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3解決策を導き出すために

解決策を導き出すブレーン・ストーミング法

ブレーン・ストーミング法とは

ブレーン・ストーミング法は、アメリカの広告自社BBDO社の副社長だったアレックス・オズボーンが1939年に考案した発散技法です。
当時の広告作りは、広告主から営業担当者が広告の依頼を受け、それを元にコピーライターが文案を作成し、そのコピーをデザイナーがデザインするという分業体制で製作していました。オズボーンはこれをチームの共同制作でできないかと考え、このブレーン・ストーミング法を考案しました。

ブレーン・ストーミング法の基本ルール

  • 批判厳禁
  • 自由奔放
  • 質より量
  • 結合改善
(1)批判厳禁

人の意見を一切批判してはいけないということです。批判がなければ、メンバーは自由に発想できます。

(2)自由奔放

何を言っても許されるということで、メンバーはリラックスした雰囲気で気楽に発想できます。

(3)質より量

量が質を生みます。とりあえず何でもいいから発想しようということです。

(4)結合改善

人の発想に他の人が便乗してより良いアイデアにすることで、チームの発想では人まねを許そうということです。

ブレーン・ストーミング法の実施ポイント

  • テーマは具体的なものにする
  • リーダーは乗せ上手な人が良い
  • メンバーは5~8人
  • 発言はすべて記録する
(1)テーマは具体的なものにする

テーマはできるだけ具体的なものにする必要があります。
ある工場で、ブレーン・ストーミングのテーマを「現場の事故を減らす」としたら、有効なアイデアはほとんど出ませんでした。しかし、「ヘルメットを全員にかぶらせる」としたところ、良いアイデアが次々と出ました。全員がイメージできるようなテーマにすることがポイントです。

(2)リーダーは乗せ上手な人が良い

リーダーは事前にテーマで発想すべき分野を多角的に洗い出し、本番で多角度からアイデアが出るように準備します。また、全員をうまく乗せ、活発に発言させます。

(3)メンバーは5~8人

メンバー数は5~8人程度とします。テーマ自体の直接の関係者は半数以下として、多分野の人を集めます。直接の関係者ばかりだと、固定概念に縛られ柔軟な発想ができなくなる危険性があります。

(4)発言はすべて記録する

自由に発言させ、すべての発言をうまく要約して記録します。
たとえば、「朝の通勤電車で1日の仕事の手順を考える」という内容は、単純に「事前準備」とせずに、「朝の電車で1日の手順を考える」といった具合に、後から読み返してもどのような発言であったか分かるようにすることがポイントです。
記録係は、少人数であればリーダーが兼任します。

(5)その他の実施ポイント
  • 全員が見渡せるよう机は四角形に並べる
  • 黒板かホワイトボードに模造紙を貼るか机上に大きめの紙(A3版程度)を置き、記入用紙には、一番上にテーマ、その下にアイデアNo.を書きます。
  • 紙に直接書かずに、カードや付箋にアイデアを書き込み、それを紙に貼っていくと、あとからまとめやすくなります。
  • 実施時間は1時間程度、それ以上になったらいったん休憩します。
  • アイデアが出きったところでアイデアの評価を行いますが、その際「独自性」と「実現性」の観点で行います。評価するときにもアイデアを結合したりして、レベルアップを図ります。

解決策を導き出すKJ法

KJ法とは

KJ法は、文化人類学者の川喜田二郎氏が、世界各地で現地調査をして、その研究結果をまとめるために考案したものです。
これは、様々な現場データやアイデアなど、多様な情報をカードに記入し、データの持つ意味を汲んで、内容が本質的に似たものを集約し、そこから新たな仮説を発見しようという収束技法です。

KJ法の進め方

  • テーマを決める
  • アイデアやデータをカードに書く
  • カードを集める
  • 各カード群にタイトルを付ける
  • 次々と上位グループにまとめる
  • 模造紙に作図する
  • 作図をもとに文章化する
(1)テーマを決める

テーマを明確にし、簡潔なテーマ名を付けます。

(2)アイデアやデータをカードに書く

「1枚のカードに1アイデア」の原則で、各人が次々とアイデアやデータをカードや付箋に記入します。

(3)カード(付箋)を集める

カード化したアイデアやデータで内容が本質的に似ているものを5~6枚ずつ集めます。まとめ切れないカードは単独カードとして残し、新たなアイデアやデータもカード化して追加します。

(4)各カード群にタイトルを付ける

まとめた各カード群に、次の3点に注意して内容を表すタイトルを付けます。タイトルは各カードが含んでいる要素を上手にまとめ上げて作成します。このときに注意することは、できるだけ主語+述語の文章で表すことです。

  • カード群の内容の要点を押さえる
  • 内容の一部のみの表現は避ける
  • 他カードのタイトルと重複しない
(5)次々と上位グループにまとめる

カード群や単独カードを小グループから中グループへとまとめ、それらに色のサインペンでタイトルを付け、さらに中グループから大グループにまとめ、大タイトルを付け、なるべく10以下のグループにします。

(6)模造紙に作図する

いくつかの大グループ、まとめきれなかった中・小グループや単独カードを、親近性のあるものは近くにして模造紙に貼り付け、グループごとに囲んだり、グループ間の関係を矢印で結んだりします。

(7)作図をもとに文章化する

出来上ったカード配置の中から出発点のカードを1枚選び、隣のカードづたいに全てのカードに書かれた内容を、一筆書きのように書きつらねて行きます。この作業で、カードに書かれた内容全体が文章で表現されます。

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解決策のまとめ方(問題点のリストアップ)

問題点は手の打てる原因であるとすれば、解決策を考えるということはまず問題の原因を列挙し、次に原因を問題点とそうでないものとに仕分けし、問題点のみを取り出して、それに対して解決策を講じるという手順を踏むことになります。つまり、問題点に対しての修正行動が解決策ということになります。したがって、問題点を原因の4つのカテゴリー(手段・活動・突発事象・制約条件)の中から拾い出し、それらを次の順序で整理する必要があります。

  • インプットの不足・不適切を補う
  • 活動の障害(不具合)を取り除く
  • 制約条件(突発事象は対策の時点で制約条件に転化する)に対して打つ手を考える

難易度もこの順番の通りになります。この順番で考えることに合理性がある理由は、最初の対策で問題が解決するのであれば、残り2つの対策は必要なくなるからです。

権限内の問題点と権限外の問題点

問題点は「手の打てるもの」と「手の打てないもの」に分けられ、さらに「権限内の問題点」と「権限外の問題点」に分けられます。
権限内の問題点とは、インプット(手段)とプロセス(活動)における問題点であり、権限外の問題点とは、制約条件や突発事象における問題点を指します。
ここでいう権限内というのは、管理者であれば、「管理者の立場で、与えられた権限の範囲で自ら実行可能な」という意味です。上位者の承認や他部門の協力を必要とする場合は、権限外と考えて良いでしょう。当然ながら、権限外の問題については、戦略的な発想で取組む必要があります。
問題解決のための対策は、4つの原因(手段・活動・突発事象・制約条件)の中から問題点を拾い出すことからスタートしますが、これは4つの原因がそれぞれ操作可能な原因と、操作不可能な原因に分かれるということを意味しています。
これらのことを踏まえて問題点をリストアップしていきます。

【売上不振が問題であるケース】

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ここで注意すべきは、問題解決において対策を考えることは、思いつきやアイデアを出すことではないということです。問題があるということは、論理的なつながりをもって、因果関係が存在しているということですので、まず原因と結果との関係を明らかにし、次に原因の中で手の打てるものを問題点としてリストアップすることが必要です。
また、前述のブレーンストーミングにおいて「やったほうがよいこと」を列挙するだけではなく、「やらなければならないこと」を見つけることが重要になります。

当面策と根本策

問題解決の際、「問題の処理」は、現在起こっている事柄に対してどう対処するかということになりますが、これは発生型の問題についていえることになります。探索型や設定型の問題は、問題がまだ具体的に目の前で起こっているケースではないので、問題処理ということではありません。
しかし、現実の問題は、発生型・探索型・設定型と明確に分かれて起こるケースばかりとは限りません。むしろ、いくつかの異なるタイプの問題が、同時並行的に、複雑に絡み合って存在することも少なくありません。
たとえば、探索型の問題の中に、部分的に発生型の問題が内蔵されているケースや、一見、発生型の問題と思われるケースの中に、探索型や設定型の問題が見え隠れしている場合もあります。異なるタイプの問題が、相互に関連を持って併存する場合は、複合型の問題ということができます。
発生型の問題のようにすでに起こっている問題に対しての応急処置を当面策、さらに、問題の原因(問題点)に対する抜本的対策を根本策と呼びます。
根本策の場合は、権限内の問題点に対する対策と権限外の問題点に対する対策が考えられます。したがって、対策を講じる順序としては、(イ)当面策→(ロ)根本策(戦術レベル)→(ハ)根本策(戦略レベル)ということになります。

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当面策の方は、現状の事態をとりあえず収拾するためのもですので、戦略と戦術の区別はなく、可能な緊急策をとることになります。
根本策の場合は、問題点が複数あっても、対策の数は問題点の数と等しくはなりません。下図のように、A案において、問題点の1と3が解決されるようなケースもあれば、問題点4に対しては、B案とC案の2つが考えられるというようなケースもあります。一般に、後者の場合についてB案とC案は代替案といいます。

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解決策が出揃ったところで、実施する際の優先順位をつける必要があります。
優先順位の付け方は次のようになります。

  • 当初の目標を達成するために速効性、有効性のある案から優先する
  • 次に今後の対策として、問題の再発防止に備える案を実施の難易度(費用や時間)に照らして順位付けする

さらに詳細に優先順位付けについてみていくと、優先順位を決める、すなわち意思決定を行う際の着眼点は、「定量的効果」と「定性的効果」「総合評価」に大別できます。

【定量的効果】

  • その案によって、どれだけの利益(あるいは損失)が期待できるか

  • その案には、どれだけの費用や時間がかかるか

  • どの案が一番効率的か

【定性的効果】

  • それぞれの案は、どのようなマイナス効果をはらんでいるか(危険性)

  • その案は、関係者の了解を得られるか現場に抵抗なく受け入れられるか
    買い手が歓迎するか(受容性)

  • その案は、将来にとってどんなメリットが考えられるか(将来性)

【総合評価】

  • 定量的効果と定性的効果のいずれを重視するか(ウェイト付け)

  • プラス面(長所)とマイナス面(短所)のいずれを重視するか(積極策or消極策)

  • いずれの案が、一番企業方針に沿っているか

問題解決のための優先順位の付け方

緊急度と重要度

解決策は、「緊急度」と「重要度」のマトリクスで整理すると、何から手を付けるべきかが明確になります。下図において第一領域すなわち「緊急かつ重要」であるものは、すぐに着手しなければならないものです。また、「緊急ではないが重要である」ものについては、計画的に、かつ着実に実施していかないと、近い将来大きな問題となる可能性があります。これには人材育成や商品開発などが挙げられます。

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四象限図

四象限図は、2つの目標を同時に達成するには、どの解決策が最適かを見つけるためのツールです。たとえば、「低コストで高い効果を上げる」といった目標を達成するときなどです。アイデアを議論し、2種類の要素との関係から分類・評価した結果を、4つの区分のいずれかに配置します。四象限図は、ある解決策が一つの側面から見ると有望だが、別の側面では有望でないことを示してくれます。
要素としては、費用と効果、有効性と実現可能性、影響と労力、費用と必要な時間等があります。

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AHP法を用いた優先順位のデジタル化

AHP手法を活用すると、優先順位付けがデジタル化できます。AHP(Analytic Hierarchy Process)法(階層分析法)は意思決定法の1つで、アメリカ・ピッツバーグ大学のサーティ教授によって開発されました。
ある事柄についての意思決定を、問題・評価基準・代替案という「階層構造」として捉えます。そして階層ごとに一対比較を行った上で、代替案のどれが好ましいかを決める手法です。人の主観判断を取り扱う問題に適しています。
AHP法は複雑な計算式が必要ですが、この方法を簡略化して活用することができます。
作業手順は以下の通りです。

  • 対象となる項目を抽出し、マップを作る
  • 相対評価をする
  • 合計点数で順位付け
(1)マップ作成(例:プロジェクトを実行するために何を最優先に考慮すべきか)
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(2)相対評価ルール

縦軸に対する判定をします。判定は下記の評価ルールに基づいて行います。

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(3)合計点数で順位付けして順位決定
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例えば「操作性」を横軸から見たときに、縦軸から見たときの逆数(この場合は5の逆数で1/5つまり0.25となります。

以上の計算の結果、「効果」が最も優先すべき項目となりました。この結果を用いて、プロジェクトの実行計画を立てることになります。

作業の実施担当の明確化とスケジュール化

洗い出した作業を、誰が、いつまで、どのくらいのコストを掛けて、どのような設備を使用して、どのように行なうかを決定します。
そして、これらを「改善案まとめシート」にまとめます。

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問題解決をシステム化するPDCAサイクル

問題解決の仕組みを社内に定着させるには、PDCAサイクル、すなわち、解決策の実行計画を立て(Plan)、計画に基づいて実行し(Do)、実行した結果を検証し(Check)、対策を打つ(Action)ことが求められます。
問題は、一旦は解決されても、また新たな問題が出てきたり、解決したと思っても実は解決できていなくて同じ事が繰り返されたりすることがあります。したがって、常に意識して問題解決に取組まなければならないのです。
以下にPDCAサイクルのそれぞれの要素について解説します。

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実行計画を立てる

解決策が決定したら、実行計画を立てます。実行計画では、解決策を「いつまでに」「誰が」「どのくらいのコストで」「どのように」行なうのかを明確にします。

(1)解決策における作業の洗い出し

解決策における作業の洗い出しの際に、前述したロジックツリーを活用して作業のモレや抜けがないようにします。ポイントは、解決策に対する的確な大項目の抽出です。大項目にモレや抜けがなければ、その後の中項目以降の作業項目にモレや抜けは発生しづらくなります。

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(2)アクションプランの策定

洗い出した作業をさらに具体化するために、アクションプランを作成します。
通常アクション・プランを作る際には、5W1H、場合によって2Hで作成することになります。
5WはWhy(目的)、What(実施項目)、Who(担当者)、When(実施時期)、そして、Where(場所)の5つですが、重要性が低ければWhere(場所)は省略することもあります。
1HはHow(実施方法)のことですが、2Hになった場合には、これにHow Much(予算、もしくは実施する度合)を示すことになります。上図では、左から目的、実施項目、実施方法という順に徐々に具体性の高い手段に展開されています。縦の項目ですが、この例では、短期的課題(1年以内に完成させる課題)のみを記載しますが、本来は中期的課題(1年を超えて実施する課題)についても記載することが必要です。
また、この例ではアクション・プランは部門をまたがった形で全社的な課題を整理しています。本来はさらにこれを部門別に作成し、より具体的な手段、担当者の名称も個人名を入れることになります。その際には、例えばこの例のWhat(実施項目)覧記載事項が、Why(目的)覧に転記され、さらに細かく手段に展開されることになります。

【アクション・プラン例】

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【PDCAシート例】

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実行計画を立てる

計画が出来たら、その計画通りに実行に移します。
計画実行の際に障害となるのは、社員が「こんなことやっても無駄」「今までだっていろいろな取り組みをしてきたのに何も解決しなかったのだから今さら・・・」といった意識を持っていては、問題解決どころか、その問題は先送りされ、また新たな問題が発生することになります。
まして、管理者がそのような意識であれば、部下にいくら指示・命令しても、部下は言うことを聞かないばかりか、信頼しなくなります。問題解決は管理者が率先垂範して取組むべきです。
また、「決めたことは必ず実施する」ことと「継続して行なう」ことが重要です。ともすれば、「忙しいから・・・」「他にやることがあったから・・・」などの言い訳が先に出てきます。管理者はこれを許してはいけません。管理者の強いリーダーシップで部下を巻き込み、全員で取組むことが重要です。

検証する

計画を実行すれば、必ず結果が出ます。この結果に対して、様々な角度で検証をしていきます。結果は計画通りに「できた」か「できなかったか」の2パターンしかありません。このうち、計画通りにできなかったケースには、「作為の誤り」と「不作為の誤り」の二通りの原因があります。
「作為の誤り」とは、何かをやって失敗した、やるべきでないことをやって失敗した、やり方そのものが適切でなかった、といったことです。
一方、「不作為の誤り」とは、やれることをやっていない、やるべきことをやっていない、見落としてしまった、といったことです。
作為の誤りは、実際に行動に移して出た結果ですので、比較的見つけやすいのですが、不作為の誤りは、なかなか気付かないものです。
これを防ぐには、すべてが終わってから検証するのではなく、途中で進捗状況を確認する必要があります。確認する内容としては、まず計画通りに実施しているかについてです。もし実施できていないのであれば、何か原因や障害がないかを確認します。また、実施している場合でも、このまま活動を続けた場合、当初の目標(問題解決)は達成できるか、もし達成できそうにもなかった場合は、活動計画を実施する上で何か障害となっているものはないか、計画実施を担当する者の能力はどうであるか等について確認します。
重要なことは、計画を立てたら立てっぱなし、部下に指示したら指示しっぱなしにしてはいけないということです。
このステップで確認できた新たな問題については、これまで説明してきた手法を活用しながら、「何が問題か?」「その問題を生み出した問題点は何か」「そうすれば解決できるか」を明らかにします。

対策を立てる

最後は、検証のステップで新たに明らかになった問題を解決するための対策を立てるステップです。
このステップについても、これまで説明してきた対策の考え方や打ち方となんら変わりません。ここでの対策が次のPDCAサイクルの計画(Plan)につながり、このサイクルは継続的に回っていくことになります。

以上見てきたように、問題解決は問題発見から始まりますが、問題そのものは管理者が「こうありたい」とか「こうしたい」といった現状よりも高いレベルを目指そうとする意識がない限り発生しません。つまり、問題を自ら設定(探索型)し、より高いレベルに組織を成長させていくことが、管理者としての重要な役割のひとつです。
管理者が問題発見力と問題解決力を高め、率先垂範して問題解決に取組むことが、企業が成長発展をし続ける原動力になります。
また、問題は一度や二度解決ができたからといって、安心してはいけません。企業経営においては、経営環境の変化等によって新たな問題が起きる可能性があります。継続的に問題を発見し、原因を究明し、対策を打ち、その検証を行いながら改善を進めていくことが重要であり、これらの推進役としての力量が管理者には求められるのです。

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