病医院の税務調査対応ポイント -　医療・福祉経営改善ナビ

いわゆる「名義預金」の問題は、相続人等の名義になっている預金の実質帰属者が、①その預金名義のとおりの名義人に帰属するのか、②名義人には帰属せず名義預金として被相続人に帰属するのか、ということが常に争点となります。

すべての財産価値のある物や権利は、一般的には、その表示された名義を信じて取引等が行われることから、特に反証のない限り、一応名義人に帰属するとみるのが相当であり、そうでないと主張する場合には、その名義であることにより不利益を受ける者が、名義人に帰属しないことについての立証責任を負うことになると思われます。

【名義預金として相続財産に認定される一般的な預金】
生前にお父様がご家族を心配して奥様と相談し、10年がかりで贈与をわからないように行い、相続税を軽減できたと思って奥様も安心していましたが、税務調査で名義預金と認定され、重加算税や延滞利息を含め３億円追徴となりました。

当初申告していれば１億５千万円であり、結果倍の納税となりました。

【名義預金として認定された理由】
下記のような場合は相続人の所有物としての実態がないので、課税庁側は名義預金として相続財産として認定課税を行います。

（１）	所有権の内容である占有（占有の開始、継続）預金通帳の保管場所が被相続人宅の被相続人の金庫であった。このケースの場合、家族に生前に通帳を渡すと息子、娘は無駄遣いを行う可能性があると思い、被相続人と奥様は秘密裏に行っていたことでした。

（２）	使用収益（管理、保有、入出金、利息の収受等）預金利息については、被相続人の通帳に入金され、それを被相続人は生活費に充てていました。

（３）	処分（解約、継続）等が全くされていないこの名義預金は、すべて自動継続の定期預金にされており、使用実績はありませんでした。

被相続人が所持していた割引金融債その他の無記名債券については、無記名債券が動産とみなされることから、その無記名債券を所持する者の所有に属するものとなります。「無記名債券」とは、証券面に債権者の名を記載しないで、その正当な所持人に弁済する証券的債券をいいます。
したがって、無記名債券については、その所持人が被相続人であるときは、被相続人の遺産に組み込まれることになります。
所持人の判定については、その証券の購入者、購入資金の調達方法、購入手続を行った者、その証券の保管状況等を総合勘案して判定します。

昔は「無記名債券」は名前がないから税務署にはバレないからと「相続人に誰にも言うんじゃないぞ」という親からの遺言だからと申告をしない相続人もいました。
しかし今は、マネー・ローンダリング（資金洗浄の意で違法な起源の収益の源泉を隠すこと）防止で下記の法律が施行され、無記名でも国税調査により本人確認が容易になってきています。

2008年３月１日施行

『販売収益移転防止法』本人確認が必要となる事業者が広がります。

すべての取引の際に本人確認が必要となるのではなく、法令で定められた一定の取引を行う際に本人確認が必要となります。

【生命保険・郵便貯金】
未だに「生命保険は相続財産に含めなくてもバレない」とか「郵便局と税務署は管轄が違うので調査に来ない」という営業担当者の甘い誘惑に乗って虚偽の申告をして、税務調査で発覚するというお粗末な話をよく聞かされます。

（１）

生命保険
生命保険会社は100万円を超える保険金を支払った場合には、必ず「支払調書」を提出することになっていますので、税務署は保険金支払の事実を確実に把握しています。
申告書にその事実が反映されていなければ、税務調査に来るのは当たり前です。

（２）

郵便貯金
郵便局の貯金については、確かに以前は、郵便局と税務署との間の連絡が緊密でなかったため、架空名義や家族名義の借名預金の郵便貯金加入が横行したこともありました。
しかし、現在では、貯金事務センターで完全な名寄せが行われていますので、郵便貯金の有無はすぐにわかってしまいます。
ましてや潰れる心配のない郵便局に対するお年寄りの信用は絶大ですから、相続財産に郵便貯金が含まれていないことの方がおかしいのです。預け入れ限度額は僅か1,000万円ですが、それは１人当たりの取扱いですから、本人名義だけでなく、家族名義による預金に対しても、いわゆる「名義預金」として税務署は目を光らせています。

（３）

海外資産
海外にある資産については調査が及ばないと思われており、申告漏れとなるケースが少なくないようです。

①	海外送金一定金額以上の海外送金については、外国為替取扱銀行から税務署に支払調書が提出されることになっています。
②	海外資産海外にある定期預金やプライペートバンクロ座の預金、不動産などの資産も税務署の資料情報から簡単に分かるようになっています。

このように、税務署はあらゆるところから隠し財産を探そうとします。
相続人の中には冒頭に記載した相続税の脱税を行う人もいることから、相続税の調査対策では疑われているような嫌な経験を余儀なく受けることになります。

相続が発生してからではできることは限られて少なくなります。
したがって、事業承継は最低でも10年前から進めることが重要となります。