>社会・特定医療法人認定 申請ポイント   >Ⅰ 社会医療法人の概要と特例事項   
1-2 社会医療法人の特例事項
1  社会医療法人に関する税制
社会医療法人の最大のメリットは、医療保健業にかかる法人税が非課税である点です。これは、特定医療法人の軽減税率22%と比較しても、大きなメリットであるといえます。
また、平成21年度税制改正において、社会医療法人が救急医療等確保事業の用に供する病院及び診療所に対し、固定資産税等の非課税措置が創設されます。その他、一定の条件のもとでの収益事業や福祉事業の実施、「社会医療法人債」の発行などの特例事項が設けられています。
一方、厳格な非営利性・公共性の担保が要請されるなど、一般の医療法人よりも、より透明性の高い運営が求められます。

【社会医療法人の特例事項】
医療保健業収入は非課税。その他の業務に対する法人税率に軽減税率を適用(22%)
救急医療等確保事業を行う病院及び診療所に係る固定資産税等の非課税
収益業務および福祉事業ができる
社会医療法人債が発行できる


(1)社会医療法人に関する税制
平成20年度税制改正において、医療保健業から生じた所得については非課税となっています。また、みなし寄附金の適用等の措置が講じられています。

■「厚生労働省医政局通知(政発第0331008号平成20年3月31日)」より
社会医療法人について、次の措置を講ずる。

納税義務及び課税所得の範囲
  社会医療法人は、収益事業を営む場合に限り法人税の納税義務が生ずることとし、収益事業から生じた所得について法人税を課税する。なお、収益事業の範囲から、社会医療法人が行う医療保健業(附帯業務として行うものを除く。)を除外する。
   
適用税率
  各事業年度の所得の金額に対して22%の軽減税率を適用する。
 収益事業および附帯業務に対して適用
   
みなし寄附金の適用等
  収益事業に属する資産のうちから収益事業以外の事業のために支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなす。なお、寄附金の損金算入限度額は、所得の金額の50%相当額(当該金額が年200万円に満たない場合には、年200万円)とする。
   
課税所得の範囲の変更に伴う所要の調整
  社会医療法人の認定を受けた場合には、法人の解散および設立があったものとして取り扱う。また、認定の取消しを受けた場合には、簿価純資産価額から利益積立金額を控除した金額を益金の額に算入する。
   
社会医療法人を所得税法別表第一(公共法人等の表)及び消費税法別表第3に追加する。

■「平成20年税制改革大綱」より 社会医療法人関連項目
社会医療法人について
 
固定資産税等の非課税措置の創設
社会医療法人が所有し、かつ、経営する病院及び診療所において直接救急医療等確保事業に供する固定資産に係る固定資産税及び都市計画税について、非課税とする措置を講ずる。社会医療法人が所有し、かつ、経営する病院及び診療所において直接救急医療等確保事業に供する不動産に係る不動産取得税について、非課税とする措置を講ずる。
   
その他の非課税措置
 
医療関係者の養成所に係る非課税措置の創設
  医療関係者の養成所について、固定資産税等の非課税措置を講ずる。

【対象となる法人】

社会医療法人、社会福祉法人、健康保険組合・連合会、国家公務員共済組合・連合会、特定医療法人
医療関係者=  医師、看護師、准看護師、歯科技工士、歯科衛生士、臨床検査技師、 理学療法士、作業療法士
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2  社会医療法人が行うことのできる収益事業・福祉事業
社会医療法人が行うことのできる収益業務は、平成19年3月30日付厚生労働省告示第92号において、下記のように定められています。
また、医政発第0330053号(医療法人の附帯業務について)には、社会医療法人が行うことができる附帯業務が記載されています。

■厚生労働省告示第92号より 収益業務
収益業務の要件
 
一定の計画の下に収益を得ることを目的として反復継続して行われる行為であって、社会通念上業務と認められる程度のものであること。
社会医療法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるものでないこと。
経営が投機的に行われるものでないこと。
当該業務を行うことにより、当該社会医療法人の開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の業務の円滑な遂行を妨げるおそれがないこと。
当該社会医療法人以外の者に対する名義の貸与その他不当な方法で経営されるものでないこと。
   
収益業務の種類
  日本標準産業分類より下記に掲げるものとする。
 
農業 林業  漁業  製造業  情報通信業  運輸業
卸売・小売業  不動産業(「建物売買業、土地売買業」を除く。)
飲食店、宿泊業
医療、福祉(病院、診療所又は介護老人保健施設に係るもの及び医療法第42条各号に掲げるものを除く)
教育、学習支援  複合サービス事業  サービス業
   
収益業務の範囲
  病院等の業務の一部として又はこれに附随して行われるものを含まないものとする。

■医政発第0330053号より 福祉事業
社会医療法人のみが行うことのできる第1種社会福祉事業
生活困難者を無料又は低額な料金で入所させて生活の扶助を行うことを目的とする施設を経営する事業及び生計困難者に対して助葬を行う事業
乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、知的障害児施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設又は児童自立支援施設を経営する事業
障害者支援施設を経営する事業
婦人保護施設を経営する事業
授産施設を経営する事業及び生計困難者に対して無利子又は低利で資金を融通する事業病院等の業務の一部として又はこれに附随して行われるものを含まないものとする。

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3  社会医療法人債の概要
社会医療法人は、社会医療法人債(公募債)を発行することができます。
その際、理事会においては、理事の過半数の決議を経て下記の事項を定めなければならないと規定されました。また、その運用に関する事項や作成が義務付けられた書類等も定められています。

■発行に際して定める事項
募集社会医療法人債の発行により調達する資金の使途
募集社会医療法人債の総額
各募集社会医療法人債の金額
募集社会医療法人債の利率
募集社会医療法人債の償還の方法及び期限
利息支払の方法及び期限
社会医療法人債権者が会社法第698条の規定による請求の全部又は一部をできないこととするときは、その旨
社会医療法人債権管理者が社会医療法人債権者集会の決議によらずに会社法第706条第1項第2号に掲げる行為をする事ができることとするときは、その旨
各募集社会医療法人債の払込金額若しくはその最低金額又はこれらの算定方法
募集社会医療法人債と引換えにする金銭の払込みの期日
一定の日までに募集社会医療法人債の総額について割当てを受ける者を定めていない場合において、募集社会医療法人債の全部を発行しないとこととするときは、その旨及びその一定の日

■社会医療法人債の運用に関する事項
社会医療法人債は証券取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3号の「特別の法律により法人の発行する債券」に該当する有価証券であり、同法の適用を受けるほか、企業内容等の開示に関する内閣府令(昭和48年大蔵省令第5号)に従い、情報開示に必要な書類の作成及び届出が必要となること。
   
「社会医療法人債発行法人」には、社会医療法人債を発行した後(当該社会医療法人債の総額について償還済みであるものを除く。)に、法第64条の2第1項の規定(※)により社会医療法人の認定を取り消された医療法人も含まれるものであること。
   
  (※)第64条の2
  都道府県知事は、社会医療法人が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、社会医療法人の認定を取り消し、又は期間を定めて収益業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
1.第42条の2第1項各号に掲げる要件を欠くに至ったとき。
出典:厚生労働省医政局通知(政発第0331008号平成20年3月31日)

■社会医療法人の会計・監査・開示の概要
  医療法人 社会医療法人
社会医療法人債を発行していない 社会医療法人債を発行
発行価額総額が1億円未満、50人未満が対象 発行価額総額が1億円以上、50人以上が対象
作成書類
(医療法第51条1項、第3項、医療法施行規則第33条1項)
事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書 事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、その他(社会医療法人の認定要件に該当する旨を説明する書類) 事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書その他(社会医療法人の認定要件に該当する旨を説明する書類および純資産変動計算書、キャッシュフロー計算書及び附属明細表)
医療法上の
開示規定
厚生労働省医政局指導課長通知「医療法人の事業報告書等の様式について」 厚生労働省令38号「社会医療法人債を発行する社会医療法人の財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」
金融証券
取引法
財務諸表等規則による別記事業
適用される
監査
任意 任意 医療法 医療法と金融商品取引法
適用されるべき
会計基準
医療法上:「一般に公正妥当と認められる会計の基準」 医療法上
:「一般に公正妥当と
認められる会計の基準」
金融商品取引法
:「企業会計」
医療法上の
監査対象財務諸表
任意 任意 財産目録、貸借対照表、損益計算書
金融商品取引法上の監査対象
財務諸表
貸借対照表、損益計算書、純資産変動計算書、キャッシュフロー計算書、附属明細表
   (出典:フェイズ・スリー2008 4月号より)
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