キャッシュフローとは、入ってくる資金(キャッシュインフロー)と出て行く資金(キャッシュアウトフロー)を総称したもので、資金の流れそのものをいいます。
キャッシュフロー計算書はその名の通り、貸借対照表や損益計算書のように発生主義ではなく、現金主義を基準にしたものです。
病医院経営における資金の出入りを明らかにするのがキャッシュフロー計算書です。
キャッシュフロー計算書は、その複雑化した動きを「営業活動」「投資活動」「財務活動」の三つに分けてとらえます。単に「病医院の資金」としてではなく、「病医院の何の資金」というように性格別に見て資金の実態を正確に把握します。
(1)3つのキャッシュフローの考え方
① |
営業キャッシュフローの構成要素 |
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② |
投資キャッシュフローの構成要素 |
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③ |
財務キャッシュフローの構成要素 |
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(2)直接法と間接法
キャッシュフロー計算書の作成基準では、三つの大項目のうち、「営業活動によるキャッシュフロー」は「直接法」と「間接法」の二通りの計算方法が認められています。
直接法は、個々の取引の収入と支出を個別に把握する方法です。
一方、間接法は損益計算書の税引前当期純利益に損益計算書の非資金項目を加減算し、貸借対照表の科目の増減を加える方法です。
直接法は最初から資金自体の動きを見るため、現金主義そのものと言え、間接法は、発生主義の貸借対照表と損益計算書を現金主義に焼き直したものと言えます。
実務的には、間接法の方が作成しやすいため、多くの病医院が間接法を採用しています。
●直接法によるキャッシュフロー計算書の例
●間接法によるキャッシュフロー計算書の例
2 財務諸表の科目がキャッシュフローにどう影響するか | |
(1)営業キャッシュフロー
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●貸借対照表の項目調整 |
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(2)投資キャッシュフロー
(3)財務キャッシュフロー
【病医院 A医院の事例】
●キャッシュフロー計算書分析
2期比較キャッシュフロー計算書
【分析ポイント 傾向の原因分析をする】
●営業キャッシュフローの増減はどうか
●投資キャッシュフローの増減はどうか
●フリーキャッシュフローの増減はどうか
●財務キャッシュフローの増減はどうか
●合計のキャッシュフローの増減はどうか
フリーキャッシュフローとは、営業キャッシュフローと財務キャッシュフローの合計のことで、その年度(月)に病医院が生み出したキャッシュのうち自由に使えるキャッシュを指します。
フリーキャッシュフローは、プラスであることが絶対条件です。これがマイナスになると現預金を減らすか、外部からの資金調達が必要となります。したがって、営業キャッシュフローの範囲内で投資が行われているかを点検する必要があります。 |
A病院のキャッシュフロー計算書から以下のことがわかります。
【分析ポイント】
① |
営業キャッシュフローの増減 |
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平成17年1月期 1,420千円
平成18年1月期 6,330千円 |
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【キャッシュ増加要因】 |
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税引前当期純利益の増加、買掛債務の増加、その他流動負債の増加 |
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【キャッシュ減少要因】 |
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棚卸資産の増加 |
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② |
投資キャッシュフローの増減 |
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平成17年1月期 -7,987千円
平成18年1月期 -5,170千円 |
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③ |
フリーキャッシュフローの増減 |
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平成17年1月期 -6,567千円
平成18年1月期 +1,160千円
平成17年1月期のフリーキャッシュフローはマイナスであったが、平成18年1月期ではプラスに転じている。傾向としては良い傾向にある。 |
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④ |
財務キャッシュフローの増減 |
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平成17年1月期 10,942千円
平成18年1月期 -2,113千円
平成17年1月期は長期借入金50,000千円調達しており、フリーキャッシュフローの減少分を財務活動でカバーした形になっている。 |
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⑤ |
合計のキャッシュフローの増減 |
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平成17年1月期 4,375千円
平成18年1月期 -953千円
フリーキャッシュフローがプラスに転じたため、キャッシュの減少を最小限に食い止めている。 |
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【分析ポイントから抽出した問題点】
① |
税引前当期純利益が少ない |
② |
支払利息が増加している |
③ |
棚卸資産が増加している |
④ |
長期借入金が減少し、その分短期借入金が増加している。短期借入金を返済するだけの利益が確保できていないため、資金繰りに影響が出る可能性が高い。 |
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