非常に危険な経営状況にあるといえます。
こうした場合には、分析により課題を抽出してみる必要があります。

例えば、

●設備投資を短期借入金で調達し、資金繰りを圧迫している
●利益の減少により、償還年数が大幅に増加した

等の課題がないか、定期的に分析を行うことがポイントとなります。